こちらかぶき町特別警察真選組ファイヤー!   作:花空想保持老

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プロローグ

ちっ全く、上の連中が考えていることは訳わかんねえな。)

土方十四郎は、心の中で毒づいていた。現在進行中の隊内会議は、いつになく重苦しい空気に包まれている。それもそのはず、真選組の親代わりとも言える警察庁長官・松平片栗虎が直々に足を運んでいるからだ。

今日の議題は、新設される「特別隊長」の就任について。この役職は隊の垣根を越え、独断で隊士を指揮下に置けるという異例の権限を持つ。しかも、外部からのスカウトによって決まったという。

(そんなもんが来たら隊が乱れるだろうが。立場は俺の方が上なんだろうが、これじゃ特別隊長が部下である意味がまるでねえ…)

土方はさらに内心で不満を募らせた。特別隊長の階級は、一番隊の沖田や三番隊の斎藤終と同等の隊長クラス。副長である土方の部下には違いないが、勝手に隊を動かされては統制が取れたものではない。

「え~~~では、特別隊長の就任式を執り行いますぅぅ。特別隊長は部屋に入ってくださいいいい。」

松平の気の抜けた、しかし有無を言わせぬ発声に応じて、一人の男が部屋に足を踏み入れた。

入ってきたのはサンダル履きで、眉毛がつながったあの男だった。

それを見た瞬間、土方の喉が張り裂けんばかりに震えた。

「おぃぃぃぃぃ!!特別隊長っていうか巡査長じゃねえええかあああ!!!」

こちらかぶき町特別警察真選組ファイヤー!



第一訓 食事にはこだわりすぎないことが大事

 

 1

 

「全く…なんなんだよ。あいつは…」

 

両津が赴任して以来、土方は連日のように頭を抱えていた。隊服は着崩し、遅刻は日常茶飯事。会議中に堂々と居眠りをしたかと思えば、最近では沖田と意気投合してパトロール中にサボり出す始末だ。隊内の規律が目に見えて緩んでいるのを肌で感じていた。

だが、その実力だけは認めざるを得なかった。剣道の稽古では竹刀一本で面を叩き割るほどの怪力を誇り、沖田や斎藤終といった真選組屈指の猛者たちと互角に渡り合う。何より、犯人を追う執念は凄まじいの一言に尽きた。先日は逃走する宇宙船に素手でしがみつき、そのまま宇宙空間で逮捕劇を演じてみせたほどだ。

 

おまけに、その豪放磊落な性格は地域住民にも受け入れられ、隊員たちからも「両さん」と慕われている。特に近藤は毎晩飲みに行っているくらい仲が良い。

 

(あいつが来てから戦力は増したが、隊内が弛みつつあるな。さて、どうしたもんか…)

貴重な休日だというのに、仕事の悩みが頭を離れない。癪に障るが、放っておける問題でもなかった。

 

雑踏を歩き、いつもの定食屋の暖簾をくぐった。

 

「いらっしゃい土方さん、ごめんねー今日カウンターでいいかしらー。」

 

店のおばちゃんに案内されるまま席へ向かうと、そこには見覚えのある、だらしない白髪頭が鎮座していた。

 

「おい、何でてめえがここにいるんだよこのマヨネーズ中毒が。てめえのいぬのえさスペシャル見てると吐きそうになるんだよ。とっとと帰れ。」

 

先に陣取っていた坂田銀時が、土方の顔を見るなり毒を吐いた。

 

「てめえこそ何でいるんだよ。この糖分フェチが。おめえのねこのえさスペシャルを見てると食欲なくなるんだよ。とっとと失せろ。」

 

負けじと土方が言い返した、その時。

 

「おいおい。喧嘩はよせ。飯がまずくなる。」

 

銀時の隣から、聞き慣れた野太い声が割り込んできた。

 

「あ、すまねえ。騒がしかったな。」

 

土方が謝りながら隣を覗き込むと、そこには一本眉毛にサンダル履きという、非番でも全く変わらぬ姿の男が座っていた。

 

「おぃぃぃぃぃぃぃ!お前かよーーーーーーー!」

 

土方のつっこみは店内中に響き渡った。

 

 

「うるさいぞ副長。迷惑だろ。なあ銀さん」

 

「全くその通りだな。両さん」

 

「何でお前ら意気投合してるんだよ。」

 

