超月(かぐや)姫!   作:ロールクライ

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盈月の先に・上

 

 

ありえないモノを見た。

 

月光の下で、美しく輝く白い華を。

 

 

夜は嫌いだった。

 

赤い線がよく見えるから。

 

くらい、長い時間を過ごすのが嫌だった。

 

夢を見ないのに、地獄のように苦しむ悪夢を見た。

 

 

 

 

「痛ッ……!」

 

ひどく激しい頭痛が襲う。

 

ここは、ドコだろう。

深く沈みこんだ意識が目を覚ます。

 

それでも、意識にはまだ靄がかかっている。

 

こういうのは経験があった。

 

たしか、────はじめて屋敷に戻った時も、──こんな感じだったっけ。

 

何故だか、記憶がひどく曖昧だ。

 

……ん?

 

「ここ、ドコだ!?」

 

思わず声を張り上げる。

あまりの勢いで張り上げたせいか、喉はヒリヒリと悲鳴を上げている。

 

しかし、そんなことを意識することもなく、目を回らせるくらいにあたり一帯を観察する。

 

本当に、本当に、意味がわからなかった。

 

少なくとも、建物の看板や標識からここが日本であることは理解できる。

だけど、こんな建物は見たことがない。

こんな知らない場所へ、歩いてきた記憶はない。

 

水槽に迷い込んだ金魚みたいに、なれない土地を歩いている。

 

「あらら。こんなところで止まっちゃって。また貧血ですかー?」

 

ふと、聞き覚えのある声が耳に届いた。

……なんだか、嬉しいような嬉しくないようなそんな親友の声だ。

 

「なんだよ、有彦……」

 

声をかけると、目の前の男は露骨に眉をひそめた。

 

「いや、なんだよ、じゃなくてさ。お前のほうがどうしたんだよ。顔色、想像以上にやばいぞ」

 

そうではなくて、

遠野志貴という男は有彦の恰好に驚いている。

 

有彦の制服は着崩してこそいるものの、総耶高校のものではなかった。

 

「…お前、その制服」

「いつものうちの制服だろ。何言ってんだ?」

「いや、違うだろ。総耶のじゃない」

 

「……は?あのさ、遠野。寝ぼけるにしても、もっとこうなんかあるだろ。第一、総耶って、なんだよ。どこかの地名か?」

 

「────、はぁ?」

 

自然と口に出していた。

唖然とする俺をおいて、有彦はそれがさも当然である、と云わんばかりに神妙な顔をしている。

 

 

「ああ……、ちょっと、な。寝不足でさ。頭回ってないみたいだ」

「あー……なんだよ、マジで大丈夫か?」

「ああ。悪い、少し外の空気吸ってくる」

 

 

そう言って、有彦の横をすり抜ける。

 

有彦からは止められる気配がないどころか、

 

「何があったか知らないけどよ。サボるのも手だぞ」

 

なんて言って賛同している。

おそらくは総耶高校のときと同様、遅刻・欠席の常習犯なのだろう。

 

「あのな、お前もそろそろ欠席日数が危ないんじゃないか」

「そりゃまだ大丈夫ってことで!じゃあな、遠野。体調悪いなら休めよー」

 

と言って走り去ってしまった。

あいつ。ほんとに大丈夫なんだろうか?

 

…って、なんであいつの欠席日数がわかるんだ?

 

いやまあ、性格は総耶の頃の有彦と変わりがなさそうというのも大きいが、先ほどの自身の発言には妙に確信があったのだ。

 

何か手がかりになるものはないか、と手元を見る。

あるのは学生鞄に入った学生証と────

 

「これは、ナイフ、か?」

 

七夜と銘が打たれた折り畳みのナイフだった。

 

待て。

 

「待て待て待て!なんで俺、こんなモノを…!?そもそも、なんで折り畳みって……ッ!」

 

頭痛がはしる。

鋭くより鋭利にナイフで脳髄を掻き回したような感覚が迸る。

 

「ッ……!」

 

思わず、その場でしゃがみ込む。

手にしたナイフを取り落としそうになって、慌てて握り直す。

 

冷たいナイフが、やけに手に馴染む。

 

「あ、頭がッ……」

 

痛い。

頭が割れるように、脳天から二つに分けて無理矢理くっつけているみたいだ。

 

吐き気を催す。

胃の中が逆流する。

 

貧血のときと似ていて、それでいて、また別の何か。

 

「──……あぁ゛…がっ」

 

知っている。

 

このナイフを、この苦しみを、遠野志貴は知っている。

 

魔法使いを名乗る恩人も。

よく似た眼をもった吸血鬼も。

 

嘘のようで、怪物のようで。

愛した、あの白い女のことも。

 

すべてが曖昧で、壊れそうなモノだけど、知っている。

 

でも。

 

それでも、確かめたくて。

逃げるように眼鏡を外す。

 

その瞬間、視界が揺らいだ。

 

壁にも地面にも、通りすぎていく人間にだってその線は現れる。

 

あの赤い、死の線だ。

 

「──────」

 

…でも、それはわかっていたことだ。

 

遠野志貴は一度死んで故障した。

それは、遠野志貴が遠野志貴である限り変わらない事実。

 

ここがどこかわからなくとも、変わりがない原則であり、真実だ。

 

だから、驚くことよりも先に気持ちに整理をつけて。

頭の痛みを堪えながら眼鏡をかける。

 

その時、ポケットのなかで何かが震えた。

 

「携帯、電話…」

 

見なれた、俺が知っているよりもさらに小型化した携帯端末。

そこには、────

 

『2030年』、と文字が見えた。

 

 

 

 




力尽きてしもうた…。誰かー、続き書いておくれー!
というわけで見切り発車ですので完結するかもわからない。続きもいつでるかわからない代物ですけどよろしくお願いします。
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