ちなみに前話で桜井穂波が平然と生きてますがカナンたちが海上で暴れたおかげで達也へ攻撃が飛んでこず、魔法力を限界まで使うことがないため生還。ってな感じです
入学編:入学
「いよいよか」
朝、目覚めたら先ずは顔を洗う。寝癖を整え、制服に着替える。今日は一校の入学式だ。
それだけに朝の鍛錬も無し。
階段を降りつつ、制服に袖を通す。
深い緑を基調にしたジャケットは、いかにも一校らしい落ち着いた色味をしていた。
下は同系統のスラックス。中のシャツとネクタイまで整えると、学生服というより、どこか軍服めいた硬さが出る。
食堂に入るとリリスがトーストを食べていた。最近のお気に入りはクロテットクリームらしい。
コーヒーを飲んでいるフローレンスの隣に座り、俺もトーストを食べる。俺はイチゴジャムが好きだ。
トーストを食べ終えたリリスはこちらへと近寄ってくる。
「どうした?」
そう聞くとそばで一回転、ターンをした。肩や胸の花弁章は結構目立っている。意図を図りかねていると、リリスが口を開く
「どう?似合ってるでしょ」
そういうことかと納得する。
「あぁ。服に着られてるって感じもしない、似合ってるよ」
そう聞くと満足そうに席に戻っていく。
「…仕方ないだろ、お前はエーテル体なんだから」
ジト目のフローレンスにそう言うと
「それについては納得しています。ですが目移りまで許可した覚えはありません」
そう言って人形を渡してくる。フローレンスを小さくしてデフォルメしたような小さな人形、よく見ると清明の呪が施されている。
「自立型の式神?」
「清明の開発した疑似人格型の自立式神です。私の疑似人格が搭載されてますので、浮気はせぬよう」
「しないって言ってるじゃん。」
そうして食事を終えると荷物を確認し、早めに出発する。
出来れば校舎を見ておきたい。
しばらく歩いていると桜並木に差し掛かった。花びらが舞い散る中、辺りは一校生で埋め尽くされていた。
踊るように歩いているリリスを見ていると唐突に振り返ってくる。
「どう?」
「いいんじゃない」
頭の上で花びらが舞っている。魔力操作のみでやるとは随分と器用なことをするもんだと思い、見つめていると頬をつねられる。
「痛った」
痛みから肩を見ると、肩に乗ったミニフローレンスも頭の上に花びらをのせている。
「…お前も綺麗だよ」
そう言葉をかけ、頭を撫でてやると嬉しそうに体を揺らす。
「なんでブルームとウィードが」
微かに聞こえたその言葉は今はまだ無視しておく
校門をくぐったところで歩調を緩める
別に校地の広さに圧倒されたわけじゃない。ただ、この景色の新鮮さは目移りせずに見ておこうと思った。
歩いていると、前で人の流れが鈍る。見ると一組の男女が言い争っていた。
「納得できません!何故お兄様が補欠なのですか?入試の成績は、お兄様がトップだったじゃありませんか!本来ならばわたしではなく、お兄様が…!」
そう言ってるのが聞こえた。千草も聞こえたのか顔をしかめている。ただ、その顔が言葉に対してのみでないことは半年の経験からなんとなくわかった。
「…知り合い?」
「あの兄弟には3年前に沖縄で会った事がある。つってもそれだけだがな」
そう言い切るが含みを感じた。でも興味もないしそれ以上の追求は辞めておいた。
「....だいたい、あの考えだと俺がやってなきゃおかしいんだよな」
しばしの間、眺めていると言い争いも一段落したのか妹が校舎のほうへと向かっていく。
兄のほうは近くにあったベンチに座り、端末を見ている。
「丁度いいし、俺たちも座って時間つぶすか。」
そう言って千草はベンチのほうへと向かっていく。
「隣いいか?」
「あぁ」
そう言ってこちらを見た達也が眼をそらす。
「3年ぶりだな。随分としたブラコンに成長してるが何があった?」
「…何でいる。それと彼女は誰だ?新しい恋人か?」
「別に付き合っちゃいねぇよ。ただの居候だ。フローレンスとは別れてないし」
「そんな人形肩に乗せてくるぐらいだからな」
「監視用の式神だとさ。浮気する気なんてさらさらないのに」
そうして話しているとリリスが挨拶をする。
「はじめまして。私はリリス・エミヤ・ハワード。リリスでいいわ」
「司波達也だ。達也でいい」
そうして話していると声を掛けられる。
「新入生ですね?そろそろ開場の時間ですよ」
「…教えていただき、ありがとうございます」
「…どうも」
「サンクス!」
腕にCADを巻いているってことは生徒会とかの運営側の人間か。達也も気づいているのかCADに目を光らせている。一方、リリスは知ってか知らずかCADを無視している。
「いえいえ。私は当校の生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさと書いて、さえぐさと読みます。よろしくね」
「俺…いえ、自分は司波達也です」
「神無木千草です」
「リリス・エミヤ・ハワードです」
「司波達也君に、神無木千草君とリリス・エミヤ・ハワードさん…そう、貴方達が…」
「…俺たち、なんかしました?」
七草家の人間ならカナンのことを知っていてもおかしくはない。まぁ、俺=カナンにたどり着くかどうかは別として。もしくはマンハッタンの方か
「入学試験、7教科平均、100点満点中96点。特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。合格者の平均点が70点に満たないのに、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞の高得点だって、先生方が噂してたのよ」
「へ~。達也すごいじゃん」
「神無木君の方は実技が文句なしの満点。だけど筆記の方が悪くて二科になったのを先生方は悔しがってたわよ」
「それは、それは。ありがたいことで」
達也がにらんでくるがそれを躱す。実際点数操作してるから文句は言えん。
「それでハワードさんは総合成績では深雪さんに続く二位」
「千草が一科に来ると思ってたんですけど、残念です」
リリスからもにらまれる。正直悪かったとは思ってる。
「それでは時間ですので俺たちはこれで」
話を切り上げ、そのまま講堂へと向かう。