4:1の花嫁   作:ドナドナ

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長すぎたので3つに分割してます。

絶対にメインヒロイン(花嫁)は五月やおもてた。

ご意見・感想ありましたらお願いします。


1話 上杉と三成の出会い

 俺があいつと出会ったのは、小学生の頃だった。

 俺は小さい頃はヤンチャというか悪ガキだったというか、素行が特別悪いわけではないが、今の俺が一番嫌いであろう、うるさい人間だった。そんなうるさい俺が、同じくうるさいあいつと仲が良くなるのにそれほど時間はかからなかった。

 ただ、あいつは、野田三成は俺とは違っていた。

 誰とも話すし、誰とも笑っているし、誰とも遊んでいる。子どもながらに、彼の社交性には驚いていた。そしてそれに気づいて、俺がいなくてもあいつは問題はないのだろうと、徐々に思い始めていくのだ。

 たくさんあいつとは遊んだけど、どこか埋まらないものがある。あいつと何度会話をしようとも、あいつは別のやつとも会話をする。それが寂しかったが、それは当たり前だと飲み込み続けていた。しかし、どうやら俺は無意識のうちに強く感じていたようだ。

 

「いやー、お前なしで、班行動はちょっと」

 

 あいつには社交性があり、コミュニケーション能力があり、人から好かれる素質がある。しかし、あいつが実際に友達だと思っているやつはほとんどいないらしい。というか、あいつが言うには俺だけだそうだ。

 修学旅行で班行動をしているときに、俺は腹痛を訴えた。他のメンバーには長くなるだろうから先に行って欲しいと頼んだ。

 俺はいらないから、ここで捨てていけ。

 みんなはそれならと言って俺を置いて先に行ってしまう。そうだ、俺はいらないのだ。でも、俺をいると言うやつがいた。それが三成だ。

 三成は俺を待っていると言って、班のみんなには先に行くように促した。あいつらも、「待つ」と手の平を返すように言うのを見て俺は複雑な気持ちであったが、彼はそんなあいつらをいらないと突っぱねた。それが、俺はとても心地良かった。

 俺は腹痛が嘘だとしばらく言えずにいて、ゆっくりとトイレの方へ三成と歩いていく。

 

「俺がいなくても、別に問題ないだろ?」

「いや、キツいって。この班になったのも風太郎がいるからだし、あいつらと別に仲良くないし。何話せば良いっていうんだよ」

「俺がいなくても絶対大丈夫だ」

「いや、めちゃくちゃ必要。母ちゃんもあんたには風太郎が必要だって言ってた」

 

 その言葉がなかなか気持ちいいのだ。彼の頭が少し弱いことに付け込んで、自分を卑下して何度もその言葉を言わせたりした。彼は本当に頭が弱いのか、腹痛だと言っていた俺とトイレにいかずベンチに座り込んで会話をしていてもまったく不思議に感じていなさそうだった。

 

「お前は一体俺の何を見ていたわけ?あいつらとはそりゃ、話すけど、そんなの誰とでも会話はするだろ?会話すれば友達かよ。なら俺は一体何人の友達がいるんだ?いや、お前とも会話から友達になっていったぞ。でも、友達の基準って何よ俺にはお前しか…すると、おばさんに絡まれた。

 

 ここからが俺の人生が変わる話だ。

 カメラを覗き込みながら生返事で三成の話を聞いていたら、おばさんに盗撮だと言いがかりを付けられて、警察にまでそのことについて問い詰められる状況に陥った。そこでとある少女に無実の証言者になってもらった。カメラにおばさんの写真もなかったので、乗り切ることができた。ただ、その時におばさんに頭を下げて謝るあいつを見て、なんとなく彼の人から好かれる理由がわかった気がした。

 少女は明るく元気で、いろんなところについてまわられた。班のみんなが行く予定の道をたどるのだが、途中からは彼女のペースに乗せられて様々なところに連れまわされる。

 それは、三成の元気さも上乗せになって、俺には止めることができないものになる。

 

