翌朝、俺は剣を振るっていた。無論、刃潰しはしているが当たれば痛い。
師匠たちとの模擬戦。そこに手加減などない。
突きを逸らし、刀と体の間に剣を差し込む。
「もらった」
そう思うが、跳び上がり躱される。
相手の獲物は物干し竿とまで言われる長刀、距離を取られるのはまずい。
着地の隙を狙い、接近するが空中から突きが放たれる。身をひねって躱すが、そのころには着地している。
息を整え、向き直るがその時、アラームが鳴る。
「ここで終わりだな」
「ですね」
シャワーで汗を洗い流し、朝の支度をして食堂に向かう。
今日の朝ご飯は和食らしい。味噌と魚の香りが食堂を包んでいる。
朝食を受け取って席に座り、食べ始める。リリスは箸を使って魚を食べている。半年で使えるようになるとは結構手先が器用なんだな
「ごちそうさま」
そう言って流しに食器を持っていくとテレビの音が耳に入る。
『…ニューヨーク州マンハッタン島で起きた大規模テロから半年。現地ではすごいスピードで復興が進んでいます』
あいつらも頑張っているんだなとつい聞き入ってしまう。そういえばあの時助けた少女は中学生くらいだったが一校に居たりするのか、などと思考を巡らせる。
「そろそろ時間か」
靴を履き、リリスとともに一校へと向かう。
廊下でリリスと別れ、1-Eの教室に入る。
適当な席に座ると隣で達也がものすごい速度でキーボードを叩いていた。
その様子をニヤニヤしながら見ていると前の席の男子と目が合う。彼も達也のほうを見ていた。
達也も彼のほうを見ると、話し始める。
「あぁ、すまん。いまどきキーボードオンリーなんて珍しいもんでな」
「慣れればこっちの方が速いんだ」
それには同意できる。俺の場合は長いこと使ってるというのも大きいのだが
「へ~。俺は西城レオンハルトだ。レオでいい」
名前から察するに海外との混血、クォーターか。この国際情勢でクォーターとは珍しい。アラブ同盟からの留学生(ということになっている)俺が言えたことではないが。
「司波達也だ。俺のことも達也でいい」
「オーケー達也。それで、そっちの褐色は?」
近くにいる俺に話を振ってきた。
「神無木千草だ。千草でいい」
「かんなぎ?日本との混血か?」
「あぁ、まぁそんなところだ」
神無木千草は永遠に使ってる偽名のため、今回も使用している。アラブ同盟なのは単純に偽装戸籍作っても許してくれるとこがそこしかなかったので結果なんかチグハグになっている。
「千草ね、オーケー。ところで、俺の得意な魔法は収束系の硬化魔法なんだが、二人はどうなんだ?」
こういうのはご法度というイメージがあったのだがそんなことないのか?得意魔法だと違ったりするのか、そもそも魔法師の事情などに大した興味はないのだが
「古式魔法全般。陰陽術も呪術もなんでも使えるぜ。こいつも式神だし」
そう言って肩に乗っているミニフローレンスを指さす。いちいち説明するのも面倒だ、ということで弱めの認識阻害をかけていたが、一旦解く。
「実技は苦手でな。魔工技師を目指してるんだ」
「頭良さそうだもんな。お前」
「司波君、魔工技師志望なの!」
そうしていると予鈴が鳴る。席に着くと1人の教職員が入ってきた。
二科は教職員がつかないのでは?と思っていると自己紹介が入る。彼女は小野遥、学校のカウンセラーらしい。
「つうかどっか見学行こうぜ。どこ行く?」
「だったら工房に行ってみねぇか?」
レオが言う。
「闘技場とかじゃないんだ」
そう聞き返すと、レオがニヤリと笑う。
「そう見えるか?」
「どう見ても機械いじってるより、暴れてる方が似合うでしょ」
エリカが即答する。
「硬化魔法は武器術とも相性がいい。だったら、自分で使うもんの構造や整備を知っとくのは別に変じゃねえだろ」
ムッとした顔をしながらレオが答える。案外進路とか適正についてしっかり考えてるんだな
その後、美月も賛同し五人で教室を出た。
工房は予想していたものよりずっとデカかった。大学であろうとそうそうないような大規模な実験施設。この規模だと工房というより工場だな。
それと同時に実感する。思ってたより面倒なところに入ったなと
そうして見入っていると、思ったよりも時間が経っていた。
中途半端な時間だ、ということで早めの昼食にすることにした。
食堂へとつながる並木道はかなり混んでいた。この時期の新入生は勝手がわからず、どうしても混むのだろう。
「今のうちならなんとかなるか」
「ならないと困る。五人で立ち食いはごめんだぞ」
レオがそう言う。それもそうだと思い千里眼で探すと、四人掛けの長椅子を発見した。
適当にそこら辺のカウンター席の椅子をかっぱらい、同じテーブルにつく。
「おまえ、結構適当だな」
「この程度なら、バレたところで大丈夫だろ」
そうして昼食が始まる。半分ほど食べたところで、レオはもう食べ終えていた。
「お兄様」
「千草」
見知った声がこの喧噪の中でもはっきりと耳に届いた。
「ご一緒してもよろしいですか?」
「一緒にいい?」
深雪とリリスの声に、空気が変わる。
「別にいいけど、座れるか?」
「…座れるなら構わない」
細身なら片側に3人いけるだろうが、達也とレオの方は流石に座れないだろ
そして、そう答えた時、深雪の背後にいた一科生の雰囲気が変わった。
「司波さん、ハワードさん。もっと広いところへ行こうよ」
そう言って1人の男子生徒が近寄ってきた。
「いえ、私はこちらで…」
「私はここがいいんだけど?」
「…司波さん、ハワードさん。
「はぁ!?」
その男子生徒の発言にエリカとレオがキレる。当然、俺もキレる。
「…お前、名前は?」
「森崎駿だ」
「森崎ね。お前さ」
そう言いかけた時、森崎が吹っ飛ぶ。は?と思うがすぐに理由が分かった。
ミニフローレンスが森崎を殴り飛ばしていた。そしてすさまじい速度で肩へと戻る。他の奴ら認識できてないだろ。
「大丈夫か?保健室行った方がいいんじゃないか?」
そう言うと森崎は食堂から去っていく。
椅子の問題は長椅子の片側に詰めて深雪が、食べ終わったレオが立ってもう片方にリリスが座って丸く収まった