終末世界の陰陽師/スターゲイザー 〜時代遅れの特撮オタク、ニチアサを新世界に招来す〜 作:柳之助@バケつ1~4巻発売中
その音は足音やちょっとした物音がしたというレベルではなかった。
大きく、地上と地下を繋ぐハッチが勢いよく閉まったのだ。
同時に、地下室内の照明が消える。
部屋にある光源は、ホログラムの淡い光だけ。
「うひゃ!?」
「っ……!」
北斗は声を上げて驚き、ロアもまた身をこわばらせる。
ハルはハッチに対して北斗を庇う位置に立ち、
「ノハさん」
「妙な気配があるの」
懐から符を取り出し、身構えた。
そして、
「――――誰だ、お前たちは」
「!」
いつの間にか、ハッチの下に男がいた。
見すぼらしい服装の、痩せた男だった。
頬は痩け、ホログラム頼りの僅かな光でもわかるような濃い隈が目元に浮かんでいる。
「あ、あの! 私達は――その、えぇと」
唐突な登場に北斗は慌てた声を上げ、自分たちについての説明をしようとしたのだろう。
だが、ハルたちの行為はただの侵入だ。
どう説明するのか悩んで、言葉に詰まり、
「サラーサ・ルーンファミリアを知っていますか?」
鋭く、ロアの言葉が飛んだ。
「私は彼女の妹です。姿を消した姉を追って、ここまで来ました」
「……サラーサ」
男は、ゆっくりとその名を呟く。
「そうか……彼女が言った通りだな」
そして、何かに納得したように頷く。
「! 姉を知っているのですか!?」
「知っている。彼女は正しかった。あぁ、なるほど。そのためだったか。いいだろう」
彼はもう一度頷き、レールガンのホログラムに視線を向け、
「――――俺の発明を、盗みに来たんだな?」
ハルたちを敵意の籠った視線で睨みつけた。
「えっ」
呆けた声を漏らしたのは北斗だ。
発明。
ハルにはよくわからないが、北斗が苦言を呈した兵器。
彼がこの部屋の主なら、それの制作者であることは驚きはない。
だが、
「いや、俺達の目的はロアのお姉さんのことを知りたくて来たって今言ったばかりなんだけど」
「これはちょっと機構に興味が湧いただけで盗むとかそういうのではないんで!」
慌てて北斗がホログラムを消し、タブレットを手に取るが男は聞いていなかった。
「いいや違う! お前たちは俺のレールガンを盗みに来たんだ! そうだ! 来ると思っていた! 研究はもう少しのところまで来ているんだから!」
「………………」
男は急に激昂し、ハルは反応に困った。
確かに自分たちは怪しいが思ってもいなかった方向からの怒りにどう言っていいか分からない。
「あの! 別に私達はレールガンに興味はないんですけど……?」
「黙れ! 俺の研究は渡さない!」
だが、男に会話が通じなかった。
流石に三人で一瞬視線を合わせ、困惑する。
「……『ネノクニ』ってのはこういう自己完結型が多いのか?」
「少なくないですけどちょっと支離滅裂すぎます。科学者の特性なのでは」
「いやいやこのレベルはそうそうならないよ」
ありえなくないのか……とハルは都会の人間に慄いた。
「俺の研究は、俺が守る……!」
男が懐から取り出したのは、何かの機械とカードだった。
機械の方は掌に収まるサイズの長方形の薄い箱。カードが収まるように、短い辺にスリットがあった。
カードは金属製のようで、何かのイラストが書かれている。
「待って、それって―――!」
その二つを見て、北斗が驚愕の声を上げる。
だが、北斗の静止を男は聞かなかった。
「そのためにこの力がある……!」
カードが、機械に差し込まれ、
『――――ミスティックライズ』
エコーのかかった機械音声が響き渡った。
男はそれを胸に押し当て、
『カマソッソ』
その姿を、変貌させた。
機械から黒紫の光が男の全身に伸び、包み込む。
その機械さえも光に生まれ、現れたのは、
『キィィィィィ―――!』
コウモリの姿を模したような、怪人の姿だった。
