終末世界の陰陽師/スターゲイザー 〜時代遅れの特撮オタク、ニチアサを新世界に招来す〜   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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第八話 次の星は、君か? 空か?

 

「お、ぉぉぉぉおおお…………」

 

「乙女が出してはならん声だのぅ」

 

 カマソッソミスティークとの戦いから三日後。

 北斗はラボにてうめき声を上げながら、椅子の上で天井を見上げていた。

 髪はボサボサで眼鏡はズレている。

 机の上には狐姿のノハが呆れていた。

 その横にはコードでパソコンや他の機械に繋がれている、掌二つ分ほどのデバイス。

 

「難しい……めちゃくちゃ難しい……『神性科装(サイバーマイス)』の基礎理論と微妙に違うことしてるから根本的にやり直さないとだめだこりゃ……問題はそれがさらに大変ってことで……頭痛い……」

 

 三日という間、北斗はずっとラボに籠ってある研究を行っていた。

 ノハから頼まれた、ハルの変身による負担を減らす方法。

 その研究が難航し、死んだカエルのような声を上げていたのだった。

 

「今、何時……? 朝になった……?」

 

「もう昼過ぎだの。ワシが頼んでおいてなんだが、一度ちゃんと休んだ方が良いのではないか? 明日、ルーンの娘と調査に行くのであろう」

 

「…………確かに」

 

 北斗はずっとラボに籠っていたが、別にロアからのお願いを忘れたわけではない。

 そもそも倒れたハルの治療と復活に時間をかけた。

 次の日にはハルは動けるようになって元気だと宣言していたが、あれだけの大怪我だったのだ。

 大事を取ってもう二日休ませた。

 ミスティークに対して戦えるのはハルしかおらず、ロアと北斗だけで無理をすることもできない。

 ロアもそのことを理解していたので待ってくれていた。

 

「風呂でも入って、飯を食うて寝るとよい。お主のような年頃の娘が睡眠不足なのは成長に悪いぞ?」

 

「別にもう成長したいと思わないし……肩凝るし……なんか保護者みたいなことをいうね」

 

「ワシはそういうものだ。それにそれを言うなら母親ではないか?」

 

 母親の記憶が薄いのでそういう考えはなかったなと思いつつ、北斗は眼鏡を外して椅子から立ち上がる。

 ノハも付いてきた。

 ラボを出て、まず洗面所へ行ったところで着替えがないことに気づいたが、

 

「用意してあるぞ」

 

 着替え一式、綺麗に畳まれた状態で置かれていた。

 

「なんで……?」

 

「朝にハルに用意をさせておいた。掃除もついでにしておったな。昼頃には飯を食べさせると言っておいたから準備もしているだろう」

 

「……………………」

 

 なんかすごい丁重に扱われている。

 言われてみれば自分が使っていた時に比べてあちこち綺麗になっている。

 一人と一柱が居候を始めてから生活の質がずいぶん上がっている気がする。

 時間感覚が微妙に曖昧だが、昨日くらいから片手間で摘めるような軽食を差し入れもしてくれていたし。

 

「うーん」

 

 着替えを見ると下着も用意されているあたり、年頃の女子としてどうなのだろうかと思ったが、洗濯もしてくれているし疲労した頭では深く考えることが出来ない。

 

「まぁ……いいか……」

 

 服を無造作に脱ぎ捨てて洗濯物籠に放り投げる。

 浴室に入ってシャワーを浴びて、体と髪を洗っていると、

 

「ふむ、北斗」

 

「んー」

 

「お主、良い体をしておるのぅ」

 

「…………」

 

 洗い終わり、シャワーを止め、湯船にゆっくりと浸かり、

 

「あぁー……」

 

 長く息を吐いてから、

 

「……………………普通なら同性相手でもセクハラ案件なんだけど、神話存在に言われると反応に困るなぁ」

 

「カカカ、許せ。コンプライアンスが千年前から更新されておらんからのぅ」

 

「神話存在ジョークすぎる」

 

