1
凄まじい衝撃とともにバスが突っ込み、愚螺丹生党の本拠地は大爆発を起こした。もうもうと土砂が舞い、視界を遮る。
「んんん!」
土方は、降り注ぐ瓦礫や黒煙から子供たちを庇うように身を屈め、必死に耐えていた。細めた目の先で、爆発の余波が収まるのをじっと伺う。
やがて煙が薄れ、土砂が地面に落ちつく。土方が目を開けると、そこには無惨に半壊したアジトの残骸が広がっていた。
「こりゃあすげえ威力だ。」
土方が思わず漏らした、その時だった。
崩れかけた建物の中から、ひび割れたサングラスを指で押し上げ、爆風でチリチリに縮れ上がったアフロヘアーの男が這い出してきた。
「くそ~~~者ども、出てこい!返り討ちにしろ!!」
檻醐闘哉が怒りに任せて吠える。
「はっ檻醐様!」
するとどうだろう。半壊した建物や瓦礫の隙間から、愚螺丹生党の浪士たちが次々と這い出してきたのだ。驚くべきことに、彼らもまた檻醐と同様、全員の髪の毛が爆発の影響でチリチリに焼き切れている。
「何てことだ…さっきの爆発があったのにあんなに戦える人が…」
土方の背後に隠れていた風間君が、顔を青くして呟いた。
「ボ…ギャグマンガのお約束、大爆発があっても髪の毛がチリチリになるだけでみんな無事。」
ボーちゃんが、言ってはいけないようなことを淡々と口にする。
「そんなこと言ってる場合か早く逃げるぞてめえら!」
土方が一喝したが、時すでに遅し。あっという間に彼らは、頭を黒焦げにした男たちの包囲網に沈んでいた。
土方、銀時、両津、そしてカスカベ防衛隊の面々は、互いに背中を合わせ、全方位から迫る浪士たちを睨み据える。
「へっへっへ。多勢に無勢、勝負ありだな。」
勝ち誇った浪士の一人が、チリチリの頭を揺らしながら下卑た笑いを浮かべた。
「いい気になるんじゃねえぞ攘夷浪士ども!」
土方は抜刀せんばかりの鋭い眼光で言い返す。
「そうだよ、陰〇みてえなチリチリの頭しやがって、てめえら自分の頭見てからかっこつけろこの野郎。」
銀時もまた、死んだ魚のような目に侮蔑の色を浮かべて吐き捨てた。その傍らでは、カスカベ防衛隊の面々が、子供とは思えぬキリッとした表情で大人たちと対峙していた。
2
張り詰めた沈黙の中、膠着状態が続いた。だが、その静寂を破ったのは土方と銀時だった。
「「どりゃあああ!」」
二人の刃が空を裂き、包囲の一角を鮮やかに薙ぎ払う。
「こっちも行くぞ!」
両津も咆哮とともに跳躍し、重戦車のような飛び蹴りで浪士たちをまとめて吹き飛ばした。
「オラオラこっちもいるぜ!」
そこへ、背後から轟音が響く。白バイを駆る本田が猛スピードで突撃し、逃げ惑う浪士たちを次々と跳ね飛ばしていった。
「クソこいつら何なんだ。」
四人の圧倒的な武力と迫力に、男たちの士気が目に見えて崩れ始める。しかし、先ほどひろしの靴下で気絶していた佐藤が、ふらつきながらもカスカベ防衛隊の前に立ちはだかった。
「ガキ共捕まえて人質にしろ!てめえら覚悟しろ!」
佐藤が手を伸ばした瞬間――。
「ボ!」
ボーちゃんの鼻から、驚異的な勢いで鼻水が発射され、佐藤の眼球を直撃した!
