死亡エンドの別軸で 作:出戻りのきのこ
原作から違ったら修整するか消すかします。
超絶好みなのでもし読んでない方はぜひ読んでみてください。
これは響星と会う少し前の話
「ねぇ……みんなちょっと聞いて」
ロフトから降りてくる桜月から何時もとは違う冷え切ったような声色が漏れている。彼女はさっきまで彼と一戦を交えていたはずなのに何故か異様な位重々しい雰囲気を出していたので私達の視線を吸い寄せた。
「どうしたの?そんな声を出して」
私は不安に駆られながら桜月に尋ねる。こんなときは決まって嫌な予感がする。
「聡君が……浮気してるの」
その言葉の瞬間、一気に場に緊張感が走る。しかし、その時間も束の間、朱奈がいつもの笑顔で口を開く。
「まーたそんな事言って。前もそんなこと言ってたよ〜?」
「そうですね。その時は病院の看護師に嫉妬していましたよ。」
「それは紫乃もじゃない……」
「麗音さんもですよ」
何のことかしら。まぁ、桜月がこうなるのも何時ものことだしあまり気にもとめて無いのだけれど、手に持っている物から目を離せなくなった。
彼のスマホだ
最初は4桁の暗証番号にしていたが私達が軽々と突破するので、暗証番号が4桁から8桁に増えていき、暗証番号が駄目だと分かると複雑なパターン認証に変わったのだがそれでも朱奈や桜月が突破するものだからついには指紋認証になったのだ。その為、半年間は誰も聡のスマホの中を覗こうとはしないと思ってたのだけれど、桜月だけはそうではなかったらしい。
どんな執念よ……とは思ったけど、その事実だけで私達の空気は一段と緊張感が走る。紫乃も優雅にお茶を飲んでいるが目線はスマホから動かないし、朱奈に至っては笑顔が張り付いている。
「笑えない冗談よね?聡君のことを私も信じてるわ……でも、そうじゃないのかって私不安になって……っ」
桜月はロフトの階段から床に降りるとそのままぺたんと崩れ落ち、涙を滲ませながら動けないでいる。私達は彼女に構うことなくスマホを取り上げて聡のメッセージアプリを開く。
そこには『サトウ様』と書かれた差出人からの連絡が来ていた。アプリの下までスクロールをしてみると私達以外で話している形跡はなく、ただ一人『サトウ様』と名乗る人物だけが私達よりも一番上まで来ていた。
「これって……」
「メッセージの中まで見て……」
言われるがまま私はその人との個人チャットを開き、やり取りを確認する。そこには数多くの話をしている様子が確認出来た。
「うーん……これはねぇ〜……」
「なるほど、そういうことでしたか……」
「嘘……でしょ?」
こんなに仲睦まじく?私達以外で?そんなのありえない!だってだっていつも一緒なのに……そんなそんなそんなそんな!聡、私のこといらなくなっちゃったのかな……
「いや〜だってこれ「聡私の事嫌いになっちゃったのかな……」……え?」
「二人とも落ち着いてください。これは「そうよねっ……!私の思った通りこれ浮気よね!」あの……桜月さん?」
そうよ、これは問いたださないといけない。私と桜月は目を合わせて強く確信した。
『サトウ様』とかいうやつをこの世から消す。
「明日こいつに会いに行く。」
「賛成よ。明日決着をつけてやる」
「じゃあ紫乃ちゃん。二人をよろしくね〜。私明日バイトだから〜」
「何で私が……分かりました。取り敢えず、明日聡さんにこの人のことを聞きましょう」
「賛成!」
「そうするわ!」
私達は意気揚々と彼の家から出ていき、明日に向けて一人作戦会議を立てることになった。
俺こと入谷聡には友達がいない。
その代わり俺には勿体ない女性が俺の事を好いてくれている。しかも4人だ。成り行きとはこんな幸運なことは無いと心底思う。そんな俺には贅沢だと言われようが夢がある。
大学時代のキャンパスライフで友達と遊ぶ事だ。そんな可愛い女性に囲まれていたら怒られそうだがどうしても体験したいものは体験したいのだ。学校帰りにカラオケに行ったり、飲み屋街をはしごしたり、サークルに入ったり……色々と願望はあるのだが、特に友達……せめてキャンパス内で空きコマや昼食を食べる友人が欲しかった……まぁ、彼女らのせいで俺に近寄りがたいというのはあるんだろうけど。
「夢のキャンパスライフ、少し理想とは違いますが楽しんでいきますかぁ」
そんなこんなで朝の日差しで今日も起きる。何となく良い一日になりそうだ。
「聡君?私達に隠してる事、無い?」
そんな事を思ったのも束の間、今日の朝は秋も始まったばかりなのに冷え切っている気がした。
「え……心当たりとかないんですけど」
