合コン狂騒曲   作:突貫工事の下働きマン

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三日間の突貫執筆で作成した小説となります。

エミュ力が低い場面もあるかもしれませんが、ご容赦をお願い致します……


第一話:過激派ファンであれば節度を守るべき

 ──―それは、霞ヶ丘男子高校の屋上から始まった。

 

「よし、お前ら集合! 今から合コン会議を始める」

 

 昼休み、五人の男子生徒だけが居座る屋上に大きく響く。他の生徒達は、食堂か教室で飯を食べている所だろう。

 

「なぁ、気持ちは分かるけど声を抑えろよ高田」

「これが抑えられるかよ!合コンだぞ遠山!」

 

 いの一番に声を上げた高田 東は、興奮気味に鼻をフンスと鳴らす。そのせいでボサボサ頭の前髪が息で揺れている。

 

「だってあの『Poppin'Party』通称『ポピパ』との合コンだぞ!これが興奮しない訳ねぇよな有栖川!!」

「おうよ!あの有咲と直で会えるんだぞ! 俺なんて三日前から寝れてねぇぞ!」

 

 有栖川 来須は筋骨隆々な身体を滾らせて無駄にバルクアップした。元々のスカーフェイスに三日間の徹夜による隈も相まって、よりヤバい奴に見えてしょうがない。

 

「ふっ、そんなに緊張するとは情けないな。もっと僕のように堂々としていれば良い物を」

「そう言ってるけど、お前の卵焼き震えてるぞ。こんにゃく並みにブルブル揺れてんだけど」

「なっ! 遠山君! そのような事がある訳! あぁ卵焼きが千切れたぁ!」

 

 千切れて地面に落ちた卵焼きに、馬本 幸一がこの世に絶望したように項垂れる。眼鏡の奥の瞳からは、完全にハイライトが行方不明になっていた。

 

「そうだよみんな。そんな焦る事ないじゃんか」

「丘村ぁ!なんでお前はそんなに冷静なんだよ!嬉しくねぇのか!」

「えっ?だって僕、たえちゃんとは結婚(予定)だし」

「あっ……お前はそういう奴だったな……」

 

 丘村 優里はその整った顔立ちで、清々しいほどまでの笑顔を見せた。高田は諦めたように空を眺める。そう言えば、コイツは推しと結婚(妄想)しているヤバい奴だったと今更思い出した。

 

「てか作戦会議するんだろ。ほら全員集まれー」

 

 この中で唯一常識人の遠山 裕が、高田に代わって全員を寄せ集める。こういう事に何時も慣れているが故に、非常に手慣れた対応だった。

 

「そうだな! 作戦会議も無しで合コンに挑もうなど、言わば○川 ○郎を海外に放り出すようなモンだ……最終的にゲイバーでマッパにされるぞ!」

「○川 ○郎を引き合いに出すなよ。つか例えが古すぎるだろ」

「兎に角、作戦会議を実行するぞ!先ずは敵の情報から整理する!」

「お前に取って合コンは何なの?戦争?」

 

 遠山のツッコミを無視しつつ、高田はスマホからPoppin'Partyの○ンスタグラムを開く。そして、投稿一覧の中から、全員の集合写真を選び出して、五人の輪の中央に置いた。

 

「それじゃあ、せぇーので目当ての子を指差すぞ!せぇ──の!!」

 

 高田の号令で、五人全員が集合写真の上に指を差す。

 

 高田は、満面の笑みをカメラに送る戸山 香澄に。

 有栖川は、目を逸らして頬を赤くする市ヶ谷 有咲に。

 馬本は、恥ずかしそうに照れながら顔を向ける牛込 りみに。

 遠山は、ドラムスティックで×を作る山吹 沙綾に。

 丘村は、ギターを掻き鳴らすポーズを取っている花園 たえに。

 

「……最初から分かってたけど、全員見事にバラバラだな」

「じゃあ何でやらせたんだ?最初から分かり切っていた事だろうに」

「こういうのノリでやるじゃん?ほら、トイレとかで『しょうみ誰狙いなのぉ~?』『あのクールぶってる眼鏡は無いかなぁ?』『分かるぅwww』とか、ターゲットを確認する訳じゃん」

