足音を繋ぐタスキを持って   作:ミスブルー

1 / 5
ようこそシロコ!


もう一つの青春へ

これから話すのは私の与太話…

 

ただでさえ生徒が少ない学校。

5人しかいない学校。

 

私は黒い衣を纏ってこれからもアビドスを見てそして守っている。

 

私には決めていることがある。

 

自分がいつか高校時代を語る時が来たらあの時の苦労話や努力の軌跡は口にはしないと。

 

昔は良かった、昔はみんな頑張ったなんて自分に対する郷愁でしかないから。

その代わりに、どんな苦しい時でも素敵な寄り道が出来たことを伝えたい。

 

どんなに厳しい環境でも楽しく生きたことを教えたい。

 

失敗もたくさんある…でもそれが許される時間は誰にでも訪れるものだから

 

 

 

色彩の力を利用して私は空間を移動する。

 

私としてはどこでもいいけど…。

アビドスには"私"とノノミ、ホシノ先輩、セリカやアヤネがいるから。

 

本来この私がいる学校という場所に留まる必要はないのだから。

でも先生やホシノや"私"は時々…いや結構な頻度で気にかけて来る。

 

かつて放浪生活をしていたけどやめた。

 

今はアビドスの自治区内の廃棄物件を拝借して腰を落ち着けている。

 

私はアビドスを守りたい。

 

そう思えるだけ私もまるくなったと思う。

 

色彩の転移を抜けた後、額をぶつけた。

天井が低い場所に出たようだ。

 

「ん…」

 

公園の滑り台の真下に出たらしい。

 

「………知らない場所だ」

 

もう一度色彩を使い移動しようと思ったけど色彩は来なかった。

 

「????」

 

あれ?

 

「ん…ここはどこかな」

 

私の目の前は知らない街並みの光で溢れていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

夜の街並み、高いビル。

 

歩く人、行き交う人。

 

私を見ても驚くとかはない。

 

でも私の格好を見ると少し驚いた顔をする。

 

 

今何時だろう…。

 

スマホを見ると21時近い。

 

時間合ってるのかな?

 

夜空を見上げる。

キヴォトスにはない空の色。

さすがに察した。

 

「ん…どうしよう知らない世界に飛ばされちゃった」

 

〜〜〜〜〜

 

メッセージ

 

シロコ:先生、今いい?ここどこだか分かる?

 

メッセージの送信を失敗しました。

写真を送信しました。

写真の送信を失敗しました。

 

〜〜〜〜〜

 

「………」

 

モモトークが送れない。

 

私はスマホをしまう。

 

お腹が空いてきた。

 

お金あるけど…使えるのか分からないし…困ったな。

 

強盗なんかしたらそれこそホシノ先輩や先生が黙ってなさそう。

 

正座で怒られるで済めばいいけど…。

 

そんなことを考えていると制服を着た小柄の女の子がお店の前で何かをやっているのが見えた。

 

近づくと自転車の車輪とチェーンを触って額に汗が少し浮かんでいるのが見えた。

 

直せそう。

 

そう思い声を掛ける。

 

「ん…大丈夫?」

 

「……全然無理」

 

小さい声だけどはっきりとそんな返事が返ってきた。

その時ふと女の子の背後に何か大きな影が見えた。

 

「……???」

 

それは今はいいかなと気にするのを後にする。

 

「少し横いい?」

 

「え…?うん…」

 

女の子は隣を開けてくれたから私は隣にしゃがむ。

 

チェーンが外れていた。

タイヤのパンクしてない。

大丈夫そうだ。

 

「直る…?」

 

女の子はそう聞いて来た。

 

「ん、直ると思う」

 

そう私は返しチェーンを嵌めて直していく。

数十分の末、ようやく車輪とチェーンが動くようになった。

 

「直せたよ」

 

「ありがとう…自転車直せるんだ…すごいね」

 

「ん…どういたしまして」

 

そう言って女の子は私を見た。

 

「…見ない人だね…どこから来たの…?」

 

「私…?キヴォトスのアビドスって場所から。でも帰れなくなっちゃって」

 

「……。アビドスってエジプト…?…キヴォトスって何…?」

 

女の子は再び私を見た。

 

「ん、ごめん…」

 

「何で謝るの?。あっ…私、姫野桃」

 

「……私は…私はシロコ。砂狼シロコ」

 

お互いに自己紹介する流れになった。 

この姫野桃と言う女の子は見た目によらずかなり賢い人だった。

 

「……。異世界の住人だよね…?迷子?」

 

「ん…迷子だと思う。…お腹空いちゃって」

 

「それならちょうどいいかな…?」

 

「ちょうどいい…?」

 

「目の前…私が働いてるお店だから…自転車触って手洗いたかったし…シロコも手洗って」

 

「ん…わかった。ありがとう」

 

確かに自転車の車輪とチェーンを触っていたから真っ黒な手だった。

 

『頑張った人の手だね』

 

そんな言葉を先生が言ってくれたような記憶がある。

 

誰かの自転車を直したのは久々だった気がする。

いつもは捨てられているものばかりだった。

 

私は一緒にお店に入った。

 

お店は既に閉店だ。

 

水道で手を洗い私はボックスシートの座席に座る。

 

「自転車直してくれたお礼にご飯作ってあげるよ」

 

小さい声だけどそう言ってくれた。

声が小さいけどはっきりと言う人だとも私は思った。

 

とはいえ作れる品は決まっていたようだ。

 

サーモンとクリームパスタを作ってくれた。

 

私は「いただきます」と言って食べる。

仄かにレモンの風味が突き抜けてクリームパスタと合っていた。

 

姫野桃、彼女はパティシエだからスイーツ作りがメインなのだと言った。

 

レモンを使ったのはその為に…。

 

トリニティやゲヘナの有名なお店にすぐ出せるくらいの味。

 

美食研究会も舌を唸らせそう。

 

私はコメンテーターじゃないけど…。

 

私はキヴォトスから来たことを改めて伝えた。

 

そんな場所はないということだったが信じてないというわけじゃない様子だった。

 

ここは地球と呼ばれる場所。

 

魔力溢れる魔法使いの街、森宮の街。

 

姫野桃は私に帰り方や今後の方針に困っているなら学校への生徒にという提案をしてくれた。

 

悩んだ末、森宮の生徒になってみることにした。

 

「この世界を知らない子が初めて来た時…こういう言葉を贈るのが通なの……。

ようこそ森宮へ…青の世界地球に」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。