 湯船に全身を投げ出し、温もりが伝播していく心地よさを感じつつノハを見やる。

 狐の姿の彼女はいつの間にか風呂桶に水を張って、浴槽の隅において浸かっている。

 動物のペットなら湯船なりシャワーなり好まないイメージだったが、神話存在ともなると話が違うらしい。

 

「乳が大きいのはよいことだ。男を籠絡する時とかに使えるからの。尻が大きいのも良い、子を生む時安全だ」

 

「うーん、肩凝るし、足元の視界遮るから邪魔の方が大きいんだけどな」

 

「そういう心持ちにそそられる男もおろう」

 

「結構下ネタ好きなの?」

 

「ワシからすると裸の付き合いではこういう話をするのが当然でのう。当世のおなごはどんな話をするのだ?」

 

「………………」

 

 裸の付き合いなんてしたことがないから、何も言えなかった。

 それからたっぷり三十分ほど湯船を堪能し、浴室を出る。

 着替えて、濡れた髪を適当に拭きながら洗面所を出ていこうとして、

 

「これこれ、ちゃんと乾かさんか。ほれ、鏡の前に立つといい」

 

 人の姿になってドライヤーを手にしたノハに髪を乾かされる。

 十二単姿のインナーみたいな薄い着物姿の美人がドライヤーを手にしているのは奇妙な感じだが、風呂の後でぼーっとしていてので任せることにする。

 

「ふふん、ハルとはこういうことせんかったから気分が良いの」

 

「男の子相手だとねー」

 

 適当に返しながら、髪を乾かしてくるノハのことを思う。

 最初は喋る狐かと思い、その後でハルに付き添う神話存在と知ってからは必要なこと以外は喋らないと思っていた。

 あくまでもハルの保護者という立場であり、深入りするべきでもない北斗は考えていた。

 だが、この三日間は全く違った。

 北斗の研究に惜しみなく彼女の知識を用いて協力し、さらには体調や精神状態を気遣い、今ではこうして髪のケアまでしてくれている。

 結構なおしゃべりであり、先ほどみたいなふざけた話もする。

 世話焼きな姉、母、或いはお祖母ちゃんと言ったところ。

 

「よぅし、これでよかろ」

 

「ありがと、ノハさん」

 

「構わんよ。お主には世話になっているし……」

 

「うん?」

 

「いや、これは今言うものではない」

 

「何その気になるフリは」

 

「そういうものだ――――そのうちハルが言う。言わせる」

 

「こういうフリで相手指定することあるんだ!?」

 

 

 

 

 

 

「飯出来てるぞ、食べるか?」

 

「あ、うん」

 

 洗面所からリビングに行けば出迎えてくれたのはエプロン姿で洗濯物を畳んでいるハルだった。

 手にしているシャツは何か月か見ていない気がするキャラシャツ。

 

「ようし、実は昨日北斗が籠っている間に買い物に出かけたんだ。色々食材を調達したぞ」

 

「え? 体は大丈夫だったの? というかお金大丈夫だった?」

 

「リハビリ代わりさ。体を動かさないと落ち着かないし。金に関しても、こういう時のために里から持ってきた装飾品売ったら結構な金額になったから問題ない。ご飯用意するから十分くらい待っててくれ」

 

 妙にウキウキでハルが立ち上がり、歩き出す。

 北斗はテンションの高さについていけなかったが、

 

「手料理を振る舞いたいのであろ。子供らしい男の児は好まんか?」

 

 形に乗る狐の姿のノハが、愉快げに耳打ちをすてきた。

 

「え、いや……あー、まー……」

 

「カカカ」

 

 返答に困ったが、ノハは変わらず楽しそうだった。

 その後、風呂上がりで火照った体を冷ましつつ、ノハと喋って十分後。

 ハルに呼ばれてキッチンへ。

 テーブルの上には既に料理が並んでいた。

 

「サラダと玉ねぎのスープ。メインはスパゲッティ・ボロネーゼだ」

 

