英雄になれない元勇者 作:ダンまち=スキー
もっと原作崩壊させてくれとリクエストがあったんですが、実は元々そういうプロットでした。強さ据え置きとか、フレイヤファミリア所属とか、他にも色々と考えてたんですよね。でもそうすると、例外なく魅力的なキャラが何人か死ぬんです(出番的な意味で)。
ちょっとだけ書いて、非常に勿体ないし余裕で愚策だなと考え直し、今の形になりました。私はベートもレフィーヤもヘスティアもエイナもリリもヴェルフもみんな好きだし、より多くの出番を用意してより沢山の魅力を伝えたいと思っております。対戦よろしくお願いします。
といってもシルは暴走してるし、リリ周りの話は原作だとLv3の辺りまで先回りしてるし、怪物祭でレフィーヤと共闘して食人花と戦ってるしで、そこそこ崩壊してはいますね。か、勝手に動かんといて……
「君が例のサポーターだね?」
「は、はい。リリルカ・アーデと申します。初めまして、ヘスティア様」
ベルに席を外させて、2人きりでの対面。ヘスティアの意図は明らかだった。ファミリアの団員として相応しいのか、直接その目で確かめようというわけだ。
「率直に聞くよ、サポーター君。君はまだ打算を働かせているかい?」
「──っ!?」
真っ直ぐ切り出された問い。ヘスティアは容姿も態度もバイト先でマスコットになるくらいあどけないが、しかし問いを投げかけるその姿には彼女を神たらしめる威厳が確かにあった。
リリは自分が信用されていないことを知った。名前すら呼んで貰えていないのが何よりの証拠だった。いくら情状酌量の余地があるとはいえ、リリが後暗いことをしてきたのもまた事実。信用できる方がおかしいだろう。
神に嘘は通じない。しかし、リリに動揺はない。なぜなら、元よりやれることはたった1つだからだ。即ち、嘘偽り無く己をぶつける。
「ありえません。リリはベル様に助けられました。あの人を裏切るような真似なんかしたくありません」
視線が交じり合う。どちらも逸らそうとしない。まるで周囲の喧騒が遠ざかっていくような雰囲気がそこにはあった。
「……うん、わかった。君のその言葉はまず信じよう」
リリにとっての長い時間が終わりを告げた。肺に溜めた空気を一気に解放するのを堪えながら、ゆっくりと肩の力を抜いていく。
「サポーター君。ボクはベル君のことを大事に思っている。なんせ初めての
一呼吸置いて、ヘスティアは続ける。
「君の境遇は概ね把握している、ベル君から聞いてね。安い同情をするつもりはないし、それは無駄だと思ってる。だから過ぎたことに何も言うつもりはない。ただ……」
本題だ、と言うようにヘスティアは言葉を溜めた。
「もし同じことを繰り返して、あまつさえあの子を危険に晒したら……ボクは、君のことをただじゃおかないからな」
リリは体を硬直させた。呼吸の仕方が一瞬わからなくなった。しかし、神の瞳に
「誓います。ベル様にも、ヘスティア様にも……なにより、リリ自身に」
「……わかったよ」
その一言で、2人の時間は終わりを告げた。リリはもう我慢できず脱力する。目の前のテーブルに突っ伏したい気分ですらあった。
「……サポーター君、正直に言うよ」
「は、はいっ!」
「ボクは君のことが嫌いだ。ベル君には付き纏って欲しくないと思ってる」
リリが動揺している間にもその衝撃発言は続く。
「当たり前だろう。話を聞いた時から君に対するボクの心証は最悪さ。ベル君の人の良さに付け込んで好き放題たぶらかして、あまつさえ手のひらを返したように今では取り入ろうとして。何が目的だ! この泥棒猫め!」
魔力を伸ばすためにとベルに言われて常時発動させている変身魔法。それによって形成されたケモミミがピクリと揺れる。
ヘスティアの発言にそれは少し違うとリリは思ったが、反論の余地は与えられない。
「大体さっきからなんだい。会った時からずっとしょぼくれたような顔をして。見ているこっちがほとほと憂鬱になるよ」
まるでお前の顔を見ていると飯が
「おおかた、ベル君のことを考えていたんだろう?」
「っ?!」
「なぜ分かったかって? ふんっ! いつも鏡の前で似たような顔を見ているからさ! あーやっぱり嫌だ! 君をベル君の側になんか置きたくない!」
もうリリは半泣きしかけていた。
「ベル君は君に良くするばかりだから、罪悪感に潰れそうなんだろう。ボクから言わせれば、それはただの甘えだね! 本当に嫌な奴だ、君は。だからボクが代わりに裁いてやる」
ふんっ! と鼻を鳴らしてふんぞり返るヘスティアに対し、リリはかろうじて
