神様とかムカつくんで斬っていいですか?   作:一般通過小説好キー

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ここまでタグが一部仕事してなかったので。




幕間
1話:白銀のバディ


 ソーマ・シックザール。

 

 ゴッドイーターの物語において、主人公と言えば誰? と聞かれれば、きっと多くの人が彼の名前をあげるであろう物語の最重要人物。

 正直ゴッドイーターバーストが発売されるまでは「主人公存在する?」とか「名ばかりの隊長(笑)」なんて揶揄(やゆ)されるくらい自機である主人公のお株を奪ったメインキャラクターだ。

 

 ただ、そんな彼は物語でも屈指の御労しい人物でもある。

 

 生まれた瞬間からこの世界の命運を握るゴッドイーターの原型、オリジンゴッドイーターとして様々な検査や実験をされ、自分のせいで母親が死んだと己を責め、周りからは怪我の治り早すぎだし身体能力も高すぎてこいつ化け物……なぁんて、物心ついたころからそんな風な自己認識・評価で生きていたって思ったら……うん、普通に辛すぎるでしょ。

 しかも、父親のヨハネス・フォン・シックザールは息子への愛情は確かにあったけれども、家族としてのコミュニケーション全然できていないし、まともに彼を支えて導いてあげる人は誰一人いなかったわけだ。

 

 そりゃあんな捻くれて素直じゃない性格にもなるってもんだよね。

 

 むしろよくグレなかったなというか、口は悪い癖に誰かを救うことはやめないし、めちゃくちゃ他人を突き放したような冷たい言い方とか態度しているけれど、それは自分のせいで傷付いて欲しくないからとか、根底では思いやりがあって優しいってそれただのツンデレなんだよね。実際に無印後半の方ではちょっと丸くなってきてその辺も見え隠れしつつ、シオとのあのラスト。そんで、バースト以降では頼りになる兄貴分って感じだし、生存本能全開とかいう当たらなければどうということはないし攻撃力こそ全てっていう脳筋だし、だと言うのに実は研究者としてもそれなりの能力を持っているわけで、3の方ではまた悲惨な事故があるわけだけれど、榊博士につぐ博士になっているし、なんか隻眼のイケメンになっているし、属性盛れば盛る程いいってもんじゃねぇぞってことで、似合っていたけれども、てか、異国の地で仲間を想ってるところとか、どんだけ絆尊いねんていうか、つまり、控え目に言って──。

 

「天使だよっ!!」

「……何言ってんだ、お前」

 

 低い呆れた声と共に、最後の討伐対象(ザイゴート)がソーマの神機──()()イーブルワンに叩き潰された。

 

 2065年、某日。

 

 旧ロシアでの大規模掃討作戦も大分前に終わり、暖かくなってきた今日この頃。

 相変わらずどんよりとした天気で、なんかマップの中央では竜巻のようなものが発生している摩訶不思議な場所でも有名な『嘆きの平原』に僕とソーマは任務で出撃していた。

 

 嘆きの平原と言えば防衛班のとあるお方を思い出す名称でもあるわけだけれど、確か極東支部に所属するのはもう少し先だったはず。

 本人の前で絶対に平原なんて言葉は言えないけれども……まぁ、僕も似たようなものだし意外と許されるかもしれない。

 

 ……うーん、後、1年か。既にあまり成長の兆しが見えない貧相な身体だけれど、1年も経てばきっと、いや、流石に成長しているはず。二次性長期的にはまだギリギリセーフだし、なんだったら18歳くらいまでは緩やかにではあるが成長するようにできているわけだし。別に体の一部は大きくならなくていいんだけれど、身長はもっと欲しいよね。

 

 そんな自身の成長に対し、誰にともなく言い訳をしていたわけだけれど、ふと隣に立つソーマに目が行く。

 

 相変わらずフードを目深に被っていて中々表情が見えないが、ちらりと覗く横顔は流石のイケメン。こげ茶の肌色やコバルトブルーの瞳は極東では珍しくエキゾチックな色気がある。

 

 その肩には()()イーブルワン。

 

 のこぎりのような見た目の刃を持ち、僕の神機のような斬るというよりは、叩き潰す、削り取るような使い方を連想させる。が、そこは神機、ソーマの尋常ならざる膂力をもってすれば、神機を思いっきり振り抜けば、刃先で斬ることも可能。