 鮮やかな葉物に薄い黄金色のスープ。

 ゴロゴロとした肉が入ったトマトソースのパスタ。

 ここ数年、適当な食生活を送ってきたせいか、思わず北斗の喉が鳴る。

 料理に視線が釘付けになりつつ、椅子に腰掛けつつ、ふと湧いてきた疑問を口にした。

 

「なんで最後だけイタリア語? いや、スパゲティっていったらイタリアだろうけどさ。ミートソースだよねこれ」

 

「スパゲティじゃなくてスパゲッティ、なんならパスタな。ミートソースじゃなくてラグー・アッラ・ボロネーゼな? ―――――なんてことをイタリア周辺から来た神霊がめちゃくちゃ言うんだよな。ただでさえ飯にはうるさいんだけど、パスタに関しては異様な執念を持っていてなぁ……基本のソースとアルデンテの茹で方を完璧に覚えさせるまで何か月か毎日パスタだった時期もあったりした……」

 

「アジア周辺生まれの同胞からはブーイングの日々だったのぅ。それを言うなら日の本の人も神も米に異様に執着するものであったが」

 

「うわー、そういうのは人も神も変わらないんだ……」

 

 わざわざ訂正された時はちょっとイラッとしたが、本場の神々に仕込まれて訂正された結果ということなら呆れるしかない。

 目の前の少年が神話存在に囲まれて生きていたということを改めて実感する。

 

「ま、そういうのはいいとして食べてくれよ。時間あって昨日から仕込んでおいたんだ。自信作だぜ?」

 

「おぉ……」

 

 そう言われ、改めて料理を見ると急激にお腹が減ってきた。

 口の中でよだれが湧いてくる。

 

「いただきます……!」

 

「ボナペティ……!」

 

 それはフランス語だ。

 

 

 

 

 

 

「美味しかった……」

 

「お粗末様でした」

 

「うむ、良い腕だ。どうだ北斗。どこに出しても恥ずかしくないであろう?」

 

 いつの間にか人の姿になって一緒にスパゲティを食べていたノハが隣でドヤ顔している。

 パスタを食べる時はフォークを使うのが礼儀、という理由らしい。

 気になったのは、

 

「その十二単、脱げるんだ……」

 

 人型になったと思ったら、楽そうな着流しを来ている。

 

「トマトソース食べるのにあの格好は合わんであろ。あの格好の方が見栄えが良いから人の姿を取る時はアレが基本だが」

 

「そんなもんかぁ」

 

 ラフな格好だが、随分な美人だから異様に様になっている。

 胸元がやたら開いているあたり、気になるがハルもノハも気にした様子はない。

 家族だとそんなものだろうか。

 

「ほい、コーヒーどうぞ」

 

 エプロンを外したハルは北斗の対面に座りつつ、マグカップを差し出す。

 

「ありがと、ハルくん」

 

 食後のコーヒーまで用意してくれていて至れり尽くせりだ。

 

「うーん……人間性のある生活……」

 

「コーヒー渡しておいてなんだけど、寝るんだっけ?」

 

「流石に食べた後すぐ寝るのも良くないし、ちょっと休憩してからかな」

 

「なら、休憩がてら聞きたいことあったんだが、いいか?」

 

「うん、どうしたの?」

 

「この家」

 

 彼は人差し指を立て、くるくると回した。

 

「ドア出たらゴミ捨て場だったりしただろ? それにちょっと思ってたんだが、自分で買い物行って改めて思った。街の建物と比べてもこの部屋、なんだろうな、綺麗すぎる? というか機能的すぎるというか……」

 

「あぁ、時代感違う?」

 

「そうなのか?」

 

「まぁね」

 

 ハルの疑問に頷く。

 ロアの来訪やハルの怪我、北斗の研究もあってそのあたりの話をしていなかった。

 簡単に言えば、

 

「この家自体が、『神性科装(サイバーマイス)』なんだよ」

 

「へぇ?」

 

「移動住居『座敷房』、『座敷童子』の『神性科装(サイバーマイス)』。ハルくんなら知ってるだろうけど、住み着いた家に幸福をもたらす妖怪」

 