「ベル君の、面倒を見てやってくれ」
「……えっ?」
歯をあらん限りに噛み締めながら、苦心するようにしてヘスティアは言った。
「言っておくけど、君のためなんかじゃないんだからな。ボクは今回の話を聞いて、つくづくベル君のことが心配になった。というか確信した。ベル君は放っておくとどこまでも突き進み、誰も彼も助け、いずれ変な女に引っかかるだろうと。いや、引っかけるのかな?」
「あ、あぁ〜」
リリは共感した。めっちゃ分かる〜と言いたくなった。
「だから君に頼むんだ。目を光らせておいてくれよ?」
「わ、わかりました」
なお、既にベルはオラリオで最も面倒な女を引っかけているので、手遅れである。今頃どこかの酒場の店員である街娘がくしゃみをしていることだろう。
「そもそも断罪なんて生意気なこと言ってるんじゃないよ! 今どき神だってそんなことしないぜ? 罪悪感なんて、結局は自分が自分のことを許せるか許せないかでしかないんだ」
それをベルに求めるなとヘスティアは語気を強くする。
「あの子に後ろめたいことがあるなら、満足するまで恩を返せばいい。当たり前だろう? それが誠意ってものだ。君が心を入れ替えたというのなら、行動で証明してみせろ」
「……はいっ!」
先程までの非難は嘘偽りの無い本音だろう。それでも、ヘスティアはリリにチャンスを与えた。紛れもない女神の慈悲であった。その温情に感謝して、リリは素直に頭を垂れた。
「……ファミリアへの加入は許可する。あの子のお
「はっ?」
「さて、改めて……初めましてサポーター君。"ボクの"ベル君が世話になっていたようだね」
その所有権の強調に、リリはプッツンした。目の前の存在は、慈悲深い女神ではなく、敵であると、認識を改める。
「いえいえこちらこそ! ベル様には"いつも良くしてもらっていますから"」
ロリ巨乳とロリ巨乳のバトルが、幕を開けた。
リリはひとまず、
◇
ソーマ・ファミリアとの問題が解決してファミリアの構成員が増えたという報告をするべくギルドへと向かう道中。ベルはリリの様子が気になって声をかける。
「ヘスティアにキツイこと言われた?」
「へ? いえ、そんな……」
罪悪感をベルで解消するなと話したばかりなのに、どうやら顔に出ていたらしい。リリは反省したが、良さげな言い訳は出てこなかった。言い淀むリリを見て、ベルが口を開く。
「怒るのも憎むのも、まるで悪いことみたいに言われるけど……本当は、誰にとっても辛いことなんだ。復讐を肯定するわけじゃないけどな」
「……ベル様、教会の神父様みたいですね」
勇者は女神の使徒なので、実際そう。
「安心しろ、リリ。もし仮にお前が地獄に落ちたとしても、俺が脱獄させてやる」
「ぱ、パワープレイ……!」
全盛期ならできた。
「ということで、他のことを考えよう。スキルは戦闘に役立ちそうか?」
リリのスキル、
その効果は一定以上の装備過重時における能力補正。
補正量は重量に比例する。
簡単に言えば、荷物をいっぱい持てるスキル。
本人はあるだけマシな荷物持ちスキルと称していたが、ベルからすれば優秀なスキルだ。様々な状況への対応や戦術を考え出すと、必要な持ち物や装備は物凄くかさむ。それでも動きが落ちないというのはとても有用だ。単純に、種族柄あまり力が強くないリリとも噛み合っている。
「スキルは大丈夫そうですが、魔法はダメでした。すみません……」
「いや、そう簡単な話じゃないのは色々と試したから分かってるよ。そっちは練習していずれ、だな」
変身魔法による獣化は、残念ながら出来なかった。
ベルもリリの魔法を実際に詳しく調べて試行錯誤してみたが、耳をエルフっぽくするのが限界で、体格さえ同じなら実際に機能する部位を肉体に拡張できるリリの変身とは比べるのも失礼なクオリティにしかならなかった。
ベルの頭をさらに悩ませたのは、リリの変身が魔力のアビリティによって拡張されたことだ。服装もある程度はいじれるようになったらしいのだが、こちらは触ると解除される。つまりは耳や尻尾とは違いただの幻影。しかしながら、こっちならベルは楽勝にできる。
つまりは、リリにとっての難しさと、ベルにとっての難しさが、真逆になっている。ベルは頭を抱えてぐお〜と
Q.誰がオラリオで最も面倒な女ですって?
A.お前じゃい! この初恋拗らせモンスターが!
ベルくんは『自分は綺麗なものを欲しがっちゃいけない』と思っている節があるので、女神Fさんとは相性が良い。悪人ではないけどドス黒い面は持ってる系キャラとシナジーがある。
それってもしかして → 面倒臭い女