目の前の二人のあまりの親密ぶりに、土方は思わずつっこんだ。

 

「ついさっきパチンコ屋で会ってな。意気投合したんだ。な、銀さん。」

 

「そうだぜ。こいつはすでに高レベルなマダオ(まるでダメなおっさん)だ。なあ両さん。」

 

肩を組み、満面の笑みで答える両津と銀時。それを見た土方の肩が、がっくりと落ちた。厄介者同士が手を組むという、最悪のシナリオだった。土方はげんなりしながら席に着く。休日なのにすでに疲れ切っていた。

 

「はい。銀さんに土方さん、おまたせ。宇治銀時丼に、土方スペシャルね。」

 

そうこうするうちに、おばちゃんができた料理を運んできた。丼ぶり目いっぱい敷き詰めた、あんこのせご飯と丼ぶりから溢れんばかりに大量に盛り上がった、とぐろを巻いたマヨネーズかけご飯。持ってこられた本人達は至福の表情を浮かべたが、周囲の客は露骨に顔を引きつらせていた。

 

「お前ら、なんて不健康そうなもん食ってやがる。」

 

あの悪食の両津ですら、目の前の異様な光景にはドン引きを隠せない。

 

「なんだと、この宇治銀時丼はな。甘いものを米に合わせることにより、スイーツと定食の垣根を超えることができるスーパーフードなんだよ。そこのいぬのえさスペシャルと一緒にするんじゃねえよ。」

 

「てめえのねこのえさといっしょにするんじゃねえよ。この土方スペシャルはな、マヨネーズと米の親和性を極限まで高めたマヨラーのソウルフードなんだよ。食えば間違いなくはまるんだよ。」

 

「どっちも食いたいと思わんな。」

 

両津はドン引きの顔をしたまま、至極当然のことを言った。

 

「はい、両さん。おまたせ、冷蔵庫スペシャルよ。」

 

そんなやり取りをしている内に、おばちゃんが両津の料理を持ってきた。その料理は、麺に野菜、肉にカエル、蛇に、ジャム、蜂の子にかき氷シロップとなんでも入った、この世の終わりみたいな料理だった。

 

「おぃぃぃぃぃ!てめえの料理はぶたのえさかーーーー!!!!」

 

二人のつっこみは店の外まで響いた。

 

 

「おい、これは何?ぶたのえさ?罰ゲーム?罰ゲームなの?これ?」

 

銀時が困惑した顔でつっこみまくると、両津は不敵に笑って答えた。

 

「馬鹿を言うな、屯所の冷蔵庫にあった食品を、全部ここにもってきて料理を作ってもらったんだよ。わしは食えればいいからな。味も悪くないし。」

 

「蜂の子とカエルなんて冷蔵庫になかっただろ。そんなもん入れてたら、俺が問答無用で切腹させるわ」

 

両津の無茶苦茶な言い分に、土方はつっこんだ。

 

(くそ、何なんのこいつら、せっかく宇治銀時丼食いに来たっていうのに。いぬのえさとぶたのえさがいたんじゃ食う気なくなるわ)

(くそ、何なんだよこいつら、せっかく土方スペシャル食いに来たっていうのに。ねこのえさとぶたのえさに挟まれたんじゃ気分が悪いわ)

(くそ、何なんだよこいつら、せっかく飯食いに来たのに変なもん食いやがって。丼もの食えなくなるだろうが)

 

三者とも同じようなことを思っていたが、定食屋の客は三人の料理を見て吐きそうになっていた。

三人はぎゃーぎゃーとけんかしながら、それぞれの料理を完食して店を出た。

 

 

(まったく何なんだよ。あいつら。)

 

土方は苛立ちを隠せないまま、当てもなく街を彷徨っていた。せっかくの休日を台無しにされた気分だった。

 

(なら喫茶店にでも行くか)

 

今度こそ、静かで有意義な時間を過ごそうと決めた土方は、近くの喫茶店へと向かった。期待を込めたその足取りは、先ほどより少しだけ軽い。

 

「ごめんなさい。今混んでまして、相席でもよろしいですか?」

 

「構いません。よろしくお願いします。」

 

相席であっても、入店できただけで良しとしよう。土方は落ち着ける時間を求めて、店員の案内に従い席へと向かった。

 

「では、こちらの席でお願いします。」

 

「ああ、どうも。」

 