「ぐわっ!」
視界を奪われ佐藤が怯んだ瞬間、ネネちゃんが鋭く号令をかける。
「行くわよ!マサオ君!」
「う…うん!」
二人は電光石火の早業で佐藤の背後に回り込むと、その膝裏を全力で踏み抜いた。
「おうっ!」
見事な膝カックンが決まり、佐藤の体が膝から崩れ落ちる。
「今だ!」
逃さず風間君が踏み込み、佐藤のズボンのベルトを素早く解き、ズボンを一気に膝下まで引きずり下ろした。
「このガキ何しやがる、うわっ!」
反撃しようと手を伸ばした佐藤だったが、足に絡まったズボンに足を取られ、無様に地面へ転倒する。
「今度はオラだ!」
仕上げとばかりに、しんのすけが跳んだ。地に伏した佐藤の臀部めがけ、全体重を乗せた渾身のカンチョウを叩き込む。
「おっおっお~」
佐藤は悶絶し、お尻を痙攣させ、地面から起き上がることは無かった。
「大したもんだ。」
流れるような連携プレーを目の当たりにした銀時は、感心したようにニヤリと笑った。
3
土方、銀時、両津、本田、そしてカスカベ防衛隊。彼らの獅子奮迅の働きにより、浪士たちはほぼ全滅した。しかし、一人だけ高笑いを上げる男がいた。
「くくく。中々やるな貴様ら!だがこれまでだ!」
檻醐闘哉は、部下の惨状を意に介さず不敵に笑う。その背後には、夥しい数の車の集団が控えていた。泥にまみれ、あるいは水浸しになった車もちらほら見える
「貴様らを追いかけていた部下たちが戻ってきたんだ!人数はさっきの3倍だ。武器も車もある。貴様らだけでこいつらに勝てるかな!?」
檻醐の叫びとともに、エンジン音が咆哮し、車群が一斉に土方たちへ突っ込んできた。窓からは身を乗り出し、武器を振り回す浪士たちの姿が見える。
「ふっ。笑わせんな、援軍がいんのはお前らだけじゃねえんだよ。」
土方が不敵に口角を上げた。
「この星のおまわり舐めんなテロリストども。」
その言葉を合図にするかのように、後方からサイレンの音が鳴り響いた。和風のパトカー、お馴染みの白黒パトカー、白バイ、そして重厚な機動隊のバスが、地平線を埋め尽くすように押し寄せてくる。
「真選組!突撃!」
「葛飾署!続け!」
真選組局長・近藤勲と、葛飾署署長・屯田五目須。両陣営のトップによる号令が下された。パトカーが体当たりをかまし、隊士たちが刀を抜いて飛び出す。警察組織の総力を挙げた大攻勢が始まった。
4
「ふん!!」
「柔道三段のワシをなめるな!」
戦場では沖田が涼しい顔で敵を斬り伏せ、大原部長が豪快な背負い投げで浪士を宙に舞わせる。
圧倒的な物量、そして近藤、大原、中川といった手練れたちの参戦により、戦局は一気に決した。愚螺丹生党の浪士たちは、またたく間に取り押さえられていく。
「お~すごいゾ。」
しんのすけはその光景を眺め、無邪気に手を叩いてはしゃいでいた。だが、背後から音もなく忍び寄る不穏な影には、まだ気づいていない。
「わ~すごいすごい!」
歓声を上げるしんのすけの体が、突如として宙に浮いた。何者かの腕が、彼の小さな体をひょいと抱え上げたのだ。
「来い!クソガキ!」
「おわ~~~」
乱戦のどさくさに紛れ、しんのすけが連れ去られたことに、その場にいた誰もが気づくことはなかった。
5
「ぐっ!」
愚螺丹生党の首領・檻醐闘哉は、額に玉のような汗を浮かべていた。容易く制圧できると踏んでいたはずが、予想を遥かに上回る警察の戦力により、自らの軍団は壊滅状態。残るは自分一人となってしまった。
(どうすれば…)
焦燥が檻醐を支配した、その時である。
「お前ら動くな!このガキの命がどうなってもいいのか!」
