4:1の花嫁   作:ドナドナ

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2026/05/02 編集して1話を3分割してます。

石田くんはかなり容姿整ってます。中身は拗らせて内向的で、少々面倒くさい男です。ただ、上杉のことが大好きなので優先度がかなり高くなってます。


2話 はじめての家庭教師

 俺の制止を聞くことなく、三成は五人で食事をする女子グループのなかに突入していった。

 

「なぁ、一緒に食べたいんだけど。ダメかな?あ、俺は野田光成って言うんだけど」

 

 あとから聞いた話だが、この時彼は自分の心音がうるさいくらいに聞こえて、緊張で吐きそうだったらしい。そうは見えないが、勢いに身を任せていたようだ。それにしても嫌なりに行動へ移してくれる三成には、本当に頭が上がらない。

 

「あ、あそこのやつも一緒に、ダメかな?」

「ど、どうもー」

「ダメですね」

「五月ちゃん、別に良いじゃん」

「そうですよ。野田さん、机くっつけちゃいましょう」

「お、おう。あの、風太郎。お前、何かしたのか?」

「それを謝るための作戦だ」

「普通に謝れば良いだけじゃん!」

「俺もお前をこの大人数の中に送り出すつもりはなかったんだって」

 

 俺は小突いてくる三成の手を払いながら、頭に大きなリボンを付けた女子と一緒に机を付けて、彼女たちの席に俺達二人分の席を足す。彼女たちが頼むと隣の席に座っていた男子がすぐに退いたのだが、美少女のなせる技か。確かに彼女たちの容姿は優れているが。

 

「私は一花で、こっちが二乃。三玖に、四葉、五月だよ。私たち五つ子なんだ」

「五つ子!?」

「おい、風太郎。そんなに驚くことでもないぞ。五つ子だって、六つ子だってある」

「六つ子はありえないでしょ」

「いや、五つ子がありえるのだから不思議じゃない」

「三玖さん、だっけ?よくわかってるね。俺のサンドイッチいる?」

「いらない」

「だよね。あ、このサンドイッチまだ開けてないから誰か食べてくれない?」

「あ、それじゃあ私が」

「はい、五月さん。俺、用事思い出したから、もう行くわ。五月さん、風太郎が謝りたいことがあるらしいから、聞いてあげて。それじゃあ」

「おい!三成ぃ!三成ー!!」

 

 三成は駆け足でトレイを返して、駆け足で逃げて行った。残された俺は三成が駆けていった方向に手を伸ばすだけだった。振り返って五つ子を見ると、みんな不思議そうにしている。俺にはなんとなく理由はわかっていた。俺からのミッションは果たしたのだからここに残る理由がないのだ。

 

「そ、それで、謝りたいこととは何ですか」

「あ、ああ、そうだな。えーっと、昨日のことを謝りたいんだ。感じが悪かっただろ。すまん」

「い、いえ、私のほうこそ、ムキになってしまい、すみませんでした」

「フータロー君と五月ちゃんで、何かあったの?」

「い、いや、いろいろあったんだ。あ、俺も用事思い出したから」

「ごはん残ってる」

「わ、忘れてたわ。は、ははは」

 

 俺はできるだけ急いでご飯を口の中にかき込んで、長居せずにその場から立ち去った。あとで冷静になって気づいたのだが、五つ子なので俺が教えるのは彼女たち五人ということだろう。五倍の給料の訳がわかった。

最後まで彼女たちに自分が家庭教師となることを打ち明けられなかったので、このあとが気まずそうだ。

 

「お、おお、生きて帰ってきたか」

「三成、ずるいぞ。こうなるなら焼肉定食焼肉抜きにしておけばもう少し早く」

「おい、俺が働くぞ。良いのか?そんな節約許さんぞ」

「その脅し、凄く俺に効くけど、本当におかしなセリフだな」

 

 トイレから出てきた三成と合流して、教室に帰った。

 放課後、校門を抜けたあたりで、遠目に五つ子が見える。俺はこの後彼女たちを追って家庭教師として訪問するつもりなので目で追うのは自然だが、三成が彼女たちを見つめているのはなぜだろうか。

 そういえば、短い間だったが、彼は彼女たちと話しているときテンションがいつもより高かった気がする。

 