 特に、彼の必殺技とも言うべきチャージクラッシュは必見だ。オラクル細胞の力を溜め、一気に解き放つ重たい一撃。もう、爽快だね。

 

 たぶん僕も刀身パーツをバスターブレードに変更すれば同じようなことはできると思うけれど、やっぱりここは現実。ゲームとは違い、刀身パーツは人によって合う合わないがある。僕の膂力も通常のゴッドイーターと比べればある方だけれど、それでもソーマと比べればやっぱり見劣りする。

 僕が()()()しっくりくるのも、今使っている呪刀系統のロングブレードタイプだし、そこは適材適所。無理にバスターブレードは使わなくてもいいかなって。

 

「……ん~」

「……ちっ、なんか言いたいことでもあんのか?」

 

 ジーッとソーマの身体をまじまじと見ていると、その視線に耐えかねたのか、ソーマが舌打ちをしながらこちらを向く。

 斜めに頭を傾げ、こちらを見下すような恰好だけれど、うん、相変わらずそんな姿も絵になる男だね、君は。

 

「いや、うーん……う~ん?」

「……」

 

 僕が煮え切らない返事をしているからか、ソーマの目が少しずつ細くなってくる。

 そこで僕はようやく、この違和感の正体に気付く。

 

「あ、ソーマ、身長また伸びたでしょ」

 

 そう、そうなのだ。

 この前までは並んで歩いても頭二つ分くらいの差しかなかった。だから、その時からもソーマと話をする時は見上げる形になっていたわけだけれど、今は少し離れているにも拘わらず同じ程度見上げているように感じるんだよね。

 そこで、ズイッと鼻先がソーマの服にくっつくくらい近付いて顔を見上げて見れば──。

 

「やっぱり! だって前よりも首の角度がきついもんね! ずるいずるいソーマばっかり! 僕とそんな歳変わんないくせに、ドンドンおっきくなってずるい!」

 

 ずるい!

 

 僕なんてこの前2か月ぶりくらいに身長測ったら0.2mmしか伸びていなかったというのに、ソーマは目算5cmは伸びている気がする。

 既に170cm前後くらいはあるのではないだろうか。

 確か、日本人男性の平均がそれぐらいだから、12歳にして成人男性並みの身長ってわけだ。くそっ、海外か、海外の血のせいなのか!

 

「くっ……! おいっ、離れろ!」

 

 僕がずるいずるいとソーマの服を引っ張ってダダをこねていると、流石に鬱陶しくなってきたのか僕の腕を掴み引きはがそうとした。

 

「わわっ、そんな強くされたらっ!」

 

 流石に抵抗されたら手を離そうかなと思っていたら、思いのほか強い抵抗にあってしまい、バランスを崩し倒れそうになった。

 その結果、あぶねっとソーマの服をより強く掴む形になってしまい、それに巻き込まれたソーマもそのまま体がぐらつき──。

 

 ドスンッとそのまま地面へ倒れ込んでしまう。

 

「いてて……もーそんなに暴れないでよー。おかげで転んじゃったじゃないのさ~」

 

 大して痛くはないのだけれど、反射的に目を閉じてしまう。

 まぁ、しつこい僕にも原因はあると思うのだけれど、そんなに強く抵抗しなくてもいいと思うんだよね。なので文句を言いながら目を開けると──。

 

 コバルトブルーの瞳が目の前にあった。

 

 うん、大分近い。

 

 どのくらいって瞳の中の角膜とか虹彩がよく見えるというか。

 

 わぁー、にしても近くで見るとすっごい瞳綺麗だよね。

 透き通った青っていうか、なんか大空って感じでさ、見ているとそのまま吸い込まれて行きそうで。

 このまま、そう、僕も大空に連れて行ってくれたりしないかな──。

 

「……っ、悪い」

 

 ふと、急に青が遠くなる。

 ついでに体の重みもなくなったから、どうやらソーマが僕の上からどいてくれたみたいだ。

 

 ソーマが顔を逸らしながら手を差し伸べてくる。

 

「あ……ありがとう」

 

 僕はソーマの手を取ると、ぐいっとそのまま体を引っ張られ、自分の力を殆ど使うことなく立ち上がる。

 立ち上がったけれど、今度は繋いだ手に目が行ってしまう。

 

 わぁ、手もおっきぃね。

 