北斗は呆然としながら、その名を口にする。
「―――――ミスティーク」
●
コウモリの怪人―――カマソッソミスティークは、腰から手首にかけ翼膜を持っていた。
指先の爪は鋭く、口元には大きな牙が生えている。
カマソッソ。
南米、マヤ文明の神話に登場する人の首を狩るコウモリ。
「キィィィィ!」
耳をつんざくような寄声と共にカマソッソミスティークが三人へと飛びかかってきた。
驚く北斗には反応ができない速度で、
「北斗!」
「きゃあっ!?」
横からハルに腕を引っ張られ、横にスライドさせられる。
大きく飛び退き、カマソッソミスティークはレールガンが乗った机に飛び込み、
「キィッ!」
腕の一振りで、そのレールガンごと机を両断した。
翼膜が、研ぎ澄まされた鎌のような切断力を有しているのだ。
「おいこいつ自分の研究とかいうのを自分でぶった切ったんだが!?」
「み、ミスティークになって正気を失ってるのかも……!」
「ややこいな……! 北斗、ロアと一緒にさっさと上に逃げろ! こいつが先導する!」
叫びながら、ハルが指に挟んだ符を振るう。
するとその符は姿を変えた。
烏だ。
それも、三本の足を持つ烏。
「カァー!」
「ヤタ、頼むぞ」
三本脚の烏、ヤタ、陰陽術。
「それって、八咫烏!?」
日本神話に登場する太陽の遣いと言われる烏の『神話存在』。
「カァー! カァー!」
高速で飛翔する八咫烏はハッチへと飛び、体当たりで開口させる。
「行け、北斗。こいつは俺がどうにかするよ」
「で、でも……」
「行きますよお姉さん!」
ロアに手を引かれた北斗は、わずかに迷った。
だが、
「大丈夫だよ」
カマソッソミスティークを背にしてハルは北斗へと微笑んだ。
「こういう時のために俺がいるそうだろ?」
「キイイイ!」
身を翻したカマソッソミスティークが背後から鎌の翼をハルへと振るう。
「ハルくん!」
だが、
「っと」
死角からの攻撃を、ハルは身を低くして容易く回避し、
「―――――招来」
カマソッソミスティークとすれ違うのと同時に、彼もまた変身を完了させていた。
「オオォォォ!」
咆哮と共に振り抜いた右腕がカマソッソミスティークを打撃し、その体を吹き飛ばす。
「イ、ケ……!」
「っ……気をつけて!」
●
「カァー! カァッー!」
八咫烏の先導の下、北斗とロアは廃ビルを脱出した。
足元から重い音が響く中、ビルの敷地を出たところで北斗は足を止める。
「ふぅっ、ふぅっ……ハルくんは……!」
「お姉さん、問題があります」
ロアは冷静だった。
手の中にルーン文字が刻まれた小石を遊ばせながら、少女は北斗へと問う。
「姉さんと知り合いなのはわかりましたがミスティーク化したのならもう話を聞けないでしょう。そうなるとあの地下室を調べたいんですが……」
「それは……」
ノハと融合したハルとカマソッソミスティークが戦えば、地下室はめちゃくちゃになるだろう。
既に一番大物だったレールガンは破壊された。
よく考えれば、地下室の半分を埋めていた発電機が壊れて爆発でもしたらビルごと吹っ飛ぶんじゃないだろうか。
そう思い、どうするべきか北斗は考えようとし、
「カァー! カァー!」
「うわ、ちょ、なに!?」
八咫烏が北斗の周囲を飛び回ってくる。
三本の足で、北斗の肩を掴んで引張りもしてきて、彼女の体が揺らぐ。
足が多いだけで、ただの烏にしか見えないがその力はやたら強い。
「カァー!」
鳴き声はまるで、もっと離れろと言っているようで。
次の瞬間、廃ビルの中から轟音が連続した。
何かが、何かをぶち抜くかのような音。
大気の震えに北斗とロアが身をすくめた直後、その何かは姿を表した。
「オオオオ……!」
「キイイイ――!」
廃ビルの屋上を突き破るハルとカマソッソミスティークだ。
カマソッソミスティークは両腕の翼をはためかせ、足でハルの胴体を挟んでいる。