いつの間にか、地を這っていたはずの佐藤が檻醐の隣に立っていた。その左腕にはしんのすけを羽交い締めにし、右手の銃口をしんのすけの側頭部に突きつけている。
「しんのすけ!」
両津が絶叫した。
「クソッ!どうすれば…」
土方も奥歯を噛み締め、手が出せない状況に焦りを隠せない。
「はっはっは!貴様ら、万事休すってやつか!?貴様ら。」
人質という最強のカードを手にした檻醐は、先ほどまでの冷や汗を拭い、再び傲慢な態度を取り戻した。
「その通りだ!わっはっは!」
佐藤も勝ち誇ったように同調する。だが、檻醐はふと、佐藤の様子がおかしいことに気づいた。
「ところで、お前なんでもじもじしてるんだ?それに…何か臭くね?」
「いや、気のせいですよ。檻醐様。」
佐藤は顔を強張らせ、微妙に下半身を揺らしている。
「気のせいってお前…もしかして漏らしてね?う〇…」
「さあ檻醐様!!気にせずにこの窮地を突破しましょう!匂いとか気にせずに!」
「お、おう…」
佐藤のただならぬ気迫に押され、檻醐はそれ以上追及するのをやめた。
「このままではまずい。どうすれば…」
屯田署長が冷や汗を流しながら苦悶する。
「クソ、このままだとしんのすけに、カンチョウされてアレ漏らしたやつに逃げられちまう。」
銀時は深刻な表情のまま、佐藤のプライドを粉々に砕くような事実を口にした。
「打つ手なしか!?」
両津が絶望の声を上げた、その瞬間だった。
「フハハハハハ!」
空を突き抜けるような笑い声が周囲にこだました。
「こ、この声はまさか…」
「これって…」
その声に聞き覚えのある葛飾署の面々は、一様に顔面を蒼白にさせた。
6
声の主は、綺麗なポーズで空から華麗に舞い降りた。
「股間のもっこり伊達じゃない。陸に事件が起きた時、海パン一つで全て解決!特殊刑事課三羽烏のリーダー、海パン刑事ただいま参上!!」
そこに立っていたのは、隆々たる筋肉、黒い海パン一丁、なぜかネクタイだけを締め、素肌の太ももに拳銃のホルスターを巻いた、歩く公然わいせつ物のような男だった。
「や、やはり海パン刑事でしたね…」
中川が絶望的な表情で後ずさりする。
「くそ~何であいつなんだよ…」
両津も天を仰いだ。
「何?あいつ、何なの?」
あまりの異様さに、銀時が呆然と呟く。
「海パン一丁の変態刑事だ。何で職を失っていないか未だに不明だ。」
両津の解説も、もはや説明になっていない。
「な…なんだ!お前は!」
檻醐たちが激しく動揺する中、海パン刑事は意外にも落ち着いたハンサムな声で語りかけた。
「私はこの通り、裸の丸腰状態だ。だから、落ち着いて話を聞いてほしい。」
「何言ってんだお前!こっちに来るな!」
佐藤が悲鳴に近い声を上げる。
「そうか、両津こっちに来い。」
「えっ…まさか…」
手招きされた両津は、この後の展開を察して顔を歪めながらも、重い足取りで歩み寄った。
「両津、今からやる私の恰好と同じ格好をしろ。」
海パン刑事は至極真面目な顔で、自分と同じ予備のネクタイを両津に差し出した。
「…嫌な予感が…」
両津の予感は、常に的中する。
「さて、君たちも落ち着いてくれ。この通りだ。」
海パン刑事は檻醐たちへ視線を戻すと、おもむろに太もものホルスターを外し、地面へ捨てた。そして――。
潔く、海パンを脱ぎ捨てた。
7
「さて、この通り私は正真正銘、裸の丸腰状態だ。」
首にネクタイのみを残し、股間にモザイクを宿した海パン刑事は、ゆったりとした足取りで檻醐たちへ歩み寄る。
「来、来るなああ!」
その圧倒的な不審者ぶりに恐怖を抱いた檻醐と佐藤は、無我夢中で発砲した。