「貴様、後半は僕の事を言っているな? 良かろう、喧嘩なら買うぞ」

「落ち付け馬本。テメェがクソ童貞眼鏡なのは変わらないんだからよ」

「だ、だ、誰が童貞クソ地味陰キャ眼鏡だ有栖川君‼僕はクールでスタイリッシュな男子だぞ‼」

「言動からしてもうスタイリッシュじゃないぞ」

「そうそう、もっと僕みたいに落ち着かないとフラれちゃうよ?」

「君は別の意味で落ち着いているだけだろ異常者め!」

「?」

 

 閑話休題。

 

 ついつい熱く議論する羽目になり、全員が息切れを起こしている中、最初に遠山が口を開いた。

 

「なぁ、そもそもどうして、こんなポピパとの合コンを始める事になったんだ?先ずはそこから整理しないか」

「と、遠山の言う通りだぜ……なんか訳分からなくなっちまった」

「ぼ、僕も賛成だ……このままでは何の議論だか分からなくなってしまう」

「僕も~、というか最初から覚えてないし」

 

 四人の視線が一斉に元凶の高田へと向けられる。

 

「え、えぇっと確か……」

 

 そして、高田の頭の中で。数日前の出来事が鮮明に浮かび上がった。


 高田達は同じクラスメイトでありながら、五人組のバンドを組んでいた。

 

 バンド名は『Rockin’ Live』。『Poppin'Party』と対になるようにと思いを込めたのが由来だった。

 

 更にそれだけじゃない。メンバーの楽器構成も推しの担当と合わせており、『Poppin‘Party』のカバーソングだけを演奏する、正に異色中の異色バンドであった。

 

「いやぁ!今日は最高だったな!まさかポピパの前座バンドとして、お呼ばれするなんて光栄だよな!」

「そうだな、遂に僕達のバンド活動が彼女達に届くとは……涙で前が見えない‼」

「いや馬本、それ汗で眼鏡曇ってるだけだから。ハンカチ貸すから拭けよ」

「俺!さっき有咲とすれ違ったぜ! やべぇよ! スッゲェ良い匂いしたぞ! アレが有咲の生の香か!!」

「有栖川、落ち着きなよー。匂い如きで興奮しちゃってさ。僕なんて一目見ただけで絶頂したよ?」

 

 ライブスタジオ『Ring』から用意された控室で、五人は興奮気味に会話を繰り広げていた。

 

 なにせ最推し『Poppin'Party』主催のワンマンライブに、前座バンドとして呼ばれたのだから無理もない。それに加えて、大舞台でポピパのカバーソングをやり切った後だからか、余計に熱が入っている。

 

 その時、ガチャリと熱気あふれる控室に、廊下の冷えた空気が入って来た。

 

「こんにちはー! 今日はありがとうね! 『Rockin‘ Live』の皆‼」

 

 時が止まった、というか五人全員の動きが一斉に止まった。

 

 入って来たのは、一目見ただけで胸の奥がキラキラドキドキしてしまう、まるで星のような少女──―『Poppin‘ Party』のリーダー、戸山 香澄だった。

 

「い、今すぐ消臭スプレーを振りまくんだ!この男くさい匂いを消し去るぞ!」

「大変だぜ馬本ぉ! 高田が推しに会った衝撃で死にかけてる! 息してねぇぞ!」

「そんな奴は放っておけ有栖川! とにかく女神様をお迎えする為に有りっ丈の消臭剤を! バルサンを部屋中に焚くんだぁ!」

 

「いや、アタシらゴキブリかよ‼」

 

 控室に入って来たのは一人では無かった。廊下の陰から一人、少し気の強そうな金髪ツインテールの少女──―市ヶ谷 有咲もまた、顔を出した。

 

「ゴフッ!!」

「大変だ!有栖川までやられた!メディィク! メディィィィィク!!」

「推しに会っただけで衛生兵呼ぶなよ」

 

 泡を口から吹いて倒れた二人を放って、遠山が香澄に頭を下げる。

 