「なあ、三成、お前このあとバイトとかないよな」

「え?まぁ、ないけど」

「あいつらの家に入れるかもしれないと言ったら、どうする?」

「お前、泥棒は犯罪だぞ?」

「違うわ!俺はあいつらの家庭教師なんだよ。それで、なんかうまい感じに、お前も連れていけないかなと思ったんだ。お前だって可愛いあいつらともっと仲良くなりたいとか思っているんだろ?」

「待て待て待て!家庭教師?仲良く?」

「俺もちょうど気まずいと思っていたところだ。死なば諸共、虎穴に入らずんば虎子を得ずだ!」

「待てー!」

 

 俺は強引に三成の腕をひいて彼女たちの後を追う。三成にはぜひとも恋に現を抜かしてほしいと常日頃願っていた。気になる人が五人のなかにいるのではないか。

 呼ぶと彼女たちは立ち止まって追いつくのを待ってくれた。

 

「まだ何か用があるんですか?私達、用事があるので急がないといけないんですけど」

「それって、家庭教師が来ることだろ?」

「な、なんでわかるんですか!上杉さん!」

「俺が家庭教師なんだ。お前たちの親から頼まれた!」

 

 俺がそう告白すると、五つ子みんな驚いた表情になる。こう同じ表情をされると、本当に五つ子みんなそっくりだなと思う。

 

「な、なんであなたなんですか。というか、なぜ同級生が」

 

 確かにその通りだ。

 

「風太郎は学年一の成績だから、家庭教師自体はちゃんと務まると思うぞ?」

「三成さん、本当ですか?」

「うん。俺もよく教えてもらうけど、めちゃくちゃわかりやすい」

「それと早速頼み事で申し訳ないが、三成も連れて行って良いか?」

「なぜですか?」

「俺も家庭教師をするのは初めてだから、三成には助手をしてもらおうと思うんだ。こいつも成績は良い方だ。もちろん俺の都合だから料金に変化はない。どうだ?」

 

 俺のまくし立てる提案に少し後ずさりながら、五月がそれならばと少し不服そうにしながら頷く。同じ料金で二人体制で教師がつくのなら、まず得だと感じたのだろう。

 次女の二乃も賛同してくれた。

 

「私も賛成。三成君が教えてくれるならねー」

「やっぱりメンクイ」

「三玖、良い子だから黙りなさい」

 

 俺はちらりと三成のほうを見るが、相変わらず五人を前にして緊張している様子でずっとソワソワしている。恐らくメンクイの意味をよくわかっていない様子である。

 

「私も賛成だよー」

「野田さんと上杉さんの二人がかりなら心強いです!」

「私は」

「もちろん三玖も賛成よねー。それじゃあ行きましょ!三成君!」

「あ、うん」

 

 野田が二乃に手を引かれて五人の中に混ざり、五つ子と野田、その後ろを俺という形で歩きだす。確かにあいつの容姿は悪くないが、どうにも自分の扱いとの差がありすぎではないだろうか。誰が目当てかはわからないがこうして五つ子と急接近できたのだから、あとで三成にはちゃんと感謝してもらおう。

 五人、中野家はマンションの最上階に住んでいるらしい。この三十階建てマンションに住むには、相当な金額が必要になる。最上階となれば、またさらに多額となる。

 オートロックのマンションと聞いて、俺と三成は顔を見合わせて頷いた。その設備までつくと、確信できる。この五つ子はかなりのお嬢様だ。

 

「ここが私達の家です」

「お、お邪魔します。おい、三成。戻ってこい」

「あ、ああ。俺も、お邪魔します」

 

 俺はお金持ちの娘だと聞いていたのでそれなりに想像できていたが(それを遥かに超えていたが)、あまり知らなかった三成にはかなりの衝撃だったようだ。

 意識を戻した三成が俺の後ろについて入ってくる。

 内装はオシャレな二階構造になっていて、上に上がったところに五人それぞれの自室があるらしい。ダイニングとリビングが繋がっていて、玄関を抜けるとすぐに壁一面がガラスとなっているのが見える。そこには遠くまでよく見える綺麗な景色があった。

「中野さんたちって、何者なんだ」

「言い忘れてた。お金持ちの娘らしいぞ」

「もっと早く言ってくれ」

「三成君、準備できたから、クッキー作ろ!」

「ああ、うん」

 ここまでの道すがらそんな約束をしていたのだろう。俺と一緒にベランダに出させてもらい、軽く冷静さを取り戻していた三成はまた二乃に連れていかれた。一緒に作る訳ではないが、俺も中に入る。