 僕の手の一回り? 二回りくらいおっきな手。

 

 ──繋ぎ方を変え、お互いの手のひらを合わせてみる。

 

 たぶん僕の顔を覆いつくして窒息させることができるくらいにはおっきな手だ。

 

 ──今度は絡み合わせるように繋いでみる。

 

 これだけおっきぃと片手で色んなことできちゃうよね。通信機も片手で済むし、Nornの操作も楽そう。あ、ピアノとか弾きやすそうだよね。

 

 ──にぎにぎ。

 

 そう言えば、一心の手も同じくらいおっきかったな。違う手のはずなのに、凄く安心する──。

 

「い、いい加減に離せっ!」

「あぁー」

 

 そのまま今度は頬ずりしようかなと思っていたら手を引っ込められてしまった。おかげで僕の手は、すっかり空っぽである。

 

 ソーマは顔を背けているが、フードの影からチラリとのぞく顔が少し赤いように見えた。

 

 ほほぉ……。

 

 ソーマ君や、もしかして照れているのかなぁ?

 

「ふひっ……」

 

 可愛い奴だなぁ。

 うんうん、そうだよね。

 同年代とのコミュニケーションなんてこれまで取れたことなかっただろうし、こうして僕という同僚、もとい、友達との接し方が分からなくて混乱しているんだよね。

 

「……くそっ、なんか凄く腹が立つ気配がするな」

「えぇー、どうしてだろうね?」

「ちっ……」

 

 おっと、からかい過ぎたのだろうか。

 ソーマは完全にそっぽを向いてしまって表情が見えなくなってしまった。

 

 ま、仕方ない。ほどほどにしておかないとね。本当に嫌われちゃったら流石の僕でも傷付いてしまう。

 

「ごめんごめん! そしたら帰投地点でヘリを待ちつつ、周囲警戒しないとね」

「……ふぅ、調子狂うぜ」

 

 ちなみに、今でこそこんな軽口叩いたり、からかったりできる間柄になれているわけだけれど、最初からこうだったわけではない。

 

 旧ロシアからの帰還後、僕とソーマで一緒に出撃することが殆どだった。

 

 どうも、ツバキさんやリンドウさんが気をまわしてくれていたみたいで、歳の近い者同士コミュニケーション取って連携力を鍛えよ、そんな感じでバディとして登録されていたようだ。

 

 それで、最初の方とかは話しかけても「チッ」とか、イヤホンで耳を塞いで無視を決めこまれてたり、任務外で見かけて話しかければ逃げられたりしてたからね。おかげで初めの方は割とマジで凹んだ。しかも時折警戒心のこもった鋭い瞳とか、得体のしれないものを見るような視線を向けられたりとかね、何だったら有象無象からの陰口を聞くよりも効いた。

 

 けれど、挫けず続けていくとその内、こうなったら何としても仲良くなって、数年後に当時のことを弄って笑ってやるという反骨精神が芽生えてきた。

 

 それからは姿を見かければとにかく話しかけ、姿が見えなくても探しに行き絡み続ける。Nornのメールとかも一日一通を目標に送り続けてやった。

 ソーマもソーマで挫けず? 無視を決め込んでいたわけで、もうそこまで来るとお互いの意地の張り合いという感じだった。

 

 が、最近は近付いてもすぐに離れていくことはないし、任務中の会話も普通にしてくれる。それにちょっとした雑談なんかもリアクションが薄いけれど聞いてくれたり、ツッコミをくれたりするようになった。

 

 特に音楽の話をすると、耳がピクッと動いて「は? 別に興味ないが? あ、でも聞いといてやるよ」みたいな反応をして面白いななんて思ったり。

 こうやって変化の実感が湧くと嬉しくてこれまでの努力が報われてきたなと感じる。

 

 調子にのってだる絡みしたりすると当分口聞いてくれなくなったりするから、こいつ猫みたいなやつだなぁなんて思ったりもしている今日この頃。

 

「……おい、来るぞ」

 

 なんて、ソーマとの関係値蓄積の軌跡を思い出していると、ふとソーマが鋭い視線を遠くに向ける。

 

「あー、うん。そうだね。来てるね」

 

 僕もソーマが向ける視線の先──どこまでも不快な感覚を放つ存在たちを見る。

 