店員に軽く会釈をして席に目を向けた瞬間、土方の時は止まった。

そこには、死んだ魚のような目をした銀髪の侍と、ガニ股でサンダルを履いた警察官が、まるで待ち構えていたかのように座っていた。

 

「おぃぃぃぃぃ!!何でお前らがいるんだよーーー!!!」

 

土方の「有意義な休日」は、早くも絶望の淵に立たされた。

 

 

「何でお前らがいるんだよ。」

 

隠しきれない苛立ちをぶつける土方に対し、両津は悪びれる様子もなく答えた。

 

「いやだな副長、わしはさっき競馬して大勝ちしてな。それで金が入ったんで喫茶店に来たんだ。」

 

「あんたこの短時間で競馬に行ったのかよ。」

 

土方は両津の回答に突っ込んだ。

 

「そしたら、銀さんが席に居てな。」

 

「そーだよ。ジャンプ立ち読みして、気が向いたから喫茶店に行ったのに…」

 

銀時が不服そうな声色で言った。両津はともかく、犬猿の仲である土方が来たのが不服なのだろう。

 

(まったく、何でまたこいつといっしょなんだよ。くそ、こいつと気が合うみてえじゃねえか)

 

土方は心の中で毒づいた。彼もまた、銀時がいるのが気に食わないのだろう。その時、

 

「お待たせしました。ショートケーキワンホールでーす。」

 

銀時の注文が届いた。ショートケーキのワンホールがどーんと来た。

 

「お、おい。これ一人で食べる気か?」

 

両津が驚いた様子で尋ねると

 

「おう、そうだよ。今日は月に一度の甘いものが食える日だからな。」

 

「食いすぎだろ。糖尿病になるぞ!」

 

銀時の回答に両津は、当然のつっこみをした。すると、店員がやってきて何か重たそうなものを持ってきた。

 

「お待たせしました。アイリッシュコーヒー12Lです。」

 

店員の発言に、土方は飲んでいたお冷を吹き出した。

 

「じゅ…12L!?」

 

土方は信じられないと言わんばかりの表情で聞いた。

 

「あ、あんた、俺がトイレに行っている間にそんなえぐいもん頼んでたのか!?」

 

銀時も口中を生クリームまみれにして叫んだ。

 

「ああ、ちょっと酒が飲みたくてな。」

 

「ちょっとって量じゃねえだろ!」

 

土方は呆れながらつっこんだ。

 

「おまたせしました。ホットコーヒーになります。」

 

店員が土方の注文を持ってきた。

 

「あ、どうも。」

 

コーヒーを受け取った土方は、おもむろに懐をまさぐった。そして取り出したのは、一本のマヨネーズ。彼は一切の迷いなく、コーヒーに並々と注いだ。

 

「あ、あんたコーヒーにもマヨネーズ入れんのか!?」

今度は両津が驚いた声を出した。

 

「ああ、マヨネーズはなんにでも合うからな。」

 

「いくらなんでもやり過ぎだぞ。上官命令でもこの趣味には付き合いきれん。」

両津は呆れた声で突っ込んだ。

 

三人はここでもお互いのメニューにドン引きしながらも、それぞれの注文を平らげた。

 

 

三人は喫茶店をなんだかんだ揃って出た。その時、三人の携帯がそろって鳴った。

 

「「「もしもし」」」

三人はそろって出た。

 

「あ、もしもし、銀さん?僕の家に今すぐ来てください。あのゴリラが僕の家に勝手に来てるんです。何とかしてください。

 銀ちゃん何とかしてよ。姉御がかわいそうアルよ。」

 

「はあ、あのゴリラが?ったくしゃーねーなー。」

 

銀時の電話は、新八と神楽からの電話だった。どうやら、新八の姉のお妙にストーカーしている真選組の局長、近藤勲(通称ゴリラ)が家に忍び込んでいるようだった。

 

「あ、もしもし、土方さんっすか?俺です。沖田です。近藤さんが姉御の家にまた忍び込んだんですがねぇ、この前、姉御がボソッと。次ストーキングしたらあのゴリラの生命を絶とうかしらって真顔で言ってたんでさあ。土方さん止めに行ったらいかがです?」

 

「ふざけんな。お前が行けよ、もしもし?総悟?もしもし、切ってんじゃねーぞ総悟コラーー!!」

土方の相手は沖田だった。どうやら新八・神楽と同じ要件だったらしいが、言うなり携帯を切ってしまったらしい。

 