ハルも抵抗しているが、カマソッソミスティークは意に介さず、
「キィィ……!」
大地へと向かった。
急降下は一瞬だったが加速は十分に乗り、ハルを地面へと投げつける。
「――――!」
二十メートル近い高さからハルは大地へと叩きつけられ、激震する。
道路が破砕され、破片と土煙が周囲へと撒き散らされる。
北斗とロアにも届きそうになり、
「クゥア――!」
甲高い鳴き声と共に北斗の前で八咫烏が翼を広げる。
その小さかったはずの翼が大きくなり、
「わっ」
飛んできた破片や衝撃が北斗とその隣にいたロアには到達しない。
「あ、ありがと……凄いね?」
「カァー!」
バサバサと翼をはためかせる八咫烏はどこか可愛らしい。
「……いや、でもまずいよこれ!」
強烈な衝撃と大きな音だった。
それまではハルの陰陽術によって認識阻害が施され、北斗たちは周囲の注目を集めていた。
だが、流石にこれだけの大騒ぎは無理だ。
「おいおい何が起きている!」
「人様の縄張りで何をしてや、が…………なんだぁ!?」
つまり、周囲の住人たちが聞きつけて顔を出してきたということ。
十数人はいるが全員が見すぼらしい格好をしたものだった。
当たり前のように古い猟銃や拳銃を手にしているのがこの地域の周辺の治安の悪さを物語っている。
中にはどこで手に入れたのか『
区の中心にいる警備員が使っているものの廃棄品を回収して修理したのだろうか、かなり古く補修の痕が見える。
「バケモノ……神隷なのか!?」
狼狽えた住人の一人がカマソッソミスティークに『
怪人はそれを鋭敏に察知し、
「キィィ!」
「こいつ……!」
牙をむき出した威嚇をし、科装銃の引き金を引いた。
強烈な光弾がカマソッソミスティークの翼膜に直撃する。
北斗の知る『アシハラ』で使わているものに比べれば何世代も旧式だが、『ネノクニ』では十分な脅威の科装銃。
その補修品とはいえ、人間を即死させるには十分な火力を持つ。
「キィ!」
だが、そんな武器がミスティークに通用するはずがない。
翼膜に僅かな焦げ痕が出来、中空で一瞬態勢が崩れたがそれだけ。
ぞわり、と北斗の背筋に悪寒が走った。
「に、逃げて―――!」
「キィィィィ!!」
北斗の叫びは、しかし意味をなさない。
空に浮かぶカマソッソミスティークはただ両翼を振るった。
「だ、ダメ……!」
「お姉さん! 正気ですか!?」
「クゥアー!」
思わず北斗が飛び出しそうになったところをロアにしがみつかれ、さらには八咫烏が再び黒い翼を広げる。
そして、刃翼から放たれた無数の斬撃が、彼らの命を一瞬で奪い去った。
首を断ち、体を裂き、鮮血が舞う。
斬撃波は科装銃の男だけではなく、姿を見せていた全員を殺戮するのはほんの一瞬だった。
「あ……あぁ……っ」
北斗とロアは八咫烏によって守られていた。
だが、北斗は目の前の惨劇に膝をつき、
「お、うぇっ」
胃の中のものが、ハルが作ってくれた朝食が喉を逆流してくる。
「っ、ぁ……!」
目にこびりついた、人が死にゆく光景。
ミスティークが人を冗談みたいに虐殺した。
「ちが、う」
頭が割れそうになるほどの痛みと胃の中のものだけではなく内蔵まで吐き出してしまいそうな嘔吐感。
その中、絞り出すような声で、北斗は言葉を吐き出した。
「
だが、
「キィィィイイイイイイ!」
「!」
そんな北斗をカマソッソミスティークは待ってくれるはずもない。
斬撃の雨を生き延びたからこそ目を引いたのだろう。
「キィィ……!」
カマソッソミスティークが北斗たちへと急降下し、その刃翼を振りかざし、
「オオオォ!」
「キィ!?」
北斗へと到達する瞬間、横合いから飛び出してきたハルがカマソッソミスティークの顔面を殴り飛ばした。
「は、ハルくん!」
「ブジ、カ……!」
「え、ぁ……い、一応は……」
北斗に傷はない。
