射撃の名手が幻想入り   作:Sushi God

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2話 親切な人形

「ッゲホ・・・ゲホッ・・・ガッ・・・」

 

「全く・・・よくもここまで生き延びれた物ね。」

 

アリス宅にて、次元は寝込んでいた。

理由は単純、魔法の森の瘴気に当てられたからだ。

対策無しでは、普通の人間はまずこの瘴気には耐えられない。

特に外来人なんかはコレが原因で野垂れ死んだりもする位だ。

 

「はい。解熱剤と、特効薬。しばらくすれば楽になるわ」

 

「悪いな、何から何まで・・・」

 

「よく見るのよ、魔法の森で倒れてる人間は。いつもの事よ」

 

言うとおり、女の手付きはもはや作業をする様だった。

それにその女を手伝っている小さな人形も・・・

人形?

 

「幻覚まで見えてきたか・・・」

 

「・・・これは幻覚じゃなくて、現実よ。」

 

「冗談じゃねえぜ・・・人形が一人でッゴホ空を飛ぶわけガハッ」

 

「はいはい。じっとしてなさいよ。死んでも知らないわよ」

 

ハァ、とタメ息をつきまた横になる次元。

病気に掛かるのなんて何年ぶりだ。

女の方へ目を凝らすが、やはり人形はフヨフヨと漂い、何かを運んでいる。

そして時折こちらを見ては、また作業に戻るのだ。

なんとも不思議な光景である。

 

そう思っていると、女がこちらにきて、こう尋ねた。

 

「顔色はよくなったみたいね。とりあえず。貴方名前は?」

 

「ああ。俺は次元大介。・・・次元でいい」

 

「そう、次元。私はアリス・マーガトロイド。アリスでいいわ。」

 

「マーガトロイド・・・とすると、ここはイギリスかそこらか?」

 

「・・・残念だけど、ここはイギリスじゃない。ここは日本の中にある・・・でも、日本じゃないわ」

 

その言葉を理解できず、少し考えるがやはり意味が分からない。

どういう事だ、と聞くと、信じられない答えが帰ってきた。

 

「・・・貴方は、神隠しって信じるかしら?」

 

「神隠し、ねえ。いい響きじゃねえか。信じた事ぁ一度も無えがな。」

 

「ここは、貴方のように『神隠し』をされた人間が行き着く場所、幻想郷よ。」

 

神隠し?幻想郷?何を言っているんだ、コイツは?

そう思い顔を覗き込むが、至って真面目な表情で、少なくとも冗談を言っているようには見られない。

それに先程の空を飛び襲ってきた少女に、空飛ぶ人形・・・

次元は徐々に理解してきた。

 

「・・・つまり、ここは死後の世界、とかいうオチか?」

 

「少し違うわね。」

 

「というと?」

 

「ここは本来は、幻想になった者が集まる場所。妖怪とか、鬼とか、勿論人間もいるけど。」

 

「・・・信じたくはねえ話だが」

 

人形のほうをチラリと見る。

その人形は相変わらず澄んだ目でこちらを見つめていた。

 

「アイツを見る限りは、嘘だと決め付けるのも良くねえみたいだな」

 

「理解が早くて助かるわ。」

 

一息ついて、アリスはこう切り出した。

 

「次元、だったっけ?」

 

「ん?」

 

「・・・ここに来た人間は、帰る事もできるし、この文明の薄れた場所に残る事も出来る。貴方はどうするの?」

 

「そうだな・・・」

 

少し間を置いてこう答える。

 

「確かに自然に囲まれる生活も悪くねえが・・・オレにもまだ仕事が残ってるんでね。」

 

「仕事?」

 

「ああ。相棒の世話を焼かなきゃならねえ・・・生憎だがこんな所でのんびりする訳にはいかねえのさ。」

 

「そう、分かったわ」

 

「何でまた急に?」

 

「話が早いほうが、助かるの。私も、博麗の巫女もね。」

 

博麗の巫女、という言葉にピンとは来なかった。

しかし女性のそう何度も質問を繰り返すのも無粋なので控える。

常にレディに頼られる、これがモテる男への第一歩だ。

・・・まあ、看病されている身が言える事ではないのだが。

 

「身の回りの世話は、その子がやってくれるから。」

 

「おう。・・・名前なんかはあるのか」

 

「上海人形、と名付けているけど。」

 

「そうか、上海ちゃん、よろしくなー。」

 

呼びかけると、少し嬉しそうな目をして此方に寄ってくる。

これが人形なんて、本当に信じ難い話である。

 

「明日には元の場所に帰る『手続き』をするわ、貴方も一緒に来て頂戴」

 

「あいよ」

 

「・・・それにしても、不思議な人ね」

 

「どうした?」

 

「家に来た人間はね、皆口を揃えてこう言うわ。気持ち悪い部屋だ、ってね」

 

「まあ・・・こんだけ人形が並んでれば、そうも言われるだろうな。」

 

「でも貴方は顔色一つ変えない。それどころかむしろ眺めてるようにも見えるわ」

 

「うん・・・そうだな」

 

フゥ、と一息を吹かす。

口元にいつもの物が無いのを煩わしく思いながら、こう言った。

 

「もっと、滅茶苦茶に恐ろしいもん、何回も見てきたからな。」

 

「・・・そう。」

 

アリスはそれ以上何も聞かなかった。

帽子を顔に被せ、ゆっくりと眠りにつく次元。

薄れていく意識の中、こんな事を考えていた。

 

(ルパンの奴・・・心配してるだろうな)

 

だが次元がルパンの元へ帰るのは、まだまだ先の事となるのだった。

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