「野田さんって、料理できるんですね」

「ああ、あいつの作る料理は本当にうまいぞ。クッキーを作ったことは、あったかな。忘れたが、それよりも。他の三人はどこに行ったんだよ!」

「三人は部屋に戻っちゃいました」

「四葉、それはマジ?」

「あ、五月は勉強道具を取りにいっただけだと思いますよ」

「マジなのか。はぁ、じゃあ、他の二人だな。一花と、三玖か。部屋に案内してくれるか」

「はい!」

 

 こうして俺は四葉に案内されて、まずは三玖の部屋に案内してもらった。

 

「嫌。この街にはまともな家庭教師がいないの?」

「ま、まぁ、そういわずにさ」

「出ていって」

「は、はい」

 

 まるで取り合ってもらえず、三玖の部屋からすぐ出ることになった。

 

「なぁ、三玖が一番頭が良くて、俺と気も合うって聞いたんだけど」

「あ、ああ、次は一花の部屋です!レッツゴー!」

 

 元気で誤魔化しながら勢いよく一花の部屋の扉が開かれる。

 始めに飛び込んできたのは、足の踏み場がなくなっている床だった。そこに散らばるものに目を凝らすと、たいていが服であることがわかる。一見カラフルで、目がチカチカとするほどだ。

 

「ここに人が住んでいるのか」

「住んでるよー」

 

 もぞもぞとベッドの上でブランケットに包まりながら顔だけを出してそう一花が抗議してくる。隣ではこの間掃除したばかりなのにと、四葉が落胆していた。

 

「フータロー君が先生かぁ。あ、今日はそれでお昼一緒にしよって誘って来たの?」

「いや、一番は五月に謝るためで。まぁ、それはよくてだな。早く下に戻ってこい」

 

 そう言って一花を包むブランケットを引っ張る。すると、一花の慌てる声と共に、一花の肌が不自然なくらいに現れる。聞くに、どうやら寝るときはほぼ裸らしい。

 

「いやー、照れるなー。四葉、そこらへんの服適当にちょーだーい」

「なんでだ、本当に。というか、お前もう少し部屋を片付けろよ。この机も、勉強できないだろ」

「もー勉強勉強って。せっかく女子の部屋に入れたんだよ?それでいいの?」

 

 挑発的な笑みを浮かべていう彼女に俺は少し心臓の高鳴りを激しくさせ、ゆっくりと息を吐いてそれを鎮める。

 どうもぬらりくらりとしている。このままでは言うことを聞かずに逃げ続けられそうだ。そう感じた俺は、頼りになるあいつを呼ぶことに決めた。

「三成!ヘルプ!」

「ええ!ちょ、フータロー君!?」

 

 すると二十秒もせずに開けっ放しにしていた一花の部屋の扉から、どうしたと軽く息を切らしながら言う可愛らしいエプロンを身につけた三成が顔を出す。反応が早すぎて、少し申し訳ない。

 三成はまず部屋の汚さに驚きの声を上げる。

 

「ちょっと、三成君!見ないで!」

「うわ!ちょ、一花さん!服は!?」

 

 短く叫び声をあげて一花は落ちかけたブランケットで身を包みなおす。

 俺は首をかしげた。先ほどまで俺に挑発的な言葉を投げかけてきた彼女は、今では恥ずかしそうに乾いた笑い声を出している。これもまた顔の良し悪しのせいか。それほどにこいつはイケメンだっただろうか。

 

「一花さんって、結構、いや、ご、豪快だね」

「あはは、バレたかー」

「豪快で片付けられないがな。一花にしても、この部屋にしても」

「お、風太郎、うまいな」

「ありがとう」

「なにがおいしいんですか?」

「四葉、服は良いからその二人を連れ出してくれる?」

「わかりました!」

「あ、一花、服着たらすぐにリビングに来いよ?」

「わかったから、早く行って」

 

 四葉に軽く押されて一花の部屋を出る。結果的に、三成のおかげで彼女をリビングに誘い出すことができた。これで三玖以外の四人は全員リビングに誘い出すことができた。

 

「フータロー、通るからそこ退いて」

 

 いいところに三玖が話しかけてきた。

 

