合コン狂騒曲   作:突貫工事の下働きマン

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第二話:取り合えず人と会うなら最低限の身だしなみを

「―――で、その後に『面白そう! 合コンとか初めてでドキドキする! やろうよ有咲!』って、香澄ちゃんが言って。その後なし崩し的にポピパメンバーが了承して、合コンが組まれたと」

「そうだったな! いやぁ、あの時は高田をヤろうかと思ったぜ‼」

「あの言葉はナイスだったな。もし断られていたら、社会的に終わらせようかと思っていた所だ」

「うん、僕も失敗してたら高田を殺して自分も死のうかと考えてたよ」

「えっ? もしかして俺って相当ピンチだった?」

 

そこまで話をして、経緯の整理が付くと、高田は何気に自分が死の縁に立たされていた事に気が付いた。とは言え、そのお陰で合コンに有り付けたのを思えば寧ろ功績だろうか。

 

「とにかく、俺のお陰で合コンをセッティングしたんだから感謝しろお前ら‼」

「「「ははぁ!」」」

「いや、大分無理やりこじつけた感じだったけどな」

 

三人が高田の前に土下座する様を見ながら、遠山は野菜ジュースに刺したストローを啜る。

 

「そんで、合コン対策どうすんだよ。何か良いアイデアでもあるのか?」

「任せろ遠山!今日の為に妹の○ララタイムズを読破して来た!取り合えず女の子の気持ちになれば良いんだろ?」

「○ララタイムズの全読者に謝れ」

 

全○ララファンに殺されそうな話題はさておき、遠山はストローから口を離す。

 

「先ずは清潔感が大事だろ。まぁ制服だから汚い恰好とか無いだろうけど、とにかく身だしなみをキチンする事」

「おぉ、初めてマトモなアドバイスが出たな!」

「寧ろ今まで出なかった事が驚きだけどね」

「なぁなぁ遠山ぁ。もっと合コンテクニックを教えてくれよぉ」

 

丘村の言葉は華麗に無視しつつ、今度は高田が遠山に縋りついた。

 

「それじゃあ、大事な事を言うぞ」

「「「「ゴクリ」」」」

 

四人の唾を飲む音が重なる。そして遠山の口から出た言葉は。

 

「前の時のように、推しに会った時に変な行動しない事。コレ絶対だぞ」

「「「「?」」」」

「なんで全員が『俺は違うけど?』みたいな顔が出来るんだ……」

 

最早処置のしようが無いほどに、四人は手遅れだった。

 

その時、屋上から学校全体に響く五限目の予鈴が鳴り響いた。

 

「あぁもう! 俺先に教室戻ってるからな! とにかく清潔感! 清潔感だけ注意しろよな!」

 

一足先に遠山が屋上の扉から出ていく。後に残されたのは、過激ファンだけになってしまった。

 

「なぁ、遠山の奴。清潔感大事にしろって言ってたけど……」

「フッ、僕がそんな事に注意してないとでも?既に用意してあるさ」

「馬本、テメェもか。俺も仕込んであるぜ……!」

「どうやらみんな同じ考えみたいだね? 僕もだよ」

「よし、俺らで遠山の奴を驚かせてやろうぜ……きっとアイツ、腰抜かすだろうぜ……」

 

屋上に四人の不気味な笑いの合唱が始まる。

 

そんな事も知らず、階段を降りていた遠山は、何故か背筋に冷たい物を覚えた。


「何でアイツら来ないんだ……同じクラスなのに」

 

放課後、独りで校門前に陣取る遠山は、チラリと玄関の方を振り向いた。

 

今日の放課後に、校門前で待ち合わせだというのに、何故か他の四人は『準備があるから』と、遠山一人だけ追い出されてしまった。故にこうして、独り待ちぼうけを喰らっている訳だった。

 

「一体何の準備してくるつもりなんだ……ロクな気配がしない」

 

そうして暫くの間、ジッと玄関口に方を見ていると。

 

奴らが、遂に現れた。

 

玄関口から『○ルマゲドン』のテーマソングでも流れそうなくらい、雄大な足取りで出て来たのは。

 

「今の俺達なら香澄ちゃん達と戦える……!(衣装・グッズフル装備)」

「あぁ高田の言う通りだ……パワーが溢れて来るぜ‼(有咲命と縫われた特攻服)」

「ふん、有栖川の言う通りだ。この格好なら牛込さんのハートもゲットできる(スーツ姿)」

「そうだね。僕もたえさんに相応しい男になれた気がするよ(ウサギ柄のダサニット)」

 

 

「よしお前ら!この一張羅で合コンへ行くぞ‼」

「「「おう‼」」」

「待たんかいお前ら」

 