慌てて目をそらすと麗音と目が合う。麗音はすぐにぷいっと目を背けたが何となく生気が籠もってない気がした。
マズイ……
何かしらの地雷を踏んでいるのだろうと思っているが何も思いつかない……俺何かしました?やっちゃいました?しかし、何をどう考えても心当たりがないものはないのだ。
「ふふっ、大変そうですね。聡さん。」
「……だから急に背後から抱きつくのは止めてくれませんかねぇ紫乃さん」
「駄目です♡」
そんな紫乃の発言にも空気は変わらずそのままでいる。何考えてるか本当に読めない……
「時に聡さん、何時も授業中に隣に座って勉学を共にしている例の方とは仲良くしていらっしゃるのですか?」
「……っ!!」
そこ言葉で桜月と麗音から明確な殺気を感じる。急に怖くなり顔が引きつりそうになる。にしても隣に座って勉学を共にしているとなると……
「あぁ、ゆうのことか」
「まぁ、ゆうさんというのですか」
「まさかの呼び捨て……?」
「う、嘘……」
「……一応な?最初は佐藤さんって呼んでたんだけど佐藤って多いから下の名前で呼んでくれって言われてそうしてるんだよ。」
俺別に変なこと言ってない……よな?麗音と桜月の目のハイライトは消えかかっているが、その一方で紫乃は機嫌が良さそうにニコニコと笑っている。
「そうでしたか。私達その方に興味がありまして、少しお話したいと思っております。」
「え、ゆうに?紫乃は……まぁ分からんでもないが麗音と桜月もか?」
「ええ、そうです」
何を企んでいるんだこいつら……
「え、えーっと悪いやつではないと思うのだが、良いのか?特に麗音?」
「何で私だけ仲間外れにするのよ……!!どうして……どうしてなの……やっぱり私……私なんて……」
「わわ!!泣くなって!分かった分かったよ!連絡しておくから!来週辺りで時間作るから」
一気にムードは激重になり、心無しか天気も悪くなった気がする……
取り敢えずここは穏便に済ませよう。
「……ょう」
「ん?なんて?」
「今日じゃなきゃ、や……」
本当に何なんだよお前らぁ……
そう言って机の上に置いてあったスマホを開き、『ちょっとお願いがあるんだけど……』と連絡を入れた。
俺が所属している経済学部は学部の在籍人数が大学で最大になる。経済というのは案外範囲が広いもので経済系、データサイエンス系、金融産業系と多岐にわたる。学科も十数あり、研究室やゼミに関して言えば五十を超える。
それなら勉強している内容や受けている講義は全部違うとなるかと言えばそれは違う。科目によっては別の学科や別のクラスと混合で勉強しなければならない。そして尚且つ大学というものは講義のなかで協調性やグループワークを求められる。学年や学科を超えた発表やプレゼンテーションがよくあるのだ。
しかも俺には友達がいないのでこの手の講義に苦戦を強いられた。人によっては出席を代筆で済ませようとしたりするし、専任講師と仲良くなる事で乗り越えられるケースがあるが、その時間はあの四人と過ごしててあまりない。
ここまで言ってわかるだろう。
要は過去問が回ってこないのだ。特に第二外国語がヤバい。前期後期で計4つの単位を取る必要があるのだが俺は一回落としてしまった。しかも寝坊してテストを受けられなかったせいで……二年の前期俺は頭を抱えたがどうにもならない。取り敢えず何とかしないとと思って出席した英語の授業で会ったのが「ゆう」だった。
ゆうは一つ学年が上で浪人生だったらしく二つ上の先輩にあたる人物だった。学科こそ違うが第二外国語の先生の当たり外れや楽単や必修の過去問に至るまで世話になっていた。サークル掛け持ちにアルバイトまで充実していたので授業の時やすれ違ったときとかでほんの少ししか会う時間はないが、いつも助けてくれていた。何時しかその感謝の気持ちを忘れないように一時期「ゆう様」と呼んでいた時期もあったが苦笑していた。ゆう曰く「私は本当は凄くなりたかった。もっと出来る人間だと思ってた。でも気づいた、凡人ということに。だから人より時間使ってやっとなのよ」との事。ただ、個人的には全く普通には見えない奴というのが率直な感想だった。
そんなゆうに急遽桜月、麗音、紫乃に会わせる事になった。
いや、どうしてこうなった?
心の底からそう思うが、彼女らに強く言われたら仕方ない。特に麗音にはあまり会わせないほうがいいと思うんだよなぁ。
取り敢えず、お願いしたところ二つ返事で了承してもらったので昼コマに時間に会うことにした。
頭の妄想でシチュエーションを膨らませるのはいつものことですが、小説を書くのは本当に久しぶりなのです。
やっぱり楽しいですね。