「ちょうどよかった。お前以外四人はみんな勉強するぞ?お前もどうだ」

「本当に?」

「本当だぞ。な?四葉?」

「え?は、はい!本当です!た、たぶん全員!」

 

 こういうときにこいつは頼りにならなさそうである。

 

「三成くーん。どうしたのー?クッキー焼けたよー。食べよー」

「クッキーですか!私も食べます!」

「たくさんあるから、五月だけじゃなくって、みんなも食べよ」

 

 いつの間にか後ろにいた五月が俺を抜かして一階で焼けたクッキーを手に持つ二乃のもとに向かった。それに続いて部屋から出てきた一花、三玖、三成と全員が一階へ向かうのでそれに流されて俺もリビングに向かった。

 机にお菓子やジュースが広げられて、五つ子のいただきますの声がリビングに響く。

 

「このクッキーは野田さんが作ったんですか!とてもおいしいです!」

「ありがとう。二乃さん、俺達も頂いて良い?」

「もちろんよ!三成君も作ったんだから」

「それじゃあ、いただきます」

「あ、うん。いただきます」

 

 流れに乗って一緒にお菓子パーティーをすることになってしまった。三成も俺達が家庭教師としてここにいることを忘れているのではないだろうか。

 三成に取ってもらったクッキーを一つ口に入れると、俺は思わず口からうまいと言い漏らしてしまった。機会があればまた作ってもらおう。らいはもきっと喜ぶだろうし、ぜひ習得してもらいたいものだ。

 

「じゃなくて、お前ら、勉強しようぜ!」

「えー、勉強はもういいじゃん」

「そういう訳にはいかない。これはお前らのお父さんから依頼された仕事なんだ。ちゃんと役目を果たさないといけないんだ」

 

 俺がそう言うと、五つ子みんな揃って複雑そうな顔をした。お父さんというワードに何かがあるようだったが、なぜなのかまではわからない。

 

「とにかく、実力をはかるためにもこの小テストをだな!」

「まぁ、こんなに机の上が散らかったらその小テストもできないし、あー、あと十五分後、半になったらしよう」

「おい、三成。家庭教師の手伝いでここに来ていることを忘れるなよ」

「あ、私三成君にさんせーい」

「私もー」

 

 俺は重くため息を吐いて、五つ子たちの輪から抜けて少し離れたところで長座し、脱力する。それに合わせて三成は俺の隣に座った。

 

「その小テスト、どうしたの?」

「前に課題で出てた社会のプリント。あれをコピーして作った」

「コンビニでか?」

「うん」

「言えば貸すからさ、うちのコピー機使えよ。パソコンとかさ」

「あー、頼んでいいか?」

「おう、遠慮せず使え」

「ありがとな」

 

 これでコピーするだけでなく、復習プリントや小テストを作ることもできるだろう。三成がいて本当によかった。

 そんなことを考えていると、三成は二乃に連れられて五つ子の輪に戻っていった。

 俺の中でありがたいと思っていた感情が薄れていく。

 

「風太郎、お前もこっちきて食べようぜ」

「おう!」

 

 三成にはもの凄く感謝している。

 五つ子とのお菓子パーティーが一段落し、約束の半の時間になった。コップなどの食器を片付けに行った二乃と三成が戻ってくる。

 

「それじゃあ始めるぞ」

「ちょっと待ってガリ勉」

「ガリ勉?」

 

 二乃の言葉に俺はできるだけ平静を保ちながら、青筋を立てながら聞き返す。

 

「勉強、しなきゃダメ?勉強は一人で十分できるし、正直、五人とも家庭教師を必要としてないの」

「いや、そう言ってもだな」

「パパのことは気にしなくて良いからさ、やめない?」

「それは、いや、できればやめたくないんだ」

 

 できるだけこの仕事を果たし、給料をもらいたい。それは今ここにいる三成が働かないで済むようにするためでもあるし、何より、俺自身が稼いだお金でなんとか妹のらいはに楽をさせたい気持ちがあるから。

 

「本当に強情ね。あんたが邪魔なの!余計なお世話なの!わかる?勉強ができるか知らないけど、私の言っていることがわからないの?馬鹿なの?」

「…ああ!そうだ、ごめん、俺は用事思い出したし、そろそろ帰らなきゃだから」

「え、三成君、帰るの?」

「そうそう、俺も手伝えなくなるし、二乃さんもこう言ってるし、帰ろうぜ」

「……いや、悪いが三成だけで帰ってくれ」

「はい?いやいや…」

「用事、あるんだろう?先に帰ってくれ。俺もそう長居せず帰るよ。初回だしな」

 

