足音を繋ぐタスキを持って   作:ミスブルー

4 / 5
強い未練や恨み、死の恐怖により、死亡した土地や建物、物体に留まり続ける霊のことです。自殺現場や事故現場、愛着のある場所に縛られ、そこから離れることができず、周囲に影響を及ぼす心霊現象として知られている


地縛霊

1人駅伝ソロチャレンジ大会

 

42.195kmを私達は走る。

正直に思う。

この企画を考えた人は頭がおかしい。

私なら走れるけど考えた人は頭がおかしいと思わざるえない。

それでも大勢参加するのだから大会というのはおもしろいものだ。

 

「朝比奈はどうして走る事を時坂に返したいの?」

 

私は尋ねた。

朝比奈はバツが悪そうに話した。

ケンカをしてしまったのだと。

 

『ーーーー"遅いよ一葉!そんなんじゃ私には勝てないよー!"』

 

朝比奈からしてみたら何気ない言葉…でも時坂からしたら傷つく言葉だった。

そこから先は言い合いだった。

 

『明日に何かをしようと思ったの。でも死んじゃった私。もう思い出せない。何しようとしてたんだって…』

 

「ん…どうして死んじゃったのか聞いてもいい?」

 

私の言葉に朝比奈は『自殺で死んだ』と答えた。

 

自業自得、後悔、後の祭り…。

ケンカした事を誰かが知ったのだろう。

話しが広まっていて止めることも出来なかった。

 

『まさか自分があんな呆気なく死んじゃうなんて思わなかったんだ』

 

そして朝比奈は私を見て言った。

なんで死んだの?なんて聞かなかった。

それは必要じゃなかったから。

 

『最近自分の事がわからなくなってきてる

私が明日何をするかももう覚えてない…でも一葉に走ってほしくて』

 

自殺した人間は地縛霊となりやすく悪霊に代わりやすい。

悪霊になったらどうなるか分からないと姫野桃は言った。

 

「朝比奈はどうしたいの」

 

『私…?私は……どうしたいのかな』

 

それを知る為にどうにか時坂一葉に伝える為に私は走らないといけない。

 

「走るの好き?」

 

私は何気なく聞いた。

朝比奈は屈託なく答えた。

 

『走るのすごく好き。それはよく覚えてる。走ってる時が一番の自由なんだ』

 

その言葉を何となく伝えないといけない気がした。

 

『シロコどこいくの?』

 

「ん…いつも朝比奈が行ってる場所」

 

私は時坂が練習してる公園へやってきた。

 

『一葉今日もいるね!走ってるねー!一葉ーーー!!』

 

大声で彼女の名前を呼んでいた。

その声は私だけにしか聞こえない。

 

時坂は私の姿に気付いて足を止めた。

 

「…どうも。何しに来たんです…?」

 

「ん、練習見に来た。足速いんだね」

 

「早くないですよこんなの」

 

「そう?」

 

「落ちたくらいですよ。記録も速さも体力も…気力も」

 

どんどんネガティブになっていく時坂に私はどう返そうか悩んだ。

 

こんな時…ホシノ先輩やノノミ、セリカやアヤネはどう答えるだろう…。

 

あのよわシロコも私とは違う答えを言うのだろうか…。

 

私も落ちた。

 

生きる気力すら。

 

そうして世界に死を与える尖兵になったのだから。

 

それでも先生は私を信じた。

 

先生ならどうするかな。

 

大事な人達を思い出して私は答えた。

 

「でもあなたは走っている」

 

「それはあなたが走れって言うから」

 

「ん…。それはそうだね。

でも走ってる時が一番自由なんだって」

 

「…………」

 

時坂は俯いた。

私も何かに夢中な時があった。

自転車で駆けてく風は楽しかった。

今でも時々、あのちびシロコと走ることもあるくらいなのだから。

何よりも自由だと感じた

 

「その言葉、誰から聞いたんです?」

 

「え…?ん…」

 

私は朝比奈を見る。

朝比奈を小突くような私の素振りに時坂は一瞬首を傾げた。

 

朝比奈は時坂を見ていた。

 