「あ、もしもし、両さん?オレオレ、長谷川だけどさあ、さっきの競馬はありがとね。それでさ、恒道館っていう剣術道場に住んでる俺の友達の姉ちゃんがさあ。ゴリラぶっ殺すって言って鬼の表情で薙刀振り回しながら暴れてんだけどさあ、両さん警察だろ?助けてやってよ。」

 

「ああ、長谷川さんか、分かったすぐに行く。」

両津の相手は、競馬で知り合った長谷川だった。奇しくも内容は銀時と土方といっしょだった。

 

「「「ちっしゃあねえなあ」」」

三人はまた声がそろった。

 

「ところで、恒道館ってどこだ?」

両津が聞くと、土方と銀時はそろって両津の方を向いて言った。

 

「「俺といっしょに来い」」

 

 

「ここを後は突き当りだ。」

土方と銀時は、両津に道案内をしながら恒道館に向かっていた。その道中で、一連の騒動に関係する人間関係を、軽く両津に説明していた。

 

「ほ~ん。仕方がねえ奴だなあ近藤は。」

説明を聞いて両津はぼやいた。

 

「なんか、こう他にやり方があるんじゃねえか?付き合いたいなら。」

両津が二人に呟くと

 

「その通りだ。こんなやり方で女が振り向くわけねえ。」

 

「命の危険があるほど嫌われてんじゃねーか。」

二人は両津の意見に同意した。珍しく三人の意見が一致した。その時、

 

「ぎゃあああああ!!!助けてえ!!!」

恒道館から悲鳴が聞こえた。

 

「急ぐぞ!!!」

三人は急いで現場に向かった。

 

 

「なんだあ!?こりゃあ」

恒道館に着いた三人は、目の前の光景に啞然とした。

 

恒道館の庭には大掛かりなアスレチックが広がっていた。ただし、アスレチックのエリアの中には槍が降っているエリアがあったり、全てのアスレチックの下にマグマ溜まりがあったり、極めて幅が狭い平均台の上に、たくさんのバカでかい斧が振り子のように振れているエリアがあったりなど、全てのエリアに殺意が充満していた。近藤は鉄棒のようなエリアでぶらさがったまま立ち往生していた。肩や背中にはところどころヤリが刺さっていた。

 

「おぃぃぃぃ!!!なんなんだこの殺す気満々のアスレチックは!!マ●オでもルイ●ジでも即死するぞ。」

 

「つうか近藤さん何やってんだ!?なんか槍刺さりまくってんだけど大丈夫なの!?普通死ぬよね!?あれ死ぬよね!?」

 

「あら、銀さん、土方さん。」

アスレチックの奥の縁側から声が聞こえた。声の主はお妙だった。

「お妙!?何、この公開処刑みたいなアスレチックは!?何で池とかじゃなくてマグマなの!?つーかマグマなんてどっから持ってきたの!?」

銀時は縁側にいたお妙に、矢継早に突っ込んだ。

 

「近藤さんがね、私と結婚したいっていうからね。私が作ったアスレチックをクリアした人が好きっていったら、近藤さんがあっという間にチャレンジしてくださったのよ。」

お妙が笑顔を崩さずに言った。その右隣で弟の新八が、怯えた顔で姉を見ていた。一方、左隣では神楽が何も考えていない顔でスイカをほおばっていた。

 

「な、なんなんだあの冷酷な女は」

両津は冷や汗をかきながら銀時に聞いた。

 

「隣にいるメガネかけられ機の姉ちゃんだよ。キャバ嬢やってるドSゴリラだ。」

銀時がそう言った瞬間、薙刀が飛んできて銀時に刺さった。銀時は血を吹き出して倒れた。

 

「いやだわ銀さん、初対面の人にそんな紹介するなんて。」

お妙は笑顔を崩さず、薙刀をスローインしたフォームのまま言った。

 

「いや、お前はそういうところがゴリラだろ。」

銀時は薙刀を抜きながら突っ込んだ。そして立ち上がった。

 

「お前、よく生きてるな。」

両津は驚嘆の声で突っ込んだ。

 

「俺よりもあっちのゴリラのほうがやべえだろ。」

銀時は近藤の方を指さしながら言った。二人が指さした方を見ると、近藤の手は鉄棒から外れかけていた。落ちるとマグマに一直線だ。

 

「近藤さん、大丈夫か!?」

 

