影が一つ多い   作:怪盗エンペラー

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こういう青春を歩みたかった。


4月11日 お出かけ

 四月十一日 お出かけ

 

 

 約束の週末。

 駅前の改札を抜けたところで、私はスマホの画面と時計を何度も見比べていた。

 

 ……ちょっと早く来すぎたかも。

 

 待ち合わせの時間まで、あと十分。でもなんか、じっとしていられなくて。

 

 そのとき。

 

「ミヤ」

「うわっ……⁉」

 

 びっくりして振り返ると、そこにはユイナちゃんがいた。

 

「ごめん、待った?」

「ううん! 今来たとこ!」

「そう?」

 

 ユイナちゃんは軽く首をかしげて、それ以上は何も言わない。

 

 今日のユイナちゃんは、白のブラウスに黒のロングスカート。白と黒だけなのに、なんでか目が離れなかった。

 風に揺れる黒髪と合わさって、なんかもう完成されてる感じ。とても綺麗。

 

「えっと……行こっか!」

「うん」

 

 並んで歩き出す。

 

 駅前は人が多くて、ちょっとだけ肩が触れそうな距離。

 

 それだけで、なんか変に意識してしまう。

 

 

 

 

 

 目的の喫茶店までは、歩いて五分くらいだった。

 外から見てもおしゃれで、木の看板に小さく店名が書いてある。

 

「ここ! うわー、めっちゃ人いるー」

「……座れるかな?」

「大丈夫! 予約してあるので!」

「さすがミヤ」

 

 店内に入ると、カランと音が鳴った。落ち着いた雰囲気で、窓際の席に案内される。

 

「はぁ……涼し……」

「外、暑かったもんね」

「うん。もう春っていうか、ほぼ夏じゃない?」

「そう?」

「あー、早く夏休みにならないかなー」

「ふふ。まだ始まったばっかりでしょ」

 

 夏は季節の中で一番好き。海とか、夏祭りとか。

 

 せっかく高校生になれたんだし、この夏はいっぱい遊びたい。

 

 あわよくば、目の前にいるユイナちゃんと——

 

「ミヤ?」

「え、あ、ごめん! ちょっと考え事してた!」

「……大丈夫? 顔赤いよ」

「うん! だいじょーぶ!」

 

 誤魔化すように、メニューを開く。そこには色とりどりの、イチゴやらチョコレートやら。

 期間限定っぽい桜のパフェまである。

 

「え、どうしよう……全部美味しそう」

 

 視線があっちこっちに泳ぐ。

 

「ユイナちゃん、どれがいい?」

「……」

 

 ユイナちゃんは真剣そうにメニューを眺めている。珍しい。

 

「……これ」

 

 指先が止まったのは——

 

「え、メロン?」

 

 思わず声が出る。

 

 そこにあったのは、緑が鮮やかなメロンのパフェ。さっきまで全然視界に入ってなかった。

 

「……うん」

「意外なんだけど⁉」

 

 なんかこう、ユイナちゃんって……もっと落ち着いた、王道系選びそうなイメージだった。

 

「なんでそれにしたの?」

 

 ちょっと前のめりで聞くと、

 

「……夏っぽいから。かな?」

「えっ、確かに!」

 

 メロンとか、前食べたのいつだっけ。そっかー、その手があったか!

 

「じゃぁ……私はこれで!」

「……スイカ?」

「うん! メロンにスイカって、めっちゃ夏じゃない?」

「た……確かに?」

「さすがユイナちゃん!」

「……ふふ。ミヤ、嬉しそう」

「え⁉ そ、そう?」

 

 いけない、私。ちょっとはしゃぎすぎたかも……。

 

「そっか。 ……それなら、よかった」

 

 

 

 

 しばらくして、パフェが運ばれてくる。

 

「うわ……!」

 

 思わず声が出た。

 

 ユイナちゃんのメロンパフェは、透き通るような緑で。

 私のスイカのパフェは、赤が鮮やかでいかにも『夏!』って感じ。

 

 スプーンを一口すくって、口に運ぶ。

 

「んー! 美味しい!」

 

 冷たくて、甘くて、ちょっとさっぱりしてて。さっきまでの暑さが、すっと引いていく感じ。

 

「……美味しいね」

 

 その声は、ほんの少しだけ柔らかかった。

 表情も、大きく変わるわけじゃないのに。ほんの少しだけ、口元が緩んでいて。

 

「でしょ!」

 

 つい、こっちまで嬉しくなる。

 

「また来よ! 今度は違うやつも食べたいし!」

「うん。 ……また来よう」

 

 隣の席のユイナちゃん。

 

 今日初めて……本当の意味で、友達になれた——

 

 そう思ったはずなのに、なぜか少しだけ不安が残った。

 

 

 

 

 

 

 

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