 そこには遠目にヴァジュラとシユウ。

 ゴッドイーターの序盤であれば中々苦戦する組み合わせだ。

 実際この極東支部でもヴァジュラは新種に近いもので、まだまだ、既存のゴッドイーターでの戦い方は確立しておらず、死傷者の数も一番多い。

 シユウに関してはヴァジュラほどでないにしろ、その機動力と武人めいた動きが厄介なアラガミであり、ベテランと表立って言うにはこいつを倒さないと始まらない相手でもある。

 

 そんなやつらが揃って出現しているのだから、そりゃ──。

 

『凛ちゃん!? そっちにヴァジュラとシユウの反応が出ているんだけれどっ!!?』

 

 突如無線機からサクヤさんの慌てた声が聞こえてくる。

 思いのほか大きな声に無線機を顔から離してしまった。

 

「あ、ハイ。なんか出てきました」

『なんかって……! あなたたち今二人でしょ? リンドウとか応援を呼ぶから無理せず──』

「あっ、ソーマが行っちゃった……てことでサクヤさん、僕たち二人で余裕そうなので特に応援は不要です」

『いや、でも──』

 

 全く、サクヤさんも心配性だなぁ。

 

 リンドウさんから色々聞いていると思うんだけれど、オペレーターになってからまだ半年ぐらい? まぁ、僕やソーマって一応12歳だから、子供ってことで心配しちゃうのかな。

 

 今も『ちょっ、あっ、リンドウ! ちょうど良かった! 凛ちゃんたち二人で……』とかがっつり通信に入ってますよーって。

 

 僕は思わず笑いが漏れてしまう。

 

 本当に騒がしくて暖かな人たちだ。

 

「さて……おーい、ソーマー。置いてかないでよー」

 

 ソーマが一人でヴァジュラの方に向かっていってしまった。

 極東支部に所属してから日が浅いと言えばサクヤさんと同じなんだけれど、『公式』な戦闘経験が薄いだけであって、身のこなしを見ていれば十分経験者のソレだった。

 初めて戦闘してるところを見た時はこれで初心者とかマジかよなんて思ったものだけれど、そりゃゴッドイーターの始まりと言われる人だしね、そりゃ裏で戦ってたりとかしてもおかしくはない。

 だから、あのヴァジュラ相手に一人で突っ込んで行っても、ソーマだし大丈夫だろうという安心感がある。

 

 ただ、流石に一人であれらを一気に相手するのは大変だろうから。

 

「仕方ないなぁ。じゃあ、僕はシユウの方貰うからねっ」

 

 ソーマの後ろを取ろうとしていたシユウに肉薄し、神機の切っ先で翼を斬りつける。

 これは倒すためのものではなくて、ヘイトを僕に向けるためのものだ。

 案の定、シユウは傷を付けて来た僕に怒りが湧いたのか、即座に活性化したので、既にヴァジュラと戦闘し始めたソーマから距離を取るようにバックステップで下がる。

 するとシユウはそれを追いかけるように翼を広げ低空飛行で向かってくる。

 

「はいはい、距離を取ったら滑空で近付いて来る……分かりやすすぎてあくびが出るね」

 

 予想通りの動きを見せてくれるシユウ。

 通常推奨されるのは大きく回避をすること。

 あの滑空ってほぼ直線にしか動けないからね。

 

 けれどそれじゃ時間が掛かる。

 

 だから僕は前に出る。

 

 ゲームでもそう。

 広げた翼の先にある拳と胴体の間、ここをすり抜けるようにステップすることで回避することができる。

 でも、ここは現実でもある。ただ回避するだけで時間を消費するのは勿体ない。だから、潜り抜ける瞬間。

 

「ふっ」

 

 翼の付け根、結合の弱い部分、僕はそこに刃を添え通り過ぎる。

 

 するとシユウの片翼は面白いくらい簡単に斬り裂かれ、体から離れていく。

 当然そうなると滑空のバランスもとれないからそのまま地面へと滑り込んでいくのだけど、それよりも早く、僕は神機を振った勢いを利用して体を反転。

 地面を強く蹴り、すぐにシユウに追いつくと、今度はもう片方の翼も斬り落とす。

 

 両翼を失ったシユウは今度こそ墜落し、数mほど砂埃を上げながら地面を削っていった。

 

 何が起きたのかわからない──そんな風にシユウが頭を振って顔を上げた先、そこで僕は既に神機を逆手に振り上げている。

 

