合コン狂騒曲   作:突貫工事の下働きマン

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第八話:過去も今も未来も含めて

 それからライブまでの二週間は激動の日々だった。

 

 今までPoppin'Partyのカバーソングしか演奏してこなかった『Rockin'Live』が、いきなり曲を作ると決めたのだ。誰も作曲どころか作詞の経験も無いので当然だろう。

 

 だけど少しずつ……五人とも練る間も惜しんで作っていくそれは、段々と曲として形作っていった。

 

 ──―そして本番ライブ当日の放課後。

 

「スゥ……スゥ……」

 

 高田は机に突っ伏して眠りに耽っていた。昨夜ギリギリに完成した曲への興奮で寝れなかったのと、これまで積み上げて来た疲労が相まってか、スヤスヤといびきをかいている。

 

「おい、起きろ」

「……ん?」

 

 遠山の声と共に肩を揺すられ、高田は重い瞼を開ける。

 

「もう放課後になってるぞ。HRからずっと寝てた炉」

「流石は隣の席。よく見てるな」

「そりゃ、そんだけ堂々と寝てれば、嫌でも目に付くっての」

 

 上体を起こして、周囲を確認する。夕方の光が差し込む教室は閑散としていて、他のクラスメイト達は既に帰っていた。

 

 ただし、遠山を含めた四人のクラスメイト達を覗いては。

 

「高田も眠れなかったのか? 俺も眠れねぇんぜ、今日一日ずっと寝てたぜ‼」

「全く、授業を聞いていなかったのか君は! 学生の本分として……Zzz」

「いや途中で寝るな。せめて最後まで言えよ」

「Zzz……」

「丘村、最初から寝てれば良いって訳でもねぇぞ」

 

 相変わらず、このクラスメイト達──―『Rockin'Live』は騒々しい。そのせいですっかり眠気から醒めてしまったではないか。

 

 高田は一度席から立ち上がると、軽く肩を上へ伸ばす。

 

 教室の隅に置いたギターケース──あの日に買ったランダムスターを肩に担ぎ、四人全員に目を向ける。

 

「みんな、曲はもう覚えたよな?」

「おうよ! あんな良い曲忘れる訳がねぇだろ‼」

「当然だ。僕に掛かれば、暗記など朝飯前だ」

「あぁ、何度も頭に叩き込んだよ」

「バッチシOK。何時でもいける」

 

 四人全員が自分の楽器ケースを担ぎ、それぞれ自信満々の反応を示す。それを見て、高田は口元が自然と歪んだ。

 

「──―それじゃあ」

「その前に、推しが校門の前で待ってるぞ。ほら外見てみろ」

「……へっ?」

 

 遠山に促され、高田は慌てて窓の外から校門前を探す。そこには霞ヶ丘男子高校とは違った制服姿の少女が五人──―見間違える筈も無い。

 

 

『Poppin'Party』全員が、校門の前で待ち合わせていた。

 

「あっ、高田くーん! 待ってたよぉー‼」

 

 その内の一人、星型の髪をした少女──―香澄がコチラに気が付いて手を振る。

 

 高田は大急ぎでスマホを取り出し、何か連絡が無かったのか確認する。すると、一件だけメッセージが届いていた。

 

『今日ライブなんだよね! ポピパみんなでライブハウス行こっ‼』


「ぜぇ、ぜぇ……ごめん! 連絡来てたの気が付かなかった‼」

「良いよ! こっちこそ急に押し掛けてごめんね?」

「い、いや! むしろ光栄すぎて心臓が止まりそう……」

 

 流石に何回か会っていれば、耐性が付いていた。ついこの前であれば、心臓が本当に止まっていただろう。

 

「お、推しがこんな近くに! ヤベェ……心臓がぁぁ‼」

「アバババババッ! う、牛込さんとまた待ち合わせデートだとぉ⁉」

 

 進歩がない馬鹿二人(有栖川と馬本)は除いてだが。

 

「……あ、あはは。今日もみんな、元気だね」

 