「むう、両津早くしろ!」
「わ…分かったよ。」
両津もついに腹をくくった。衣服を脱ぎ捨て、全裸にネクタイという呪われた正装を完了させる。
「よし、さあこれで大丈夫だ。私たちは丸腰だ。」
「いや全然何も解決してねえよ。全裸が二人になっただけだろ。」
土方の極めて真っ当なツッコミが響く。だが、隣でその光景を凝視していた近藤勲が、真剣な眼差しで呟いた。
「いや、あながち間違いではないのかもしれん。」
「近藤さん、あんた…」
「トシ、腹を割って話すという言葉があるが、全てをさらけ出すことで凶悪な攘夷浪士にすら信頼されるのかもしれん。」
「いや、全てをさらけ出し過ぎだろ。」
「いや、信頼されるどころか発砲されてますよ。」
土方と沖田が冷ややかにつっこむ。
「俺はあの姿勢・精神こそ見習うべきかもしれん。」
それにも関わらず、近藤の目には求道者のような輝きが宿っていた。彼は言うが早いか、流れるような動作で隊服を脱ぎ散らかして全裸になると、慣れた手つきでネクタイを締め、海パン刑事の列に加わった。
「おいいいいいい!あんたもやりたいだけじゃねえかああ!!」
土方の魂の叫びは、虚しく空に消えた。
8
「海パン刑事どの!」
「むう、君は?」
「真選組局長、近藤勲です!貴殿の精神に感化されました!ぜひ、私もお仲間に加えていただきたい!」
「ううむ、素晴らしい!こんな男がいたとは!この国も捨てたもんじゃないな。」
裸の男たちが、夕日を背に固い握手を交わす。その股間には、等しくモザイクが輝いていた。
「何ですかこの状況…」
中川の呟きは、もはや乾いた笑いに似ていた。
「さ、行くぞ両津、近藤殿」
「はっ!」
「いや…あのなあ…」
凛々しく敬礼する近藤。一方で、両津だけは現世の地獄を味わうような表情で引きつっている。
「さあ、犯人よ。」
堂々と進撃を開始する海パン刑事。右後方に近藤、左後方に嫌がる両津。三人のモザイク兵団がジリジリと距離を詰める。
「な、なんなんだ。こいつら」
後ずさる檻醐たちの背中に冷たい汗が流れる。だが、その時
「なら、オラも!!」
「え?」
足元から響いた子供の声に檻醐たちが視線を落とすと、そこには捕まえていたはずのしんのすけが立っていた。しかも、いつの間にか全裸になり、彼もまた股間に立派なモザイクをあしらっている。
「な、お前!?」
佐藤が慌てて自分の左腕を確認するが、そこにはしんのすけの脱ぎ捨てた赤い服と黄色いズボンが虚しくぶら下がっているだけだった。
「いつの間に!」
「おいいいい!何でてめえまで脱いでんだああ!全裸に何の意味があるんだ!」
土方がもはや様式美のようなツッコミを入れれば、
「っていうかそれ出来るならさっさと逃げろよ。」
沖田も冷ややかな目で冷静な正論を吐く。
「ぐっ…何だ貴様ら…」
犯人グループは、もはや銃を向けることすら忘れ、後ずさるしかない。
「いやだからなんでお前らはビビってんだ!」
「!今だ!」
檻醐たちが土方のツッコみに気を取られた瞬間、海パン刑事が爆発的な加速で踏み込んだ。
「ゴ~ルデ~ン…」
空高く跳躍し、空中で華麗に一回転。
「クラ~~ッシュ!!」
大股を思い切り開き、その「ゴールデン」な部分を檻醐の顔面に真正面から叩きつけ、そのまま押し倒した。
「ぐわあああ!」
檻醐は凄まじい衝撃(と精神的ダメージ)により、泡を吹いて仰向けに沈んだ。
「檻醐様!」
驚愕する佐藤。だが、彼に構う暇はない。
「今だ!」
次に動いたのは近藤勲だ。彼は海パン刑事と全く同じ軌道で跳んだ。
「ゴ~ルデ~ン…」
一回転!