ハルは一瞬北斗に視線を向けた後、小さく頷き前を向いた。
その先には数メートル地面をスキッドしながらも体勢を立て直したカマソッソミスティーク。
科装銃では傷一つつけられなかったが、その画面は大きく歪み血を流している。
「キィ――!」
再びカマソッソミスティークが飛び上がり、斬撃を飛ばしてきた。
ハルはそれを腕を振るって殴り飛ばすが、
「これ、じゃあ……!」
空を飛ぶ怪人に対して叩ける手段がない。
「ハルくん、遠距離攻撃はないの!?」
「イマハ、ナイ」
「……今は?」
北斗が疑問を持ち、そして見たのはハルの手に握られた符だった。
「――――スザク、ショウライ」
符が炎に包まれて燃え尽き、変化はハルの右腕に生じた。
その腕の両側腕部から真紅の羽根が肉を裂きながら生じ、手首に広がる。さらに羽根の両端から細い炎がのみ、手首辺りで繋がった。
まるで、腕そのものが弓と化しているように。
「……!」
真実、それは弓だった。
ハルが炎の弦を弾けば、炎の弓が生じ、カマソッソミスティークへと射出。
「キィッ!?」
危険を悟ったのだろうか、慌てた動きでカマソッソミスティークが避けようとするが掠るだけで肉を裂き、焼き焦がす。
「スザク……朱雀?」
中国神話、或いは日本でも信仰された四方を守る霊獣、その一角。
南方を守護せし炎の鳳凰。
陰陽術が盛んだったという平安時代に信仰された神話存在であるため、ハルがその力を使うこと自体は北斗にとっては納得できる。
だが、信じられないのは、
「元々の力と、重ねがけしてる……!?」
禁術によって融合したノハに加え、炎の弓として朱雀の力が同時に出現しているのだ。
「あ、有り得ない……! そんなことができるなんて……!」
「あの、そんなに不思議なことなんですか? 私からしたら神話存在と融合しているだけで驚きなんですが」
「そりゃそーだよ!」
ロアの疑問に、北斗は数瞬前の不調も忘れて声を上げた。
「複数の神話存在の権能を重ね合わせることは『
ロアに伝わっていないのことがもどかしい。
有り得ないことなのだ。
この世界の誰もが諦めたことなのだ。
それが実現している。
不可能ではなく、可能なことだとしたら。
「
言葉が漏れ、同時に現実は動いている。
「スザク―――」
一際強く、ハルが弦を引いた。
炎の矢が形成され、その鏃に真紅の炎が溢れ出し、
「キュウキュウニョリツリョウ……!」
射出された。
矢は炎の鳥となり、空を駆け、
「キィィィィィ―――!」
カマソッソミスティークを飲み込んだ。
大きな爆発を引き起こし、地面に落下。
炎が晴れた後に残されたのは、焼き焦げた男の死体と、
『――――』
翼が鎌となった、半透明のコウモリが浮かんでいる。
それに対し、ハルは符を掲げ、
「フウ」
符へとカマソッソを封印した。
「―――」
後に残ったのは炎と血の残滓だけだった。
「……カイ」
ハルが変身を解く。
狐の怪人から人間の姿になり、
「っ……ごふっ!」
彼は大きな血の塊を吐き出し、倒れ伏した。
「ハルくん!」
慌てて駆け寄り抱き起こせば、体や腕の裂傷があり、特に右腕が酷い。
朱雀の弓となった羽根が生じた時、腕から生えていたがそれがそのまま傷として残っていた。
「北斗」
「ノハさん、ハルくんは……!」
「朱雀の力を使ったからの、だいぶ負担が大きい。また治療を頼んでもよいか?」
「わ、わかった!」
「お姉さん。私はせめて、あの地下室を調べます。そちらはお願いします」
「う、うん。ロアちゃんも気をつけて!」
ロアを見送る余裕もなく、北斗はハルの体を抱き起こす。
ジョロウグモミスティークを倒した時も同じようなことをした。
だが、その時と違うのは触れ合ったからだから大量の血が流れていたことだった。
「ハルくん……!」
●
「……………………あぁ」
夜、ラボで北斗は一人膝を抱え息を吐いた。
あの後、北斗は拠点にハルを連れて帰り治療を行った。
