IGLOOinC.E.75 作:124
議会を占拠するデスティニープラン推進派に、アンドリュー・バルトフェルドは顎に手をあて、満足そうに呟く。
「いやぁ…バクゥを持ち出すだなんて、連中もなかなか目の付け所があるねぇ?」
(何を言ってるんだ、この人は。)
なんの返しも無く、そんな冷たい目が飛んで来る。
これが股肱の臣であるダコスタ君であれば冗談を理解し
「言ってる場合ですか?」
と飽きれ声を返してくれるものを。
肩を竦めて、ため息を一つ
「それで? 即応部隊のザクはまだ復旧出来ないの?」
「はい、全データ消去済みで整備工廠のコンピュータも爆破されています」
「……前後不覚でカカシにもならない、か」
カカシの意味もわからなかったのだろうクーデター制圧部隊の顔に怪訝そうな顔が浮かぶ。
プラント本土防衛用に配備されていたザク、グフのデータベースを完全削除し、議会の直轄戦力として秘匿されていたバクゥで議会を占拠、堅牢な布陣に攻めあぐねていた。
シンプルに“勝とう”と思えばすぐにケリをつけられる。
正規軍を動員し、数の暴力で圧殺
現議長のラメントを確保している以上、彼の一声で手空きのZ.A.F.T.部隊を徴発できる。
──だが、それではダメだ。
議会に被害を与えるわけにはいかず、味方の兵も被害が甚大になる。
ついでにいえば、占拠した連中が死んでは殉教者になってしまう。
議会と味方を軽微な被害で、極力占拠した連中を捕まえる。
バクゥを有する相手に、人型では厳しい…
他のバクゥは遥か遠く地球に配備されている が、これ以上時間をかけるわけにはいかない。
「隊長」
情報収集に別行動を取っていた副官が神妙な面持ちで駆け寄ってきた。
「おぉ、ダコスタ君、悪い知らせかな?」
耳打ちされた情報に、バルトフェルドは瞬時に作戦を組み立てる。
「よぉし、総員突入準備。
応援部隊が届き次第、議会会議場に突入する。」
━━━━━
クーデターに参加した男は、ザフトレッドこそ与えられなかったものの、訓練校を優秀な成績で卒業し、プラント本土の守りと言う“重要な任務”を与えられ、2度の大戦をどちらも本国で過ごした。
実戦を一度も経験していないにも関わらず
「俺が戦場にいればナチュラルなど一捻りだ」
と大言壮語を吐いてナチュラルに苦戦する同胞すら見下していた。
そんな“優秀な彼”が見張りを行っていた時、コロニー内部に小型艦艇が侵入して来たのを見つけた。
議会ごと砲撃するつもりか?
いや、あのタイプはMSが2~3機積めるだけの大気圏突入ポッドに毛が生えたような往還機で貧弱な機銃しかなかった筈だ。
どこかからMSを調達したのか、だが地上の王者と名を馳せたMSであるバクゥを複数保有している我々にたった数機のMSで勝てる訳があるまい。
そう考えを巡らせているとカーゴベイが開き、“ソレ”は投下された
コロニーでは起こり得ない“地震”と紛わんばかりの地響きと共に着地したソレは
「デカい、戦車?」
往還機のカーゴベイを目一杯使った砲塔の無い“ソレ”は、本来は自走砲と言うべき物だが、知識の無い彼はそう表すしか術をもたなかった。
「舐めるな!!」
ゆっくりと、しかし確実ににじり寄る“戦車”に向けてバクゥの背部に搭載された多連装ミサイルが火を吹き、殺到する。
爆炎に飲まれ、煙の中に消えた“戦車”に「ざまぁ見ろ」と嘲笑を向ける。
と、同時に妙な音が鳴り響いた。
最初は“戦車”が投下された衝撃でコロニーが軋んだ音か、と錯覚した。
爆煙の中から“ソレ”が飛び出して来るまでは。
「……はァ?」
先程からの“デカい戦車”の、砲塔にあたる部分にMSの上半身が生えていたからだ。
理解できるのは、そこまでだった。
珍妙な見た目に、呆然と立ち尽くしていた間に、見かけ以上の俊敏さを見せた“デカい戦車”の体当たりによる、とてつもない衝撃と共に意識がブラックアウトしたからだ。
重量220t、最大速度110km/h
実に3倍以上と言う巨躯の激突による衝撃は、バクゥをいとも簡単に吹き飛ばしたのだ。
歩兵達がバクゥを取り囲み、コックピットハッチを外部から強制解放するレバーへと取り付いて行く。
一発も発砲すること無く、バクゥを制圧した事を確認すると、傍らの兵が背負った大型通信機を用いて“自走砲”に通信を繋いで話しかける。
「腕は錆び付いていないようだね」
«寝惚けていたバカヤロウを引っ叩いただけだ。何の自慢にもならんよ»
心底、つまらなそうな返答が帰ってくる。
「いやぁ、ね。奴ら、まだ戦争が続いてると思ってるみたいでねぇ
困ったものだよ、全く」
«なら、現実を教育してやらんとな。»
(━━━まだやれるさ。俺も、ヒルドルブも)
バクゥから“陸の王者”を取り戻す。
そう言わんがばかりに、デメジエール・ソンネンは心の中で愛機に語り掛けた。
試作モビルタンク「ヒルドルブ」
地上進行を目的に開発が行われ、当時行われた性能比較試験においては、コストを除けばバクゥ、ザウートを遥かに上回る性能を発揮した。
しかし、ここでコーディネーターの悪癖が出る。
当時のザフトはオール・モビルスーツ・ドクトリンとでも言うべき物を採用していた。
MSと言う、“ナチュラルに扱えない兵器”へ優越感……
ともすれば「“(戦車)ナチュラル”の真似事である」「脚による歩行をしない」と言う。
そのただ一点で、ヒルドルブは非採用の失敗兵器の烙印を押されたのだ。
ヒルドルブ編です
これだとコンパス所属じゃあなくZAFTの議会派に引っ張り出された旧式兵器ですが……
こうでもしないと出番を作れなかったので、ジャガンナート等のデスティニープラス推進派がバクゥを持ち出した設定にしてアプリリウスコロニー内で使わせました。
バクゥにはコストで負け、ザウートには「足が付いてない」と言う理由で負けました。