ポケットモンスター マッドサイエンティストな俺が、禁じられた並行世界の数式を解き明かして、伝説の神を論破する話   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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シロナの仮説、アクロマの確信

「……よろしい。実に見事な、そして残酷なまでに美しい一致だ」

 

私は今、シンオウ地方、カンナギタウンの古びた遺跡の奥底に立っている。

湿った空気と古い石の匂い。だが、アクロママシーン17号が映し出すスペクトルデータは、ここが単なる歴史の遺物ではないことを叫んでいた。壁画に描かれた古代の意匠が、端末が照射する特殊波長に反応し、青白く燐光を放っている。

 

「……私の仮説が、あなたのデータでこうも鮮やかに補強されるとはね。驚いたわ、アクロマさん」

 

背後から響く、落ち着いた、しかし確かな知性を感じさせる声。シンオウ地方のチャンピオンであり、優れた神話学者でもある女性――シロナだ。彼女は愛用のルーペを閉じ、壁画に刻まれた「3つの光」を見つめている。

 

「驚いたのは私の方ですよ、シロナさん。あなたが直感と文献調査だけで辿り着いた結論が、最新の量子力学とこれほどまでに合致するとは。……いいですか、この壁画に描かれた三つの環。あなたがユクシー、エムリット、アグノムの象徴だと言ったこの図形。……アローラ地方のポニ島にある祭壇、あそこに刻まれた古代文字の構造と、幾何学的に100%同一です」

 

私は端末のモニターを空中に投影し、2つの遠く離れた地方の「証拠」を重ね合わせた。

 

「アローラの祭壇は、異次元……ウルトラスペースへの門。そしてシンオウの伝説は、この世界の創世を語る。……これらは別々の物語ではない。古代の人々は、地方という概念ができる以前から知っていたのですよ。私たちが『現実』と呼んでいるこの世界が、たった一つの巨大な『裏側世界』の上に浮いている薄皮に過ぎないことを」

 

「……同一の裏側世界。あなたは、ギラティナの棲む世界も、ウルトラビーストたちが蠢く空間も、すべては同じ場所だと断じるの?」

 

シロナの鋭い視線が私を射抜く。私は眼鏡のブリッジを押し上げ、不敵に口角を上げた。

 

「断じる? 科学者にその言葉は早すぎます。ですが、確信はしています。……シロナさん、あなたがかつて語った『時間が交差し、空間が混ざり合う場所』。それは、単なる詩的な表現ではありません。物理的な真実です。……この壁画の裏側には、今もなお、あちら側の冷たい風が吹き込んでいる」

 

私はアクロママシーンの出力を上げ、壁画の「欠落した中心部」をスキャンした。

すると、虚空に揺らめく陽炎のような歪みが現れた。それは、第2話で見たミアレの路地裏の傷跡と、全く同じ周期で脈動している。

 

「……見えますか。壁画の向こう側に広がる、あの果てしない闇。あれこそが、すべての神話が収束する特異点だ」

 

「……ええ。見えるわ。私たちの歴史が、あなたの言う『データ』という名の鎖で一つに繋がっていくのが」

 

シロナは自らの相棒、ガブリアスのボールに手をかけながら、静かに、しかし情熱を秘めた瞳でその歪みを見つめた。

 

「アクロマさん。もし、その扉を完全に開いてしまったら、世界はどうなると思う?」

 

「さあ? 私の観測範囲外ですね。……ですが、不完全な真実を抱えて生きるよりは、はるかに刺激的な結末が待っているはずです。……ワクワクしませんか? シロナさん。神話という名の夢から覚め、科学という名の現実で世界を再定義する。……ええ、科学ですから!」

 

私は笑った。

カンナギの遺跡に、場違いな電子音と、一人の科学者の狂喜が響き渡る。

壁画の向こう側に見えるのは、もはや影の世界だけではない。

1000年に一度の願い、大陸を曳く巨人の足跡、そして宇宙から降り注ぐ記憶のデブリ。

次は、潮風が運んでくる「時間」の轍を追いに行くとしましょうか。ホウエンの海に浮かぶ、消えるはずのない島へ。

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