それ自体は問題なく、今彼は眠っている。
ロアとも連絡を取り、少しだかわかったこともあるらしかったので、ハルが元気になったらまた話し合おうということになった。
「色々ありすぎだよ……」
愚痴をこぼしつつ、今日あったことを思い出し、
「うぅ……」
カマソッソミスティークの起こした惨劇がフラッシュバックする。
あの場がどうなったのか、北斗は調べることが出来ていなかった。
法というものがほとんど機能していない『ネノクニ』の、さらに治安の悪い地域だった。
人が死ぬことだって日常茶飯事だっただろう。
だけど、それにしたって。
「あんなのは、あったらいけない」
冗談みたいに、命が奪われるなんて。
ミスティークがそんなことをするなんて。
北斗が、止めなければ。
「それに……ハルくんの二重憑依」
ノハに加え、朱雀の力を使っていた。
それが可能だとしたら。
北斗の視線が作業台の上に置かれた大きな箱に移る。
「もしかしたら、できる……のかな……?」
自らに問いかけ、しかし答えを口にするのをためらい、
「北斗」
「うひゃ! え、なに――うひゃあ!?」
驚き、そして振り返ってからもう一度驚いた。
ラボに、知らない女性がいたからだ。
ぞっとするほどに美しい女性だった。
十二単という平安時代の女性の服装を着崩した、白髪の女。
二十代半ばくらいのようにも見えるが、妙に老成した雰囲気もある。
さらには、頭から髪と同じ色の狐の耳が生え、背後にはやはり同じ色の尾が見える。
知らないが、しかし誰なのか北斗は思い立った。
「…………ノハさん?」
「流石、賢いのぅ」
ハルと付き従う神話存在。
そのノハが人の姿を取っていたのだ。
「人間の姿に……なれるか。神話存在がそういうことしてたってのは記録で見たことある」
「うむ。ワシらにとっては難しい話ではない。元々人間として過ごしたこともあるしの。ワシの正体は思い至っておるか?」
「まぁ……予想は付いてるけど」
狐で、陰陽術師であるハルの母で、姉、師匠。
神話や伝承に詳しい北斗なら答えは見えていた。
「でも、ハルくんもノハさんも言おうとしてなかったから。陰陽術って名前とかも大事なんでしょ? だから、教えてくれるまであんまり深く聞くつもりはなかったよ」
「優しいの。それでこそ、か」
「?」
「よい、こちらの話じゃ」
ノハは妖艶に微笑み、
「ではワシのことはよかろう。この姿を取ったのは、北斗、主に頼みがあるからじゃ」
「頼み……?」
「ハルがワシと融合するのは禁術という話はしたな。実際、今のハルの通り、あれの命を蝕むものじゃ。今すぐ、ということではないが、それでも確実にの。ワシが負荷を抑えていても限界はある」
「だろうね」
「話が速い」
禁術なんて言われているのだ。
リスクがないわけがない。
「ゆえに北斗。お主に頼みがある。―――どうにか、出来ぬか?」
「ど、どういう……?」
「お主は『
「――――融合の、負荷」
その言葉が北斗の頭の中で何度も響く。
それは北斗にとって重い意味を持つ言葉だったから。
「あれは辛い星の下に生まれ、苦難を進もうとしている。ワシの持つ知識も全て差し出そう。故に、七星北斗。臥して頼む――――どうか、あの子を助けてやってくれんか」
ノハが頭を下げる。
神話存在が自分に頭を下げるということに驚きつつ、彼女の脳内は様々な計算を開始し始めていた。
神話存在との融合。
それによって生じる負荷への対抗策。
『『
陰陽術でも同様であり、禁術となった。
だけど。
もしも。
もしかしたら。
「――――」
北斗はもう一度、作業台の箱を見た。
その中にあるデバイスを思う。
カマソッソミスティークが変身に用いた機械、それによく似たものを。
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