「近藤、大丈夫か!?」

 

土方と両津は心配そうな声色で近藤に言った。

 

「手を出すな。トシ、両さん。」

近藤は鉄棒にぶらさがったまま叫んだ。

 

「これは、俺の愛の魔城攻略なんだ!これをクリアすることによりお妙さんを完全制覇できるんだ!!」

 

「いや、あんたこのままだと人生リタイヤだぞ。」

近藤の叫びに、土方は冷静に突っ込んだ。

 

その時、近藤の手がずるっと滑った。

 

「あ…」

近藤の体はマグマに一直線に落ちていった。

 

 

「近藤さん!!」

土方が叫んだ。すると土方の横から、何かが近藤に向かって飛び出してくるのが見えた。

 

「おりゃああああああ!!!近藤!!!!」

両津が近藤に向かって飛び出していた。そして、落ちていた近藤に向かって飛び蹴りをした。

 

「ゴフッ」

近藤の体は、両津の飛び蹴りによってマグマのない陸地に着地した。しかし、近藤は助かったものの今度は両津がマグマに落ち始めた。

 

「あ、しまった!わしのこと考えてなかった!!」

その時、両津の体にロープが巻き付いた。

 

「両津~~~~~!!!この、バカモ~~~ン!!!」

土方と銀時が叫びながら、ロープを引っ張った。どうやら両津にロープを巻き付けたのは彼らだったようだ。

 

「あ、銀さん、ふ、ふくちょうーーー!!」

両津の体は、二人の手によって陸地に運ばれた。両津も無事に陸地に着地した。

 

「あ、ありがとな!!」

両津は二人に礼を言うと

 

「ったく始末書だぞ。」

軽口をたたかれた。

 

「その前に近藤は逮捕だろ。」

両津も冗談で応じた。

 

10

 

「ごめんなさいね、銀さん、土方さん、両津さん。」

一連の騒動を、お妙は詫びた。頭を下げたものの笑顔は崩さないままだった。

 

「いや、まあ今回は近藤も悪いからな。」

 

「まったく、手のかかる上司がいるとたまったもんじゃねーよ。」

 

両津と土方の二人は軽口をたたいた。

 

「それでね、お詫びに手料理作ったんだけど、食べていってね。」

 

「おう!そりゃありがてーな!!」

 

「りょ、料理!?」

 

「い、いや俺は腹は減ってねーんだ!」

 

お妙の申し出に両津は前向きな反応を示したが、銀時、土方の二人は後ずさった。

 

「ん?なんだお前ら、いただいていこうぜ。」

両津は後ずさった二人の方を向いて言った。

 

「そうですよ。女に恥をかかせるんじゃありません。」

お妙は後ずさった二人の首根っこを掴んだまま笑顔を絶やさずに言った。掴まれた二人は抵抗むなしく引き戻された。

 

「是非食べていってくださいな。私の得意料理、卵焼き」

 

「た、卵焼き!?」

妙が持ってきたお重に、土方、銀時、新八、神楽の四人はたじろいだ。

 

「おう、そりゃありがとな!じゃ、いただき…」

お重の蓋を開けた両津の手が止まった。そこには両津の想像した卵焼きではなく、真っ黒な闇のような物質が敷き詰められていた。

 

「た、卵焼きか!?これ…」

 

「さあさ、食べてくださいな。両津さん。銀さん、土方さんも。」

お妙はたじろいだ両津と、銀時、土方の口に暗黒の卵焼きを入れた。

 

「な…これは…」

両津、土方、銀時の三人はぶっ倒れた。

 

 

三人が目を覚ましたのは翌日の朝だった。

 

「世の中にあんな食事があるとは…」

両津が青ざめた顔でつぶやくと

 

「なんか、俺たちの飯なんかどうでもよくなるぜ。」

 

「そうだな。ところで、ここどこだ?」

三人が会話をしているとすーっと和室の扉が開いた。

 

「さあさ、三人とも、目が覚めましたか。朝ごはんですよ。」

お妙が笑顔で朝ごはんを運んできた。

 

「あ、朝ごはん!?」

三人はその言葉に後ずさった。

 

「もちろん、卵焼きですよー。」

お盆にはあの暗黒物質が乗っていた。

 

「またこうなるのかよーーー!!」

両津の叫び声が恒道館に響いた。

 

第一訓 食事にはこだわりすぎないことが大事 完

 

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