あの時は生きている心地がしなかった
───ある魔法使いの日記から抜粋
刎ねた首から血が吹き出す。ごとりと床に落ちた首は、血の道を作りながら転がってゆく。
「え、あ、血?」
「おま、何して」
血に困惑していたわけではなさそうだ。
「言っとくけどそれ狐じゃ無いわよ。貴方の偽物」
「は? だからと言って殺すほどじゃ」
「境界を越えるのよ、その偽物は」
「じゃあ、仕方、無い、か?」
まだ困惑しているが納得してくれた様だ。境界を超える可能性がある物は、できるだけ早く無くさなければならない。巫女としての仕事の一環だが、超えた結果起きることを考えれば、否が応でも無くさないといけなくなる。
「はぁ、片付けがめんどくさいわね、あんたも手伝って頂戴」
「それは良いが、縄を解いてくれ、あと風呂も」
「分かったわ、お湯は自分で炊いて」
「あぁ、別にいらん、流せればそれで良い」
魔理沙は縄を解くと、覚束ない足取りで井戸の方へと向かう。足が痺れているのだろうか。
居間の方に目をやると畳が血に塗れている。ここまで酷いと畳を新調しなくてはならない。家具に飛び散らなかったのは幸いだが、死体を運び出す時にかかってしまっては元も子もない。魔理沙が来るまで動かすのはやめておこう。
動かした時に血がかからない様に机とかをどかしていると、
「霊夢さーん、いますかー」
また誰かが訪ねてきた。
今度は魔理沙ではなく、多分今会ったら面倒臭くなりそうな奴だ。
居ない事にしておこう。
「あれ、居ないんですかー、入りますよー」
あ、やばい隠さないと、
「霊夢さん、居ますよねってうぇあぁぁっ!」
遅かった。
勢い良く襖を開け、その光景を見て腰を抜かす少女。
白髪のボブカットに腰に刀を携え、半霊を引き連れたその少女、魂魄妖夢は、開口一番に予想通りの言葉を放った。
「ぎゃー! 人殺しー!」
「一旦落ち着きなさい、これには理由が」
「理由なんて衝動的に殺したに決まってるじゃ無いですか! しかもよりにもよって魔理沙さんを! そうですよ私も縛って殺すんですよね殺るなら一息にやってくださいよ痛くしないでくださいよ」
「だから、この魔理沙は本物じゃなくて」
「いーえ、本物の魔理沙さんです、だって血が出てるじゃ無いですか! あーもうどうせなら殺される前に一矢報いてやる、さぁかかって来なさいコテンパンにしてやる!」
面倒臭い、いつも以上に面倒臭い。人の話を聞いてくれない辺りが本当に面倒臭い。一応宥めるが、聞く耳を持たない。そもそも話が飛躍しすぎている。想像力が豊かな様だ。
刀を構え、此方を睨みつける妖夢。目が完全にキマッている。放って置いたら玉砕覚悟で突っ込んで来そうだ。
「ふへへへへへへ、楼観剣の鯖にしてやる、白楼剣も血を吸いたがってますよぉ」
そう言って刀を舐める妖夢。
やばい、かなりアレな方向に吹っ切れてしまっている。こんな壊れた奴相手に話し合いなど通じる筈が無い。力づくで
「来ないならこっちから行きますよ!「待宵
「はっ」
「ぐぇっ」
部屋の中で暴れられたら困るので、外に向かって蹴り飛ばす。面白い程綺麗に吹っ飛んでいった。ついでに襖も飛んでいったが、畳のついでに新調すれば良いだろう。
私も外に飛び出し、襖と石畳の上で倒れている妖夢に向かってお祓い棒を構える。
しかしいつまで経っても起き上がる気配が無い。やり過ぎたか?