「ソーマ待たせるのも悪いしさ、お前はここまでにしてあげる」

 

 そしてそのまま捕食形態(プレデターフォーム)にした神機で、シユウの上半身ごとコアを喰らう。

 

「……ま、期待してなかったけど」

 

 取得できたコアはコモンもコモン。

 レアものとはいかなかったけれど、まぁ、きっと何かには役立つだろう。

 

 まだ活動中のアラガミを捕食したわけだから、例の気持ちの悪い感覚が全身を包んでいく──。

 

──マズイ。

 

 が、無理やり抑え込む。

 それに()()もお気に召さなかったのか、ボソッと文句を言ってくる。

 いや、神機が少しカタカタと動いているのでよっぽどだったのかもしれない。

 

 随分とグルメなことだ。

 

「文句言うな──さ、ソーマの方はどうかな」

 

 ソーマはと言うと少し離れたところで絶賛戦闘中だ。

 

 重たいバスターソードを持っているとは思わせない軽快で巧みなステップ。

 無理な攻撃は行わず、隙を見つければすかさずその重たい一撃を叩き込む。

 

 僕と似たヒット&アウェイでありながら、よりパワフルな戦い方。

 

 一撃一撃の音が空気を震わせるようで、それが見ていても聞いていても、感じていても心地がいい。

 

(あ~、やっぱりソーマの戦いはいいねぇ。こうズドンッって芯に響く感じが凄くいい)

 

 重たい武器ってロマンがあって素晴らしい。

 僕の戦い方には合わないけれど、こう憧れるものはあるというもの。

 特にソーマみたいなツンケンクールボーイがやっているっていうのもポイント高いよねぇ。

 

 そうやってソーマの戦いっぷりを眺めていると、ヴァジュラの背中の赤いマントが発光し始めるのが見えた。これは周囲に雷撃を与える範囲攻撃の方か。

 

 ソーマも察したのか、即座にタワーシールドを構えるが──。

 

「……っ!」

 

 ちょっとだけ遅かったみたいだ。

 直撃こそ免れているけれど、体に痺れが残ってしまったらしく、動きが鈍い。

 

 たぶん、ソーマだったらこっからでも問題なく切り抜けられるんだろうけど、万が一ってこともあるしね。

 

 前脚を振り上げるヴァジュラとソーマの間に体を滑り込ませ──。

 

 斬り上げ、一振り。

 

 返す刃で、二振り。

 

 たったそれだけで、ヴァジュラの振り上げた前脚と首が斬り落とされた。

 

 不快な返り血が少し、僕の髪を濡らす。

 

「ふふん、貸し1、だね。ソーマ君?」

「……ちっ、余計なお世話だ」

 

 ソーマは体の痺れが抜けたのか、バツが悪そうに顔を顰めると、神機を肩に担いだ。

 

 確かにソーマは強いけれどね、まぁ、ゆーてまだ12歳だし。

 裏で戦っていたことがあったとしても、僕とは違って、額面通りの歳しか生きていないわけだし。

 何より、この世界の人たちからすれば()()ヴァジュラは新しいアラガミなわけで、掠り傷も負わずに討伐するなんて今のリンドウさんでも難しいくらいだし。

 

 だからそんな悔しそうな顔しなくてもいいと思うんだけれどなー。

 ま、それも健全な成長のためと思えば、微笑ましくもあるけれど。

 

 その後、僕はヴァジュラからコアを抜き取り、相変わらず心配性なサクヤさんの通信に平謝りをしながら迎えのヘリを待った。

 ヘリを待っている間、トン、と肩を優しく叩かれたので振り向けば、相変わらずの仏頂面のソーマが何かを手に持ち僕に突き出していた。

 

「……使え」

「使えって……あ、ハンドタオル?」

 

 ソーマの手にあったのはハンドタオルだった。

 一体何だろうと思えば、もう片方の手で自分の頭を指さしていた。

 

「え……あぁ、もしかして、さっきの返り血のこと?」

 

 するとソーマは小さく頷く。

 

 仏頂面はまだ健在だけれど、彼のコバルトブルーの瞳には、どこか優しさがある──そんな気がした。

 

 あぁーもう。

 ほんともう。

 そういうところだよ、ソーマ君。

 君って本当──。

 

「天使?!」

「……頭大丈夫か、お前」

 

 

 

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