英雄になれない元勇者   作:ダンまち=スキー

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ダンまちエアプです、対戦よろしくお願いします。


英雄、始まりの日

 

(遂に今日か……)

 

 眼前にそびえ立つは迷宮都市オラリオ。

 

 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか、という作品における主な舞台。世界で唯一ダンジョンと呼ばれる地下迷宮の上に築かれた巨大な迷宮都市。

 英雄の都、世界の中心……はたまた世界で最も野蛮な都市、なんて称されることもある。

 

 俺の2つ目の人生、その実質的なスタートがここだ。

 

 前世は勇者として死んだ。普通の社会人をしていたところを女神に誘拐され、世界がヤバいとのことで仕方なく戦い、邪神とほぼ相討ち。魂を賭してギリギリの勝利。

 

 しかし、得たのは元の世界には帰れないという最悪の結果だけ。

 

 だが、女神を恨んではいない。俺の魂が邪神との戦いで変質していたこと、それが帰れない理由だった。

 魂の大部分を喪失しているとはいえ、三千世界を闇に覆う系ガチヤバ邪神を(ほふ)るほど魔に馴染んだ勇者(バケモノ)を、魔法のマの字もない世界には送れない。

 規格が全く異なる魂は世界の輪廻に加わることができない。任○堂Switchの充電ケーブルで電子レンジは動かせない。納得できる理由だし、戦うことを決めたのは結局のところ自分だ。

 

 そんな俺を哀れんだ女神の提案、それは不完全な世界への転生。本来歩むべき歴史から外れ、滅亡が約束された、必要なナニカが無い世界への転生。

 それを受け入れ、選ばれたのがここ。

 

主人公(ベル・クラネル)がいないダンまちの世界』

 

 転生特典は神託、世界が滅亡しないためのささやかなヒント。

 ちなみに前世では四捨五入したら人類滅亡ってくらいヤバい状態で、主神である女神は力を失っていた為、全て自力でなんとかした。死ぬほど大変だった。というか何回か死んだ。

 

 しかし最初に自分の顔を確認した時は驚いた。

 なんせ主人公(ベル・クラネル)そのままの容姿だったのだから。

 女神は言っていた。必ずしも神託に従う必要はない、壊れた世界なのだから好きにしても良いと。なのにこれではまるで、世界を救えとでも言わんばかりだ。

 

 昔の戦友を思い出す。

 

 家族にも友人にも会えず、現代の文明も失って心が(すさ)み、殺戮(さつりく)マシーンと化していた俺に対して、彼は言った。

 

『お前は勇者としての生き方しかできない人間だ』と。

 

 何を言いたかったのかは今でもわかっていない。

 だが、連想するように思い出した。

 もっとも、今の俺が目指すのは勇者ではないが。

 

 この世界に生まれて14年、この容姿にもすっかり慣れたものだが、神託の内容は1文字たりとも変化していない。

 

【0日後に炉の女神ヘスティアを探せ】

 

 全く主人公らしいと思う。

 

 古代ギリシアにおいて炉とは家の中心であり、従って炉の女神であるヘスティアは家庭の守護神として崇められた。加えて慈悲深く子供好きで全ての孤児たちの守護者でもあり、オリンピックの聖火の元ネタであり、あのゼウスとポセイドンの姉だ。

 

 もう勇者はこりごりだ。俺は1人で何年も戦った。

 

 だけど──民衆と共にあり、仲間と戦う英雄になら、なってもいいかもしれないと、俺は思った。

 

 

 




ベル・クラネル(偽)(元勇者)は村で過ごした神託のカウントダウンを待ちながらモンスターを狩ったり農作業したりの14年間が普通に幸せでした。エブリデイ戦争の日々で削られたメンタルは回復した模様。

女神『急に異世界に拉致されて、家族にも友人にも一生会えず、来る日も来る日も殺し殺されしながら中世くらいの文明レベルで暮らす。挙句の果てには原作知識ほぼ無しな上このままだと滅亡する世界に送られる……こんな惨状で英雄にならなってもいいかな、なんて普通の人間は言えませんよね。くーっ、流石は私の選んだ勇者! えっ、容姿が主人公? 知らんナニソレ怖ぁ……』
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