恐る恐る覗いてみると目を回して伸びていた。静かになって丁度良かった。
神社に引き摺って念の為縛っておく。暴れられたらたまった物じゃ無い。
その時魔理沙が戻って来た。もうちょっと早く戻って来てほしかった。
「そいつも偽物なのか」
「違うわよ、死体見て騒いでたからのしただけ」
「そうか」
「あと死体運ぶの手伝ってくれない?」
「地底の猫でも呼べよ、喜んで運んでくれるだろうぜ」
「呼び方なんて知らないわよ、わざわざ地底行くのも面倒臭いし」
「呼んだかい?」
「あー呼んだわよって居たの?」
「死体の匂いがしたからね。あと人殺しって聞こえたからまた事件でも起きたもんだと」
噂をすれば何とやら、地獄の猫、火焔猫燐が顔を覗かす。黒ずくめで不吉な印象を与える。
「じゃあこの死体持ってってくれない?」
「へぇ、あんたが殺したのかい? まぁあたいにゃ関係ないさ、地上の奴には黙っておくよ」
「あんた、探偵の助手じゃなかったっけ、殺人事件なんて絶好の機会じゃないかしら」
「別に地上の奴らの仲間割れに手を出すほど、我らが探偵様は暇じゃない。それに最初から犯人も手口もわかってる事件ほどつまらない物はないさ」
そう言って中に入り、死体を担いで手押し車に乗っける。手間が省けて助かった。
「それよりこれどうやって作ったんだい。まるで本物と瓜二つじゃないか、血も出てるし」
「あぁ、それ私の偽物だぜ」
「本物が言うんだったらそうなんだろうねぇ、じゃあまた偽物が出たらおまかせを〜」
そして爆走しながら走り去って行った。階段はどうやって上り下りしているのだろうか。
邪魔な死体が片付いたので魔理沙と共に、血の付いた畳を引っ剥がして外に投げ出す。
汚れた畳を全部外に出して一息ついた時、妖夢が目を覚ます。
「んぁ、ん? 魔理沙さん? 死んだはずじゃ」
「勝手に殺すなよ、見ての通りピンピンしてるぜ」
「それより何で私縛られてるんですか?」
「縛られたい趣味でもあったんじゃない」
どうやらあのことは忘れている様だ。
縄を解いて自由にさせる。
「で、何しにきたの?」
「あ、そうですよ、実はですね」
妖夢は一旦そこで言葉を切り、周りを見渡す。
少しの間見渡し続け、確認したいことを確認できたのか再度口を開く。
「私の偽物が現れたんですよ」
「あんたがその偽物じゃないの」
「違いますよ」
「じゃあその偽物とやらは、何処にいるんだ?」
「知りませんよ、知らないからこうして喋っているんです」
「ここで待ってたら来るんじゃないかしら」
「あのですね、これは異変だと感じて貴方達に話しているんです」
「偽物が出たくらいで大袈裟ねぇ、殺せば良いじゃない」
「そうだな、さっき私の偽物もいたが霊夢が殺してたぞ。自分で殺せるだろ? そんな長い刀があるんだから」
「殺すって言いましてもその偽物がいないんですよ」
「だから待ってたら来るって言ってるじゃない」
「そんな都合のいいことなんて起きませんよ」
「誰か来た様だぞ、都合が良いかもしれん」
そう言われて鳥居の方を見ると、確かに誰かの影が見える。
足音を響かせ階段を登ってきたのは、
白髪のボブカットに腰に刀を携え、半霊を引き連れた少女、魂魄妖夢だった。
Explanation:魔法を使う程度の能力
概要:その名の通り魔法を使うことができる。
とは言ってもパチュリー・ノーレッジの様な、五大元素+αみたいな魔術では無く、魔法の森に生える変なキノコを固めたり潰したり混ぜたりした時に起きる現象の内、使えそうなものを魔法として使っている。
要は科学の様なもので彼女の努力の結晶である。
また、4話で魔力切れとか何と言っているが、ただ単にミニ八卦炉の中の材料が尽きただけである。