合コン狂騒曲   作:突貫工事の下働きマン

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第四話:『カップル限定』とか名の付く奴は大体デカい

「ねぇ、高田君。一つ聞いて良い?」

「どうしたの沙綾ちゃん」

「どうして五人とも明太子スパゲッティを頼んでるの?」

 

 そう言って、男五人の前に並んだ明太子スパゲッティを沙綾はちょっと引き気味に見ていた。

 

「なぁ、俺は普通に明太子スパゲッティが好きだから頼んでるんだけど、なんでお前らもなの?有栖川とか、何時もファミレス言ったらハンバーグ頼んでんじゃん」

「何を言ってるんだ遠山?俺は何時もファミレス言ったら明太子スパゲッティしか食わねぇんだよ‼」

「そうだ遠山君‼ ハンバーグなどと言う下等な食物を僕達が食べる訳ないだろう‼ 僕らは何時でもお洒落な明太子スパゲッティ一択だ‼」

「この前、その横でお前もハンバーグ食ってたじゃねぇか」

「遠山君、分かってないな。お洒落な飯と言えば明太子パスタだろ?」

「だからって全員明太子スパゲッティ頼むなよ。俺達の食卓ピンク一色じゃねぇか」

 

 遠山達はさておき、『Poppin'Party』にも、料理が行き渡った。

 

「ポテトとか久しぶり! ねぇねぇ有咲も食べる?」

「一発目にポテトかよ! 言っとくけど、後で私のグラタンあげねぇからな‼」

「りみもハンバーグ?私も―」

「お、お腹空いちゃって……はしたないかな?男の子の前で?」

「全然大丈夫だと思うよ。私だって、ペペロンチーノ頼んでるしね」

 

 推しは推し側で自分が頼んだメニュートークで盛り上がっている。見ているだけで余りの神々しさに目が焼かれそうになってしまう。

 

 だが、高田はそんな尊い光景に目を向ける余裕はなかった──その視線は、二席隣の丘村へと向いていた。

 

(こやつ……何を考えている!)

 

 丘村が……全く動かない。

 

 初対面の推しに結婚を申し込むような超危険人物が、合コンが始まってから、比較的に大人しい。普段の様子なら『たえさんの『ピー』を食べたいな』とか言い兼ねないのに。

 間違いない、丘村は何かを待っている。それもトンデモナイ爆弾を。

 

 丘村の一挙手一投足に視線を張り巡らせ、何をしでかすつもりかを探る。一線を越えたら始末できるように準備だけはしておく。

 

 と、その時、爆弾は唐突に投げ捨てられた。

 

「お待たせしましたー。『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』でーす」

 

 店員が運んできたそれは明らかに場違いだった。

 

 ドンッ、とテーブルの中央に置かれたのは、二人分どころか三人でも食い切れるか怪しい、特大のイチゴクリームパフェだった。

 

「(ニヤリ、と丘村がほくそ笑む)」

(こ、コイツ正気か⁉ほぼ初対面の合コンの場でまさかの『カップル限定』⁉ ハードルが高いどころか成層圏超えてるぞ‼)

「たえさん、これ一緒に食べようよ」

(たった今宇宙超えたぁぁぁ‼)

 

 正に恐れを知らぬ狂戦士その物だった。一体どんな思考回路をしていたら、合コンの場で特大パフェのシェアなど実行しようとするのか。

 

 こんなの、絶対にドン引かれるに……。

 

「良いよ? 量多いし、二人で食べようか」

(奇跡的な角度でハードルを飛び越えたぁ!)

 

 まさかの推し(たえ)から許可が出た。このたえと言う少女もまた、頭のネジが二本ぐらい抜けている。

 

「悪いねみんな。これで既成事実出来ちゃった」

 

 高田だけに聞こえる声量で囁きかける丘村。間違いなく、狂人であり確信犯でもある。全てはたえと言う少女の天然性を見抜いて策謀だった。

 

(お、恐ろしい子……‼やはりコイツは唯のイカれた奴じゃなかった‼しかし待て、逆に考えろ‼)

 

 灰色の脳味噌がギュルンギュルン音を立てて高速回転し始める。高田の中で何かの方程式が出来上がりそうな気配がする。

 

 だが、その答えは有栖川と馬本に全て掻っ攫われた。

 

「すんません店員さん!『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』一つお願いします‼」

「ぼ、僕も『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』をお願いします!」

 

 呼び出しボタンも使わず、ほぼ脊髄反射的に有栖川と馬本が手を上げる。しかも大声で叫ぶものだから、ファミレス中の客がビクリと反応して気まずい空気が流れた。

 

「(さ、先を越されたぁ!俺も乗るしかねぇ! このビックウェーブに‼)『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』一つ!」

「正気か三人とも?カップル限定だぞ?」

「だからだよ‼」

 

 正気とは、とても思えなかった。

 

「はい。無駄に『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』三人分ですね。少々お待ちくださいねぇ」

 

 平然と注文を取る店員も、正気とはとても思えなかった。

 

 そうして店員がバックヤードに引っ込むと同時に、有咲がポカンと口を開けたまま言った。

「お前ら正気か……言っとくけど、アタシは食べねぇぞ」

「わ、私も遠慮しとこうかな……恥ずかしいし」

 

 その瞬間、有栖川に加えて馬本までもが、ソファの上なのに膝を落とした。

 

(馬鹿め……己の推しも顧みず『カップル限定』を頼むなど愚の骨頂よ! その点、俺の推し(香澄ちゃん)は純粋無垢! きっとこのムーブに乗ってくれる筈!)

「ご馳走様! ポテトでお腹いっぱいになっちゃった‼」

「くわばぁ‼」

 

 完食した大盛ポテトの皿の前に、高田もまた膝を落とした。

 

 そうして暫く呆然としていると。三つのクソデカパフェがドンッと机の上に置かれた。

 

「はい、『カップル限定特大イチゴクリームパフェ』三人分です。どうぞごゆっくりー」

「「「いただきまーす……」」」

 

 そうして、三人は無言でスプーンをパフェに突っ込んだ。

 




ファミレスとかのパフェって、案外食べる機会見失いがちですよね。
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