「すまない、ウチのメンバーは頭が可笑しいんだ。放っておいてくれ」

「えぇー、面白い人達だと思うけどなぁ?」

「香澄、アレを見て面白いと思うなんて、大分おかしいからな」

「あ、あの香澄ちゃん……私も挨拶しても良いかな?」

「私もー、挨拶したいかな」

 

 有咲のツッコミの合間を縫って、二人の少女がまた控室へと足を踏み入れた。

 

「こ、こんにちは……牛込 りみって言います」

 

 一人は緩いウェーブの掛かった髪に、どこかウサギのような小動物的可愛らしさを兼ね備えた少女──―牛込 りみ。

 

「初めまして、花園たえって言います。宜しくね?」

 

 もう一人は艶やかなロングヘアを揺らす、まさに清楚系の定番とも呼ぶべき風貌をした少女──―花園 たえ。

 

「ブフーラ‼」

「ひえっ!う、ウチなにかしたかな⁉め、眼鏡の人が急に倒れて……」

「大丈夫、発作だから気にしないで。俺は遠山 裕。それでコッチのイケメンが」

「初めまして、たえさん。僕は貴方の結婚相手です」

「うん、覚えなくて良い。頭おかしいから」

「あははっ!いきなり結婚相手って」

 

 たえ本人は冗談として受け取っているようだが、丘村の目はギンギンにガン決まっていた。

 

「そう言えば、山吹 沙綾は居ないのか?俺、ファンだから会いたいんだけどな」

「さーやなら手土産にパン持ってくるって! あっ、来た。さーやー‼」

 

 香澄が廊下の奥に手を振ると、遅れてやって来たのは、栗色の髪をポニーテールで括った、面倒見の良さそうで優し気な少女──―山吹 沙綾。

 

「ごめんね香澄。あっ、初めまして! 『Poppin’ Party』のドラム担当の山吹 沙綾って言います。今日はありがとうございました!これお礼のウチの店のパンです、みんなで食べてください!」

「いや、コチラこそ呼んでくれてありがとうな。つかファンなんだけど、握手だけさせてもらえないか?」

「えっ、良いですよ?ファンと握手とか嬉しいなぁ」

 

 お土産の袋に包まれた菓子パン達を受け取り、遠山が手を差し出す。そして沙綾がその手を……。

 

「何抜け駆けしようとしてんだ遠山ぁ!羨ましいぞこん畜生めぇ!!」

「高田の言う通りだ!テメェだけに良い思いはさせねぇぞ‼」

「そうやっていつも澄ました顔をして虎視眈々と狙って! 流石遠山君! 汚いぞ!」

 

 だが、推しに会った衝撃で死にかけていた三人が、まるでゾンビのように遠山に群がった。さながら捕食されるシーンそのものだった。

 

「ちょ!別に澄ましてねぇし!普通にファンとして握手をだな!」

「うるせぇ後方彼氏面男!そういう奴が大体アイドルと出来ちゃった婚しちゃうんだよ!この性欲モンスターめ‼」

「何の話してんだお前は!」

「全くだよね。遠山、汚いね」

「丘村にだけは言われたくねぇ! この世で一番に!」

 

 遠山を中心に五人が揉みくちゃにされる中、『あぁ‼』と、一際大きな香澄の驚いたような声が響いた。

 

「もしかして、いつもライブ見に来てくれる人達⁉最前列で何時も見てるよね‼」

 

 その瞬間、男達五人の動きが止まった。

 

「確かに……良く、最前列で見る顔だな」

「あ、有咲ちゃんもそう思う?実は私も……」

「確かに―、何時も最前列で私の事見てくれてるお客さんだー」

「そうだね。私も良く覚えてるよ。いつもありがとうね」

 

 推しに認知されているとは、五人とは思いもしなかった。故に誰一人として、どう応えたら良いのか分からなかった。

 

 だからなのだろうか──高田の口から、こんな言葉が出たのは。

 

「合コン、しませんか?」

 




実際、目の前に推しが居たら、私はキモオタの反応しか出来なくなると思う(確信)
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