「可愛い!可愛いよ!」

「あはは、もっと撮って!三成!」

「三成!カメラ返せって!」

「あ、ほら、返す。返すから俺らのツーショット撮ってくれよぉ」

「えぇ、あぁ、うん」

「撮って撮って!」

 

 彼女に肩を組んでこちらに満面の笑顔を向けるこいつに友達が俺しかいないだと?何を話すかわからないだと?こいつはなにを言っているんだ。お前には何億と友達がいそうじゃないか。

 俺はブツブツ文句を垂れながらも、彼女やいつもにも増してうるさいこいつに乗せられて修学旅行を楽しんだ。

 すっかり日が暮れてしまうころに、俺らは有名な神社で参拝していた。いつの間にか、少女を上回って元気だった三成の独断であらゆる場所をまわったので、俺はくたくたになっていた。

 

「次、どこ行こっか」

「まだ行くのかよ」

「私、おいしいもの食べたい」

「お前は帰らなくて大丈夫なのか?」

「え?うーん、大丈夫じゃない?なんとかなりそうな気がする」

 

 確かになんとかなりそうな気はする。先生の言っていた持ってこれるお金の上限を遥かに超えた金額を三成は修学旅行に持って来ている。親に最高の思い出は買えるときがあると言われたからという彼の言い分は、たくさん奢ってもらった俺達にはよく理解できた。

とにかく、お金にはまだ余裕があり、彼も進んで出してくれる。なんとかなるだろう。

 

「風太郎君は、お金がなくて辛くない?」

 

 三成がうんうんと観光パンフレットを見ながら唸っているときに、彼女はそう尋ねてきた。

 俺の家は貧しい。この修学旅行に、上限より少し少ない金額しか持ってきていないくらいだ。しかし、彼女の言うことを聞いて、俺の人生は変わった。

「これからたくさん勉強して、うーんと賢くなって、とびっきり給料もらえる会社に入って、母さんに楽させてあげるんだ!そしたら、きっと私がいる意味が、できると思うんだ!」

 俺は彼女と勉強することを誓った。母さんのためにという彼女に対して、俺は妹のために勉強すると言った。

 三成だけではなく、たくさんの人に必要だと思ってもらう人間になるため。誰かのためになる人間に。

 

「自分がいる意味かー」

「うわ!」

「何も驚くことないだろうが。ずっと近くに俺もいただろ」

「三成も勉強しようよ!」

「あー、うーん。俺、自分がいる意味とか、よくわからないからなー。でも、父さんも母さんも、俺がいるから仕事も家事も頑張れるって言ってくれるんだ」

 

 三成は恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに笑いながらそう言う。

 

「今日は二人がいてくれたおかげでとっても楽しかった!いる意味かはわからないけど、俺にとってはそれが本当に嬉しいよ」

 

 彼の言葉に俺も彼女も照れくさくすると、突然俺達をライトで照らす人物が現れた。

 

「何をしているんだ」

 

 男の人が俺達を見つけて、学校に連絡され、俺と三成はもとの班のみんなと合流するまでの間、男性の宿泊施設で待機することになった。

 彼女もまだここにいるので、三成はまだまだ一緒に遊ぼうと、すぐに計画をたてた。いつもはこうではないのだが、どうもその日の彼は悪いことをすることを厭わなかった。

 彼がいつの間にか消えており、先に彼女の所にいってしまったのかとあたりを探していると、涙ぐんだ三成を見つけた。どうやら偶然再会した彼女を連れて旅館を抜け出して星空を見ていたら、俺達を見つけてくれた男性に怒られたらしい。泣きそうなのを必死で隠そうとするのがとても面白かった。

 そのあと、五つ子だとか、そっくりだとかと話を聞いたが、説明がめちゃくちゃでそのときは得意の生返事をしていた。

 それが、いつかわかることになるのだが。

 学校の迎えの車の中で俺は質問した。

 