四人の奇行に慣れた遠山も驚く他なかった。想定外の斜め上を更新していた。

 

「どうしてそんな恰好してるんだ?一人ずつ順番に答えろ」

「香澄ちゃんに俺の推し愛を伝える為」

「有咲に命賭けてる覚悟を示す為だ‼」

「牛込さんとの合コン……つまり、婚約前夜と言う事だろう?」

「たえさんってウサギ好きだって聞いたから。受けるかなって」

「よし、物の見事に全員終わってるな」

 

再度四人が頭の中お花畑どころか麻薬畑なのを確認し、遠山は重い溜息を吐いた。

 

「とにかく着替えてこい。そんな恰好で出たらドン引かれるぞ」

「そ、そんな何がいけないんだよ遠山! 愛か? 推しへの愛が足りなかったのか⁉」

「足りないのは愛じゃなくて頭だよ」

「お、俺は脱がねぇぞ!これは俺の魂の特攻服だ!この服には有咲への覚悟が詰まってんだ‼」

「その通りだ! 僕のスーツ姿も牛込さんに一生の愛を誓う為の正装であって」

「二人ともドンだけ合コンに人生賭けてんだよ!重すぎて相手の方が潰れるわ!」

「僕にはツッコミはないの?」

「分かってんなら最初から着て来るんじゃないよ。そのクソダサウサギ……」

 

そうして四人と一人が押問答を校門前で繰り広げている最中、遠山の背後の通り道から、男子校には決してない女の子の呼ぶ声が聞こえた。

 

「おーい! 高田君達ぃー! みんなで来たよー‼」

 

その瞬間、遠山は終わったと素直に観念した。


結果として見れば、高田達の正装はーーー意外にもPoppin'Partyの面々に受けていた。

 

「その服すっごいね! 私柄の法被とか初めて見たかも!」

「そ、そうだろ? これ自作で作ってさ……」

「そうなの⁉ すっごぉい! 私不器用だからそういうの出来ないくて、今度教えてよ‼」

 

キラキラとお星さまが宿りそうな純粋な瞳に、高田はグッと頬の内側を噛んで持ち堪えた。

 

まさか自作の推しグッズを推しから直接褒められるとは夢にも思わなかった。今、頭に隕石が落ちて来ても悔いなく死ねるだろう。

 

サッと自分を見上げる香澄から目を逸らし、他のメンバーも確認する。

 

「何だよその特攻服……恥ずかしいんだけど」

「俺は恥ずかしくねぇぜ‼ 寧ろ世界中の人間に見せびらかしたいぐらいだ‼」

「止めろ馬鹿! というかサッサと脱げ‼」

 

「あのぉ……そのスーツは」

「こ、こ、これはその! 合コンと聞いたからには正装にと‼」

「そ、そうなんだぁ……ウチ、合コンの事知らないから分からないけど、そうなんだね……」

「あ、安心してくれたまえ! 合コンマスターである僕が色々と教えてあげよう‼」

 

「へぇー、ウサギさん柄のニット可愛い―。何処で買ったのぉ?」

「G○だよ。今度同じのプレゼントしてあげるからね」

「えっ、良いの?やったぁ!」

 

「あ、あのぉ、遠山君……大丈夫」

「山吹さん……今はちょっと放っといてくれないか」

「うん……なんか、大変そうだね」

 

頭を抱えている人間が若干一名いるが、概ね良い雰囲気になっているように見える。やはり高田達の作戦は間違っていなかったようだ。

 

「そう言えばさ」

 

ふと、声を掛けられて高田の意識が香澄へと再び戻る。

 

「どうして『Rockin'Live』結成したの? 私知りたい‼」

 

その時、高田は初めて推しの期待に応えられないと思った。それどころか。

 

「あ、えっとその……まぁ、ポピパ好きが偶々集まって、バンドしようぜって感じで出来たんだよ」

 

嘘まで吐いてしまった。

 

「そうなんだぁ! えへへ! 私達のお陰でバンドが出来たなんて嬉しいなぁ」

 

香澄が純粋に嬉しそうな顔で笑う。だが、それを見て思う事は推しに嘘を吐いた思い罪悪感だけだった。

 

だって本当はーーーPoppin'Partyなんて、元々誰も興味なんてなかったのだから。

 

「あっ、そろそろファミレス見えて来たよ‼」

 

そんな心境も香澄は露知らず、無邪気に通りに見えるファミレスを指差す。

 

それに対して、高田はニッコリと笑いかけて応える事しか出来なかった。

 




合コンどころか女子の前に来ていく服も分からねぇよ……というか、女子と遊びに行く機会がない。
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