 苦笑いしながらそう言ったのは、ポニーテールを揺らす沙綾だった。その手には、お馴染み「山吹ベーカリー」の袋が提げられている。

 

「これ、今日のライブの差し入れ。みんなで食べて精をつけてね」

「うおおぉぉ!? 沙綾さんの、生・手作りパン……! 遠山君! これを末代までの家宝にするぞ」

「食えよ。賞味期限切れるだろ」

 

 そんなやり取りを横目に、香澄がひょいっと高田の顔を覗き込んできた。星型の髪が揺れ、彼女の瞳が期待に満ちて輝いている。

 

「ねぇ、高田君! 今日は『新しいこと』やるんだよね? 遠山君から聞いたよ、オリジナル曲作ったって!」

「げっ、遠山ぁ……!?」

 

 高田が思わず隣の遠山を見ると、遠山はそっぽをむいて誤魔化した。

 

「い、いやその……それは、ライブのメインイベントなんで、出来れば黙ってくれてた方が……」

「うん、内緒にしてあげる」

 

 香澄が秘密事を共有した子供の用に、悪戯気に笑う。推しにそんな顔をされると、高山はこれ以上何かを言う事は出来なかった。

 

「まぁ、良いや……それじゃあみんな、ライブハウスに行こうぜ」

 

 高田が号令を掛けて校門前を出ると、10人と言う大所帯でライブハウスへと向かい始めた。

 

 その道すがら、ふと香澄が言った。

 

「話してくれたこと、私、ポピパのみんなにも話したんだ」

 

 やっぱりかと思う反面、高田の胸はドクンと大きく跳ねる。

 

「……それ聞いて、他のメンバーは引かなかった?」

「ううん」

 

 香澄が首を横に振るう。そして、Poppin'Partyのメンバーを見据えた。

 

「みんな『今日は絶対に一番前で応援しよう!』って言ってくれたよ。だからみんな今日此処に来てくれたんだ」

「……」

 

 高田もまた、自分のバンドのメンバーを見据える。

 

「そ、その、あ、有栖川さ……頑張れよ」

「ん?遂に俺も幻聴が聞こえるようになったか? ヤベェな、丘村みたいになっちまう」

「幻聴じゃねぇよ! その、あの……マジだよ‼」

 

「その、馬本君……今日のライブ、頑張ってね!ウチ、応援するから‼」

「はぐぁ!ど、どういう事だ! 牛込さんから応援メッセージを直接送られるなんて、僕は今日死ぬのか……?」

「うえぇ⁉ 死ぬの⁉」

 

「今から大事なライブだってのに、どいつもこいつも浮かれてるな……」

「遠山君は浮かれてないの? 推しと一緒に歩いているのに」

「……実は、ちょっとだけな」

 

「ライブ楽しみだねー。やっぱり『ギュイーン!』って弾くの?」

「いや違うよ。どっちかと言うと『キュイーン!」って弾く感じだよ』

「それじゃあ、『ギュルギュル‼』って感じは?」

 

 

「受け入れた上で、あの反応か」

 

 最初に合コンへ行った時と和やかな空気──―高田達の過去を知った上で、また同じように接してくれている。

 

 一体それが、どんな気持ちであるのかまでは、高田はエスパーじゃないので計り知れない。

 

 だが、それでも彼女達が受け入れてくれた事だけはハッキリと分かる。きっとその事は、あの四人にも伝わっている筈だ。

 

 だから。

 

「……なぁ、香澄ちゃん」

「なに?」

「今日のライブ、ちゃんと最後まで見てくれ──ー俺たちなりの答えを出すからさ」

 

 あの曲で、自分達が見つけた答えを示したいと思った。

 

『星』へ手を伸ばすキッカケになってくれた五人の少女へ。

 

 そして、昔の自分と同じように、暗闇の中に居る誰かへ。

 

 ──―そうして、ライブハウス『RiNG』の看板が見えてきた。

 




過去も現在も含めて自分である。そして、これからやる行いもまた、自分である。
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