「そういえば、今日お前めちゃくちゃテンション高くなかったか?なんで?」

「え?いや、ええ?うーん」

「言えよ」

「いや、かわ」

「かわ?」

「可愛かったから、つい」

 

  三成は一目ぼれの感覚を掴んだと言っていたが、これも俺の生返事の餌食となった。

 俺の人生の転機が訪れたそんな日を境に、俺は勉強を必死に頑張るようになった。俺よりなぜか勉強ができる三成にも教えてもらうことがあったが、それほど得意ではなかったのですぐに彼を追い抜いた。

 勉強に対して結果が出始め、俺はさらに勉強にのめり込む。そんな中学生になったばかりの頃、三成にも人生の転機が訪れた。

 それは、訪れてほしくないことであったが。

 三成の両親が交通事故で亡くなった。小学校を卒業し、中学校入学までの春休みに、家族で旅行に出かけたらしい。その時に山道でトラックに衝突を受け、たくさんの命を乗せた車が四メートルほどの崖から落ちた。後部座席に座る彼が助かったのは奇跡だといえる。ただ、亡くなった命は正しくは三人である。母のお腹には、彼の妹がいたのだ。

 それから三成が人と会話するところを滅多に見なくなった。友達がいないというのは本当だったのか、小学校では仲が良かったように思う人たちは、彼をまるでいないかのように扱う。

 俺はどう三成に接すればいいのかわからなかった。周りのみんなよりも、きっと俺のほうが彼への接し方がわからなかった。彼がどれほど両親が大好きだったかをよく知っているがゆえに。彼がお兄ちゃんになることをどれほど待ち望んでいたかを知るがゆえに。休み時間、ずっと机に突っ伏して寝ている彼に、なんて声をかけたら良いのかがわからなかった。

 俺は俺で、友達を作るより勉強に専念しているので、友達はいない。必要だと思わないからだ。しかし、俺にとって三成だけは、絶対になくせない。彼は、俺にとって必要な人間だ。そして、彼は今、一番俺のことを必要としてくれている気がした。

 

「風太郎。いてくれてありがとう。話しかけてくれて、ありがとう。本当に、ありがとう。俺は、もう一人だと思ってた」

 

 俺は彼の自室で、いつからか全く変化しなかった彼が顔をぐちゃぐちゃにして泣く姿を見た。何度も俺に感謝してくれたので、そこでようやく、俺は彼のためになったのだと安堵した。その時に、少し泣いてしまったのは彼が永遠に知ることのない秘密である。

 それからは、いつかの関係に戻った。クラスでいつものように会話をしていると、少しずつ、彼に話しかける人が増えていった。俺は不思議と増えなかったが、それは彼の持つものが凄いからだ。しかし、彼はいつまで経っても俺しか友達がいないという主張は変わらなかった。

 彼が言うには、俺が友人なら、俺ほど仲が良いやつなどはいないのだから、俺以外の友人はいないらしい。俺を親友だとすればみんな友達になるのではないかと言ったが、親友も友達のことだろうと言われ、なぜか負けた気がして悔しかった。あと、とても恥ずかしかった。

 

「そもそもお前しか友達がいないのに、お前が特別仲が良い親友だとは言えないんだよ。この先もしも俺に友達ができることがあれば、お前がナンバーワンだ。つまり、親友だぜ」

「恥ずかしくないのか?」

「俺は満足しているから」

「いや、そういうことを言うことが」

「事実だし」

「あ、ああ、そう」

「お兄ちゃん照れてる!攻略されつつある!」

「らいは!包丁持っているんだからしゃべらず集中しなさい!」

 

 今では、らいはも彼の家によく足を運ぶようになった。料理を教える先生をしていた母の影響をうけて、よく料理をしていた三成は、家事を担うようになったらいはの良き師匠となったのだ。その過程で、この彼だけの家になってしまった場所には、上杉家がよく訪れるようになり、夕食をここで済ませることも増えた。