「あ、いえ…なんでもありません。そんなはずないですし」

 

「ん……」

 

朝比奈は何かを言おうとしている顔だった。

 

『一葉…!私』

 

「すみません、練習もどりますから」

 

その言葉に背を向け走っていく。

時坂はもしかしたら一瞬気付こうとしたのかもしれない。

でも気のせいだと振り切った。

 

私はふと先生が生徒に対して話していた話し方を思い出した。

 

「今日は追いかけないの?」

 

『……。今日はいい』

 

「もう言ったのかもしれないけど聞こえなくても言うべきなんじゃないかな」

 

『何を?』

 

「ん…走る事を返したいって」

 

『シロコへんなの…なにそれ』

 

それは朝比奈が言った言葉だった。

自分で言った言葉のくせに。

 

でもきっとそれは自分が何より言われたかった言葉。

朝比奈の声は少し泣きそうな声だった。

 

〜〜〜〜〜〜

 

朝比奈との共同生活にも慣れてきた。

まぁ朝比奈は死んでるし幽霊だから何もすることはないのだけど。

駅伝ももうすぐ。

私もできる備えをしておかないと。

備えといっても体操服でいいのかな?

 

 

その晩、私はうなされていた。

重い…身体になんか重りが乗ってる感じがする。真っ黒いモヤが私に覆いかぶさり荒い呼吸をしながら私の首を絞めていた。

 

「ッ!」

 

私は顔があるであろう部分を叩いた。

モヤは1つに固まって人の形を取った。

朝比奈だった。

私は小さく息をつく。

 

朝比奈は大きく呼吸を何度もして大粒の涙を流していた。

 

『シロコ…私、私、ごめん…!』

 

「ん、いい」

 

私は朝比奈の身体をさする。

彼女は自殺した霊。

身近にいたから分かるけどきっと悪霊になりかけているのかもしれない。

自殺した霊は悪霊に変わりやすい。

 

 

『でも…早くしないと私』

 

「駅伝は明後日だから焦ることない」

 

『そうだけど…このままじゃ私はシロコを傷付けちゃう…!』

 

「ん、大丈夫」

 

その言葉に朝比奈は戸惑う。

 

「いい。私のが強いから」

 

そんな私の言葉に朝比奈は「なにそれ」と泣きながら安心するように笑った。

 

次の日学校に行くと姫野桃の隣にゲヘナ生みたいな人がいた。

 

長い金色のツインテールに赤目、身長はゲヘナ風紀委員のヒナといい勝負だ。

 

「……シロコおはよ」

 

「ん、おはよ桃。…隣にいるのは知り合い?

はじめまして」

 

「はじめましてね、私はパトリシア・ユピテル。よろしくね」

 

「ん、よろしく。私は…シロコ。砂狼シロコだよ」

 

「よろしくねシロコ。駅伝走るんですって?」

 

「うん。あなたも走るの?」

 

「えぇ。せっかくだから走ってみようかなって思って」

 

「ん…そうなんだ」

 

「お互いベストを尽くしましょ」

 

そう言ってパトリシアは行ってしまった。

その背中を見送っていると姫野桃が私に言った。

 

「シロコ今日は朝比奈は?」

 

「いつものところだと思う。時坂一葉に会いに行ってる」

 

「…見に行ってみよう」

 

私と姫野桃は時坂が練習している公園へやってきた。

友達と一緒のようだ。

そこには朝比奈も混じっている。

 

「…なんて言ってる?」

 

「ん、朝比奈の墓参りそろそろ行かない?って友達が誘ってる話しをしてる」

 

「………。よく聞こえるね」

 

「ん…私の視力は24.5」

 

「………。いやそれほぼ靴のサイズ…」

 

「ん、冗談」

 

そんな会話はさておき、時坂と友達の会話は続いている。

 

「ごめんなさい、そうだけど…まだその気になれなくて」

 

「でも1回くらい行ってやりなよ」

 

「ごめんなさい…私はいくじなしだから」

 

時坂は去っていく。

その姿を朝比奈はじっと見つめていた。

朝比奈はどういう気持ちで聞いているんだろう……?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。