「ふむ、『神性科装(サイバーマイス)』にしやすそうなのはわかるが、どういう理屈でこの家にしておるのだ?」

 

「えっと」

 

 神話存在に神隷の使い方を説明するのは、かなり申し訳ない気持ちもあるが、

 

「住み着いた家に幸福をってことは、『座敷童子』が住み着いている場所は幸福な家ってことになるでしょ? 理論を逆転させてるわけ。『神性科装(サイバーマイス)』自体は壁にくっつけるだけのデバイスなんだけど、扉にくっつけるとその扉の中がこういう家になるわけ」

 

「はー。簡単に言うけど凄いもんだな。陰陽術でそういうことをしようと思うとめちゃくちゃ大変だぜ? すごいもんだな、『神性科装(サイバーマイス)』」

 

「多重工程の儀式を簡略化させられるのは大いなる強みだのう。だからこそ陰陽術や魔術が廃れたわけであろ」

 

「まー、そうだね。この『座敷房』は私が『アシハラ』にいた時に作った一点ものだけど、似たような拠点を一瞬で作る『神性科装(サイバーマイス)』は結構ある。内装の時代感が違うのは『アシハラ』の様式で作った部屋だから。『ネノクニ』は1990年代のものを再利用してるけど、『アシハラ』技術が進化し続けてるからね」

 

「北斗が作ったのか! それは凄いな!」

 

「おぉう……」

 

 凄いいい笑顔で直球から褒められた。

 ハルはこういう所がある。

 頬に熱を感じ、横に顔を反らしたら、

 

「ワシが育てたんだぞ、ん?」

 

 なんかドヤ顔してるノハと目が合う。

 熱も忘れて半目を向けた。

 なんか面倒くさい神になってないだろうか。

 

「今もミスティーク対策になんか作ってるし、神話にも詳しいし、やっぱり北斗は凄い」

 

「あー……」

 

 現在、ノハと協力してハルの禁術の負荷軽減の方法を模索しているが、そのことはノハから口止めされている。

 本人が知ったらそんなことよりミスティークや家族の調査を優先したがるだろう、というのがノハの考えだった。

 正直、別に伝えてもいいとは思うが、付き合いの長い彼女が言うことなので黙っておくことにした。

 幸い、研究そのものについての知識をハルは持ち合わせていないからどうとでも誤魔化せる。

 

「まぁね? ほら、前も少し言ったけど神話工学と文化英雄学が専門だからね」

 

「しん……なんだって?」

 

「神話工学は『神性科装(サイバーマイス)』を作る技術」

 

 こちらはわかりやすいだろう。

 説明も簡単だ。

 ややこしいのは、

 

「文化英雄学ってのは大戦後に出来たもので……ノハさんの前で言うのもアレなんだけどさ」

 

「配慮のしすぎだ、北斗。知識の説明に一々我らのような敗残者を気にする必要はない」

 

「おいおいノハさん、そこが北斗の良いところの一つじゃないか?」

 

「話が進まんであろ。北斗、続けい」

 

「あ、うん。じゃあ、失礼な話をするけど、大戦で人類は神話存在を下した。元々信仰していた存在を。そうすると、ヒエラルキー的に人間の方が上に立つという見方ができるようになったわけで。その信仰が歴史上の偉人とかにすり替わったんだよ」

 

 神話や伝説の中に語られる英雄ではなく。

 実在し、史実に名を残した偉人に対する信仰。

 人類史を切り開いた開拓者、人の物語を彩った英傑。

 哲学者、芸術家、科学者、軍人、王、女王等々。

 

「簡単にいえば、そういう人たちの行いや生涯を研究して学びを得ましょうってことだね。ラボの半分の書斎はそっち関係の伝記とか学術書なわけ。こっちに関しては半分趣味みたいなところもあるけど。」

 

「人間らしいといえば人間らしいの」

 

「返す言葉もないな……」

 

 ノハの苦笑には気まずさを覚えるしかない。

 

「なるほどな。俺、そういう偉人とかは詳しくないし、後で教えてくれよ」

 

