一人の神霊が死ぬ話
夜。
無縁塚、枯れた桜が立ち並ぶ此処で、妖怪が立ち入る事もほぼ無く、ましてや人が居る事など有り得ないこの場所で、二つの人影が月明かりに照らされていた。
「はぁっ…はぁっ…」
片方は、まるで何かに追われているかの様に走っている。
そして振り返り、
「くそっ」
もう片方の人影を見つけ、憎々しげに声を漏らす。殺せるものなら殺してしまいたいとばかりに。
しかし、自分が"アレ"を倒す、ましてや殺すなど出来やしないと分かっているから、分かってしまうから逃げているのだ。逃げる事など出来ない、と分かっているにも関わらず。
だが少なくとも、まだ殺される訳にはいかないのだ。やっと辿り着いたこの場所で、何故殺されなければならない。
そう考える人影を追い詰めるかの様に、"アレ"はいつまでも追いかけて来る。
人影はまた振り返り、
「なんなんだよっ!」
先程と変わらない距離で追い続けるもう片方の人影、少女の姿を見て声を荒らげる。
"アレ"に距離など関係の無い事だと知っている。だから今行われているのは只の道楽だ。強者が弱者を痛ぶり、限界が来るまで追い続ける狩りなのだ。
その油断に付け込み、上手く逃げ果せる事が出来ればどれだけ良かった事か。これまで逃げ続けて得たのは、そんな事が出来る訳が無い、と言う確信だけである。
そして自分が限界を迎えるまで、只無様に逃げ続けるしか無いという事も。
そんな、
彼岸花に足を取られ、転んでしまった人影。すぐさま起き上がろうとするが、その肩に少女の華奢な手が置かれる。
「もう逃げないでくれるかしら」
「くるなっ!」
「あら非道い」
逃げようと必死な人影に対して、余裕とも取れる雰囲気の少女。どちらが有利かは言うまでも無いだろう。
「何がしたいんだ!」
そんな問いかけに少女は、
「あなたを殺したいだけですわ」
物騒な答えを返す。
「何故なんだ。何故殺す」
「これから死にゆく貴方には、関係の無い話よ。それに、たとえ貴方が死なないとしても答えないわ」
少女は、冥土の土産など用意する気は無いらしい。私は死ぬ理由も知らずに死ぬのか。
「もう聞く事も無いでしょう。最期に言い残す事はあるかしら」
「死ね」
「あら非道い」
そして少女は人影の首を掴み、締め上げる。
「がっ...ぐっ...」
みしみしと骨が砕ける様な音が聞こえる。どこか自分の存在が希薄になっていく感覚がする。死ぬとはこんな感覚なのか。
そしてゴキッと完全に骨の折れる音が聞こえると同時に、人影は最初から存在しなかったかの様に消えた。
Explanation:八雲紫
種族:妖怪(スキマ妖怪)
二つ名:境界の妖怪
能力:境界を操る程度の能力
活動場所:ありとあらゆる場所
詳細:胡散臭い程度の能力を持つ、胡散臭い妖怪。こんなんでも幻想郷の賢者。彼女が居なければ、幻想郷は生まれていなかっただろう。
Q:幻想郷は全てを受け入れるのではなかったのか?
A:彼女、若しくは彼が全てでは無かったか、天子みたいな感じ。