隣の席のユイナちゃん。
ミステリアスな雰囲気で、とっても美人。どこかのモデルさんみたい。
まだ始まって三日なのに、クラス内ではちょっとした人気者になっていた。
「あの子、めっちゃ可愛い」とか、「俺、話しかけようかな!」とか。
……まぁ、そりゃそうだよね。
綺麗だし、落ち着いてるし、話し方も大人っぽいし。
周りの人が、ユイナちゃんの魅力に気づき始めてる。
別に嫌とかじゃない。むしろ自慢したいくらいだし、隣の席なのラッキーって思ってる。
でもなんか、こう……。
ほんの少しだけ、その声を聞きたくないと思ってしまった。
午前の授業が終わって、昼休みのチャイムが鳴る。
「ユイナちゃん、一緒に食べよ!」
「うん……いいよ」
少し間をおいて返って来た言葉に、胸の奥がふっと軽くなる。
「やった! ……どうせならさ、外で食べよ?」
「そうだね。今日は天気も良いし」
教室は、なんとなく落ち着かない。
別に悪いこと言われてるわけじゃないのに、なんか居心地が悪くて。
「行こ!」
私は、お弁当を持って立ち上がった。
校舎の裏にある中庭。人もそこまで多くなくて、ちょうどいい静けさ。
ベンチに並んで座ると、外の空気がふわっと心地いい。
「なんか、ピクニックみたいじゃない?」
「ふふ、確かに」
ユイナちゃんが少し笑う。
……やっぱ綺麗だなぁ。風で少し揺れる髪も、柔らかそうな頬も、なんかズルいくらい絵になる。
「ユイナちゃんってさ、ほんとモデルみたい」
「そうかな」
「うん。ぜったい写真映えしそう」
「そんなことないよ」
「えー、ぜったい似合うのに」
むしろ、私の写真フォルダに収めたいんですけど。
「……ミヤの方が、似合うと思うよ?」
「え」
落ち着いた声で、さも当たり前のように……って!
「え、いやいや! ないない!」
反射的に手を振る。いや……だって、どう考えても逆でしょ!
「そう? 私はミヤが素敵だなって思うし」
「……っ! そ、そういうの止めて! びっくりするから!」
なんとか笑って誤魔化すけど、ちょっとだけ顔が熱い。
……なんでこっちが照れてるの。
チラッと横を見ると、ユイナちゃんは少しだけ微笑んでいて。
「そ、そういえばさ!」
少しだけ声が上ずる。 ……よし、切り替えろ私。
「甘いものって好き?」
「甘いもの?」
ユイナちゃんが少しだけ首をかしげる。
「うん。ケーキとか、パフェとか!」
「……」
ユイナちゃんはすぐには答えず、少しだけ考えるように視線を落とした。
「……好き、かな。嫌いじゃない、と思う」
「ほ、ほんと? ……じゃあさ、今度の週末、一緒に食べに行かない?」
駅前に最近オープンした喫茶店。もしよかったら、ユイナちゃんと一緒に行きたい。
風がふわっと頬を掠めた。ユイナちゃんはすぐには答えず、ほんの少しだけ視線を落とす。
「……いいね。それ、楽しそう」
「ほんとに?」
「うん」
や、やった……! 思わず自分にガッツポーズ!
「あのさ……連絡先、交換しよ?」
「いいよ」
ユイナちゃんは、いつも通り落ち着いた声で頷く。その様子が、余計にこっちの緊張を浮き彫りにするみたいで。
「は、はい。これ私の」
画面を見せると、ユイナちゃんも同じようにスマホを差し出してくる。
静かな時間。ピコン、と小さな音。
——繋がった。
「……できた!」
たったそれだけなのに。なんだか、さっきまでよりずっと近くに感じる。
目に見えない糸が、一本増えたみたいな。そんな感覚。
「週末、楽しみだね」
「うん! また連絡するね!」
なんて軽く言いながら、頬がゆるむのを止められない。少しだけ特別な時間に変わった気がした。