「もちろん。……でも、私、その手の話すると長くなっちゃうから、ミスティークの問題片付けてからのほうがいいかも」

 

「確かになぁ。……あー、そいや、あれだ。昨日とか休んでる間、リビングで色々動画見てたんだけどさ」

 

「うん?」

 

「なんだっけな、あの変身するドラマ? みたいなやつ見たんだよな。結構面白かった」

 

「え!? どれ!? どのやつ!? 『蒼涙の騎士クロスライザー』!? 『紅天の騎士スカイブレイカー』!? それとも『黄金の騎士キングライナー』とか!? いや、待って、当てる! 当てるから! うーん、クロスライザー? ――当たりだ! いいよね、クロライ、三騎士三部作の第一作目で、私が特撮好きになるきっかけでもあったんだよね! 流石ハルくんお目が高い! 『悲しみの十字架が、彼を離さない! 戦え! 蒼涙の騎士クロスライザー! その涙が、止まるその日まで!』 ――――いやぁ、かっこいいよ! どこまで見たのかな? まだ途中だったらこれから一緒に同時視聴する!? わかんないことがあるなら私が何でも解説するからさ!」

 

 

 

 

 

「それでね……クロスライザー、スカイブレイカー、キングライナーって……ちゃんと意味があってさぁ……最終回にそれを回収するのがお約束で……それまでは戦闘挿入曲だけのに最後だけはオープニングを流すのが良くてさぁ……」

 

「それはかっこよさそうだなぁ」

 

 寝ぼけながらも話を続ける北斗を横抱きにしつつ、ハルは彼女のラボへと足を踏み入れた。

 食事を終えてから北斗は特撮談義に熱が入って、少しだけ実際にドラマを見て数時間、睡眠不足の限界が来たのか値落ちしかけている北斗をベッドへと運んでいた。

 寝室は寝室であるのが、ラボの簡易ベッドが一番落ち着くらしい。

 ラボは相変わらず、ハルには良くわからないもので半分埋め尽くされている。

 もう半分の書斎は気になるが、明日北斗が起きてからでいいだろう。

 彼女をベッドに寝かせ、

 

「ふわぁ……んー……ハルくんは……それでいうと―――スターゲイザー、だね」

 

「うん?」

 

 寝ぼけた彼女が右手を掲げ、人差し指がある一点を指す。

 書斎の天井だ。

 そして、そこに貼られていたのは、

 

「星表、か?」

 

 たくさんの星座が描かれた一枚絵だった。

 

「トレミーの四十八星座で……人類史で最も愛された星図なんだよね……」

 

「へぇ。確かに見覚えのある星座があるけど、すたーげいざー? なんでまた」

 

「だって……陰陽師ってさぁ……星を見て、占いをするんでしょ?」

 

「確かに」

 

 彼女の言う通り、陰陽術は式神を召喚するだけではなく、元々は星を呼んで易、つまりは占いをする天文学的側面がある。というより、元々はそれが本職で、召喚士のようなことは平安時代に最盛したのだ。

 

「だから……星を見つめる者……ってわけ……ふわぁ……うん……やっぱ……プトレ、マイオス……だね……」

 

「スターゲイザー、か」

 

 口馴染みのない横文字を噛み締めていると、

 

「すぅ……すぅ……」

 

 北斗は完全に寝入ってしまっていた。

 そんな彼女に笑みをこぼしたハルは、布団を掛けて、

 

「っ……!」

 

 心臓を中心に強烈な痛みが襲いかかった。

 

「っぐ……はっ……!」

 

 全身を引き裂くような激痛と共に、胸元のシャツを握る手や頬に禍々しい文様が浮かび上がる。

 荒れる息を抑え、十数秒後には痛みが収まる。

 

「ふぅー…………」

 

 脂汗を流しながらも息を整え、北斗を確認すると彼女が起きる様子はなく穏やかな寝息を立てている。

 

「……星詠みは苦手だったんだけどな」

 

 苦笑し、

 

「確かに―――星を見ている」

 

 




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