 三成は納得がいかなそうな顔を一瞬するが、俺の言葉に頷いて徐に帰り支度を整える。ちらりと一度だけ俺のほうを見るが、何も言わずお邪魔しましたと一言添えて中野家を出ていった。

 その様子から姉妹たちも違和感を感じている様子だった。俺には彼の用事が嘘であるとわかっていたし、大方の理由もわかっていた

「よ、用事って……、たぶん、嘘よね?どうしたのかしら」

「怒ったんだろ」

「な、なんでよ」

「お前が俺に生意気な口をきいたからだよぉ」

 

 今俺は、かなり悪そうな顔をしているだろう。

 

「なんで」

「俺にもはっきりとはわからないが、あいつのことだからお前が俺にガリ勉だの言うのを見ていろいろとモヤモヤしたんじゃないか?俺と三成は竹馬の友だからなぁ!」

「意味わかんない」

「いやー、せっかく三成と仲良くなれたのに残念だったなー。嫌われちまったなー。人にキツイ言葉使うやつ苦手だもんなぁ、あいつ」

「うるさい!」

「フータロー君ってさ、三成君とそんなに仲良いの?小さいころからの親友とか?」

「あー、まあ、そんな感じだ。家族みたいなやつだよ。あいつもそう思ってくれてると思う」

「へー、自信あるんだねぇ」

 

 一花に言われて俺は少し照れくさくて視線を泳がせる。実際そうだと自信を持っているのが、余計に恥ずかしかった。

 

「上杉、あんた手伝いなさいよ」

「え?」

「だから、私が三成君に謝って、また仲良くなれるよう手伝いなさいって言ってるの!」

「ふーん」

「な、なによ!」

「三成に惚れてるのか?」

「な、い、どうでもいいでしょ!」

 

 周りを見てみると、恋話に目を輝かせる姉妹たちの姿がある。二乃は思っていた以上に三成に夢中だったようだ。

 

「俺が家庭教師であることを認めて大人しく小テストを受けるのなら、三成の好きな食べ物なんかも教えて、いろいろと融通してやるよ。もちろん、謝るのを手伝うっていうのもな」

「ほ、本当?じゃ、じゃない。ま、まぁ、認めるわ。言ったこと、ちゃんと憶えておきなさいよ」

「それなら、二乃のためにも、頑張らないとですね!」

「五月ぃ」

 

 二乃は嬉しそうだが恥ずかしそうに、でもやはり目を潤ませて五月に抱きつく。

 三成のおかげで家庭教師としての仕事がうまくいきそうだ。それに加え、あいつの恋路の応援も、うまくいきそうである。

 普通なら二乃がわざわざ謝る必要などない。ただ、三成は面倒くさいやつなのだ。人付き合いは得意なのに嫌いで、気まずい人や苦手な人とは一見友好的に接しながら、全力で避けるのが三成という男だ。なので、上杉家大好きな彼なら、今の一件でまず二乃のことは苦手になっているだろう。自然と距離を保つようにするはずだ。

 二乃が謝るという選択肢をとったのは、正解であると俺は知っている。まぁ、俺へ少し重い友好を向ける三成が勝手にストレスを感じただけなので、本当に彼女にさほど非がないでもあるが。

 またしばらくごねられたが、なんとか五人全員に小テストを受けてもらえた。今は彼女たちの答案を採点していっているのだが、徐々に問題が明らかになってくる。

 彼女たち五人とも、馬鹿なのだ。一番高い点数を取った三玖ですら三十二点。家庭教師については一番前向きに迎えてくれた四葉に関しては、最低の八点。

 

「お前らなー」

「まぁまぁ、採点お疲れさまです。水ですが、グイッとどうぞ」

「え、ああ」

 

 俺があまりにも悲惨な点数に声を荒げようとしたときに、横からコップに入った水を差しだされる。俺は落ち着こうと思い言われた通り、水を一気に飲み干す。そうすると、頭は冷えたのだが。

 

「バイバーイ」

 

 俺もさっきはこんな顔をしていたのだろうと思える悪人顔の二乃を最後に、俺は眠りに落ちた。




はい、そのとおりです。
ニ乃は料理という共通点とルックスで落とせます。
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