 高校生になると彼の祖父母も遠くの家に帰り、上杉家に彼のことをいろいろと託された。本人は複雑そうにしていたが、俺達にとってまったく迷惑ではないとわかりだすと、徐々に遠慮も失せ、新しい家族のように接してくれた。

 そうなると、今度は彼が上杉家の借金について手伝うと言い出した。彼は両親が残した遺産の親戚の援助のおかげでお金に苦労していないのだが、借金返済のために部活にも入らず、バイトをいくつも掛け持ちしだした。

 一家全員で止めたのだが、何をしても何を言っても彼は止まらなかったので、こちらが折れることになった。未だにやめろとは言うのだが、恩返しなのだからと彼は折れない。俺達を家族のように思いたい彼のことを思うと、こちらは強く出ることができなかった。

 彼のおかげで借金はハイペースで減って行き、さらにはおいしい夕食をごちそうしてもらえる。さらにはいつでも野田ハウスで暮らして良いと家主に言われる。

 こうなると、上杉家は寄生虫へ一本道となってしまうので、なんとかそこに泊まるのは週三回までに決まった。少ないと彼も寂しいのだろう。話し合いでこう納まった。

 こうして上杉野田家が形成されていき、現在、高校二年生となった俺に、新しいバイトの話が舞い込んだ。

 家庭教師の依頼で、相場の五倍の給料らしい。最近、さらにバイトを増やすことを検討しだしている三成を止めるためにもさっさと借金を返済してしまわなければならない。

 しかし、このバイトには問題があるのだ。このバイトの話をらいはから連絡される前のことだった。

 

「隣の席が空いているので、そちらで食べればいいじゃないですか」

「いつも俺達はここで食べているんだ」

「俺達?あなた一人ですよね」

「いつも一緒にここで飯を食べる友人がいるんだよ。今はトイレに行っている」

「ですが、私が先にこの席を取っていました」

「じゃあ俺が先にこの椅子に座ったから俺の席だ。って、おい。そこは三成の席だ」

「ここは、私の席です」

 

 このような喧嘩をした相手が、家庭教師として教えなければいけない生徒である確率とは。俺の頭脳を持ってしてもわからない。結局は、三成のためには二人で座れる席を確保しなければいけない俺がその席を譲り、新しい席を確保することになった。彼女とは喧嘩別れとなったのだ。

 三成は首をかしげるだけだった。その無頓着で変に尋ねたりしないところが彼の美徳だと思う。

 そして彼女が偶然俺と同じクラスに転校してきた女子である確率とは。俺は頭を抱えたが、彼はまた首をかしげるだけだった。

 翌日、この日から俺は彼女の家庭教師となるのだが、まずは謝罪だ。彼女にもし拒絶されれば、このバイトはなかったことになりかねない。

 

「それで、お前が一緒に昼食を食べたい女の子って誰なわけ?」

「そうとは言っていないだろ」

「つまりはそうだろうが。いやぁ、春ですねぇ。俺、そばで見守っているからね」

「いや、お前には俺とその女の間を取り持ってほしい。具体的にいうと、彼女を食事に誘って欲しいんだ」

「無理」

「できる。お前ならできるから」

「できるかよ」

「嘘だから。お前にはできるから。できている自覚が薄いだけだから」

「はぁ、まぁ、やれるだけはやってみるが?」

「流石三成!」

「それで、あの子で良いの?」

「うん。あ、あれ、友達と食べているな」

「いいじゃん。混ぜてもらえば」

「おい待て待て!」

 

 俺の制止を聞くことなく、三成は五人で食事をする女子グループのなかに突入していった。




風太郎が考えている三成に関する予測・推測などは、たいていそのとおり本人が考えていることだと認識していただきたいです。こんな形で書き始めてしまったので、この方式でオリキャラ(オリ主)の解像度を上げてます。
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