カラスを切り裂いた人は返り血を浴びながら此方へと振り返る。背丈は175cmくらいで褐色の肌。少なくとも日本人とは思えないが私たちに日本語で話しかけてきた
「怪我はないか?」
私と雫がこくこくと頷くと彼は近寄ってくる。
「ここは危険だ。逃げろ」
そう言って私たちの背後を指差す。
振り返ると変な船があった。腕?があって顔がついているし何より浮いている。船と呼んでいいのかは分からない。
でも、その船。多分彼の魔法は今まで見たどんな魔法より綺麗だった。
「どうやって生き残ったんだ?」
そう聞くと二人はあそこの中華料理店に隠れていたのだという。
なんでも壁が綺麗だったからだと。
「いい判断だ」
実際、店主が風水をかじっていたのかそこらの協会よりはるかに頑丈な魔除けの結界が成立している。
二人を船に乗せ、別荘へと送る。護衛はノッブ達を付けたし、いざとなれば同船しているライト達の宝具でどうにでもなるだろう。
今残ったのは謙信と天草とバットとリリスと俺。
「このまま墓地に行って
「どうする気ですか?俺はお世辞にも強いとは言えませんよ」
「同意だな。俺とてそう長い時間は持たん」
「安心しろ。ああいうタイプの巣は洗礼詠唱を受ける。俺と天草が発動できるまでの時間稼ぎができればそれでいい」
そう言うと納得したのか諦めがついたのか墓地へと歩き出す。
「まぁ、この軍神に任せてください」
「頼りになるわね」
「だろ。誇り高い俺の仲間たちだ」
「ついたぞ」
墓地へと辿り着くと、こちらに気づいた人面カラスどもが攻撃を加えてくる。
「頼んだぞ」
バットは拳銃での射撃、謙信が槍を振るい、リリスは柄が黄金で出来た剣を振るっている。
「「””私が殺す 私が生かす 私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない。””」」
墓地に展開された巣へ向けて洗礼詠唱を使用する。
「「””打ち砕かれよ。””」」
「「””敗れたもの、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え。””」」
こちらの意図に気付いたのか、人面カラスの攻撃が激しさを増す。人面だけに人並みの頭脳を有してるのか?多分並みの人より賢いだろうけど
「「””休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる。””」」
リリスが干将・莫邪を10数本投影し一斉に投擲する。
カラスは突き刺さり、あるいは体を両断されボトボトと地面に落ちていく。
「「””装うなかれ。””」」
「「””許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を。””」」
謙信は何も変わらない。いつもと同じ戦い方。ただそれだけで人面カラスたちを圧倒している。
槍のリーチを生かし刃だけでなく柄の部分でもカラスたちを叩き落としている。
「「””休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。””」」
「「””永遠の命は、死の中でこそ、与えられる。””」」
5mのカラスが表れ、謙信がそちらに向かった隙を突きカラスどもがこっちに突撃してくる。
「杖をつこうとも、俺は敵を打ち倒す」
「
バットが宝具を使用して不死となり、攻撃を受けきる。
「「””────許しはここに 受肉した私が誓う。””」」
「「””────
洗礼詠唱を告げ、カラスどもとその発生源たる巣を昇天させる。
「お疲れ様」
「その言葉はこの事態を収束させるまで取っておきましょう」
『こちら真なる契約者達。ウォーレン・ストリート・ホテルから多数の市民を車両に乗せて避難させている。応援を頼む』
『了解だ。』
「あと2人は乗れる。急げ」
避難便21号はもうすぐ発進できる
「走れるものは走ってトンネルへ。バスは島外で避難民を下ろし次第戻ってくる、列を乱すな」
この地獄の中でも数万人が生き残っている。助けられる人数に限りはあるが出来ることをーー
「…阻止攻撃!避難民に近づけるな!」
巨大なトカゲのような悪魔が10体発生し、建物を突き破りこちらに突進してくる。
メイスを振るい、その風圧で悪魔を吹き飛ばす。
「…!チャーリー、ウィリアム!」
前線にいたチャーリーとウィリアムが悪魔の体液を浴び、体が溶かされている。
他にも舌によった攻撃を受け、動けぬもの。死傷者多数。さらに発生した悪魔どもがこちらに向かってくる。さらに不運なことに、飛び散った体液が足に掠った。
「…押し切られる」
そう思った時だった。示し合わせたかのようなタイミングで矢と銃弾と槍が悪魔どもを貫いていく。
「異邦の司祭たちよ、この場は我らに任されよ。戦士たち、我らの信仰を見せる時だ!」
アラブの司祭たちがコーランの詠唱とともに悪魔どもを蹴散らし、避難経路を再構築していく。奴らは別方面の担当だったはずだが。そう思っていると褐色の男がこちらへと近づいてくる。
「大丈夫か?」
「カナンか、」
「あぁ、避難状況は?」
「今発進したのが21号だ。あと10回は動かさねばならんだろうな」
「了解。幸い外のUSNA軍にガンマイザーを配備したおかげで余った戦力をこっちに向けられてる。」
「ならば安心できるな」
「…とは言ってもほかの場所にも避難民はいるから別に大丈夫ではないんだけどね」
「…我らもまだ戦わねばならんな」
「そういうことだ」
俺たちが赤い空の下で戦い続けている間に外では日が明け、暮れていたらしい。今は0時、戦略級魔法の発射まで残り24時間。一日もあるし、一日しかないとも言える。
「…とはいえ、時間をかけたおかげで市民の避難は完了した。これでUSNAも遠慮なく戦略級魔法を撃てるってわけだ」
「それ、笑えないわよ」
「同感ね」
そうまではっきり言われると予感していたとはいえ悲しい。
「…初期突入部隊はトレードセンターへ。それ以外はいまだ蔓延る悪魔の討伐を」
外からの情報によれば、マンハッタン島全域はすでに飲み込まれ、被害は隣接するクイーンズ、ブロンクス、ニュージャージー州ハドソン郡にまで拡大しているらしい。
「もはや猶予はない。フェーズ3に移行する」
◆サーヴァント紹介
・バット
真名:バット・マスターソン
本名はウィリアム・バークレイ・マスターソン。アメリカの伝説的なガンマンである。異名のバットとは骨盤に銃弾を受け杖をついていたがそれで敵を倒したということから名付けられた。
宝具:
ランク:C 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
彼のついている杖。通常時でも近接武器として使用だが、ついていた杖で敵を倒したという逸話から真名解放後には杖が折れるまで疑似的な不死を得る。