「クラ~~ッシュ!!」
同じく大股を開いた股間が、佐藤の顔面を完璧に捉える。
「おぶっ!!」
佐藤もまた、檻醐と並んで地面に倒れ伏し、静かに意識を失った。
「うむ!見事!」
海パン刑事は、納得するかのように深く頷いた。
9
「全員連行しろ!」
屯田署長の命令一下、警察官たちが雪崩れ込み、愚螺丹生党の浪士たちを次々と連行していく。すべてが解決したかに見えたその時、
「クソッどけどけ!」
檻醐が執念で意識を取り戻し、拘束を振り切って逃走を図った。
「お前どけ!」
だが、その逃走経路を塞ぐように立ちはだかる影があった。両津だ。
「そうはいくか!!」
両津の豪腕が檻醐の顔面を捉え、よろめかせた。すかさず背後へ回り込み、その強靭な胴体をがっしりと抱え上げる。
「どりゃあああああ!!!」
渾身の力を込めた高速バックドロップが炸裂した。
「ぐわ!」
檻醐は頭から叩きつけられ、今度こそ完全に沈黙した。
「先輩!!」
「両さん!」
真選組や葛飾署の仲間たちが駆け寄る。だが、彼らが目にしたのは、勝利の余韻ではなく、バックドロップを終えた体勢のまま固まった全裸の両津による、あまりにも無防備で過激な「開帳」シーンだった。
「ぎゃあああ!!」
「おえええええ!!」
戦場に、勝利の凱歌ではなく、この世の終わりを告げるような悲鳴が響き渡った。
10
「ようやく片付いたな。」
大原部長が、安堵と疲労の混じったため息を漏らす。
「全く…今日は散々な日でしたよ。」
「おお、両津。」
すでに服を着直した両津が、ふてぶてしく大原部長の隣に腰を下ろした。
「にしても今日は始末書何枚かけばいいんですかねえ。」
部長の背後から、沖田が毒を含んだ笑顔で囁く。
「スピード違反に危険運転…数えただけでも頭がいてえ。」
土方は新しい煙草に火をつけ、紫煙を吐き出しながらぼやいた。
「まあ、何とかなるだろう。うまくとっつぁんが処理してくれるさ。」
そこへ、同じく服を着た近藤が晴れやかな笑顔で加わった。
「せんぱ~い、僕たちも無罪放免にならないですかね?」
バイクから降り、本来の弱気な性格に戻った本田が、おずおずと尋ねる。
「葛飾署員も全員穏便に済むようわしからも言っておこう。」
屯田署長が、威厳を取り繕うように胸を張った。
「じゃあ何にも問題ないですね。」
中川が爽やかな笑みを浮かべ、一同に和やかな空気が流れる。
「そうだな。」
「ワハハハ。」
絆を深めた警察組織の交流は、笑い声とともに幕を閉じようとしていた。
「あ、あんたの免停も無かったことにするから安心したまえ。」
署長が少し離れた場所に立つ銀時に声をかける。
「そうかい、あんがとさん。」
銀時は振り返ることもなく、けだるげに手を振って応えた。
「でめたしでめたしですな。わっはっはっは!」
しんのすけがアクション仮面のポーズを決め、高らかに笑う。しかし、
「あんたは違うわよ…」
背後から、地を這うような低い声が響いた。
「え…」
しんのすけが恐る恐る振り返ると、そこには憤怒の形相で般若と化したみさえが立っていた。
「か…母ちゃん!」
「おまわりさんから連絡きたのよ…しんのすけ、覚悟はできてる?」
「い、いや…ぎゃあああああ。」
しんのすけの悲鳴がこだまする。
「オラオラオラ!車を勝手に運転なんて事故したらどうするつもりじゃコラ!」
「ぎゃああ!母ちゃんごめんなさい!!」
逃げ惑うしんのすけを捕まえ、容赦のない「ぐりぐり攻撃」を見舞うみさえ。いつもの、野原家の日常風景がそこにあった。
「ま、親に叱ってもらうのが一番いいか。」
土方は二本目の煙草を燻らせ、その光景を眺める。
長くて騒がしい一日は、こうしてようやく終わりを告げた。
第五訓 全裸になることは誠心誠意を尽くすことなり 完