英雄になれない元勇者   作:ダンまち=スキー

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役に立たなさすぎて影が薄い神託ですが、原則として原作をなぞるように変わっていきます。ただし超雑なので大まかな方針くらいにしかならない。
『サポーターを探せ』
『Lv2にランクアップしろ』
『鍛冶師と契約しろ』←今ココ
原作を遂行できているのか分からないので、神秘のアビリティで魔道具を作るとか有能な人材のスカウトとかでリカバリーする方針です。



鍛冶師の勧誘、不壊の魔剣

 

「俺はヴェルフ・クロッゾ。ヘファイストス・ファミリア所属の、今はまだ下っ端の鍛冶師だ。よろしくな、得意客(ファン)1号」

 

「こちらこそ、よろしく頼むよ」

 

 身長は175くらいか。和を感じさせる黒い着流しに赤の短髪、ボロい服装と邪魔だからと適当に切ったような髪は、ベルの知る鍛冶師らしい鍛冶師といった風貌。

 サインいるか? と冗談を言って笑う青年を見て、まるで面倒見の良い兄貴分のようだとベルは思った。

 

「……なぁ、1つだけ言っていいか?」

 

「? 別に構わないが」

 

 首を(かし)げつつ肯定するベルを見て、瞼を閉じ大きく空気を吸って、ヴェルフは口を開く。

 

「いつも俺の防具を店の端っこに置きやがって、ざまぁ見やがれ! 俺にだって顧客の1人くらい付いてんだよ! しかもあのリトル・ルーキーだぞ! うはははははは!!」

 

 高らかに笑うヴェルフを見て、ベルは納得した。

 

 ヴェルフと会うにあたってベルが来るよう指定された場所は、前にエイナと今は亡き防具を買ったバベル8階だった。最初はなんでそんなところにと思ったが、周りの同業者を見ながらニヤニヤと勝ち誇っている彼を見るに、どうやらベルという顧客の存在をアピールしたかったらしい。

 

「俺の作品は剣だろうが鎧だろうが全く売れない。自分で言うのもなんだが、いい作品(もの)を出している自信がある。けど、からっきしだ。同僚とも折り合いが悪くてな」

 

 売れないのはネーミングに問題があるのでは、とベルは思った。それはともかく、品質が良いのは事実だ。ヴェルフはファミリア内で同僚との関係があまり上手くいっていないと、ヘスティアはヘファイストスから聞いたらしい。ただリリよりはかなりマシで、経営陣からは評価されているそうな。

 

 やはりネーミング……? ベルは(いぶか)しんだ。

 

「悪いな、利用するような真似して。無名の鍛冶師ってのは客の奪い合いだからよ」

 

「いや、問題ない。事情は理解できる」

 

「そうか、助かる」

 

 そら買えるなら実力が保証されている有名な鍛冶師の作品を買いたいわけで。しかし財布の事情ってものがあるので、未熟な冒険者は同じく未熟な鍛冶師の作品を懐と相談しながら買う。

 それに客の奪い合いなんてのは商売の基本だし、勇者やってた頃は広告代わりにされたことなんていくらでもある。直接ヴェルフと対面して鍛冶師はこの男しか有り得ないと今では思ってもいるので、ベルは気にしなかった。

 

「貴重なんだぜ? 冒険者の方から下っ端の鍛冶師を求めてくれるなんてのは。認めてもらった……今の俺たちにとってこんなに嬉しいことはない。だから、逃がしたくない……逃がすわけにはいかない」

 

「……ふむ?」

 

 真剣な眼差しで見つめてくるヴェルフに、ベルは続きの言葉を促す。

 

「俺と直接契約しないか、ベル・クラネル」

 

 直接契約。それは、冒険者と鍛冶師のより強固なギブアンドテイク。冒険者は鍛冶師のためにダンジョンからドロップアイテムを持ち帰り、鍛冶師は冒険者のために武具を作成し格安で譲る。

 

「客観的に見て、俺たちは釣り合っていないと思う。なにせお前はLv2の最速記録保持者(レコードホルダー)なのに、俺は鍛冶の発展アビリティも発現してないLv1の無名だ。それでも、どうか考えて欲しい」

 

 ベルはここに来てから鍛冶師という鍛冶師に見られていた。それはなぜかと言えば、Lv2に最速でランクアップした上にフリーなので狙われているからだ。

 ヴェルフからすれば、ベルが自分を選ぶ理由はない。そしてベルに選ばれなければ、唯一の顧客を失う。是が非でも契約がしたいわけだ。

 

「こんな話の後じゃあ信じて貰えないかもしれないが、Lv2への最速記録とかそういうのはどうでも良かったんだ。ただ、あんな数ある鎧の中から俺の作品を欲しいと言ってくれたらな……こう、グッとこみ上げてくるものがあるってもんだろう?」

 

 鍛冶師冥利(みょうり)に尽きるというその言葉に、嘘はないとベルは判断した。実直で、良い魂をしているヴェルフの言葉だからだ。精霊に好かれるのもよく分かった。

 

「結論から言おう……是非とも契約したい」

 

「マジか?!」

 

「ただし!」

 

 喜びで飛び上がりそうになるヴェルフを制してベルは続ける。

 

「売名に利用された事は許すし、なんなら言いふらしてくれても構わない。直接契約でも専属契約でも好きなだけする。その代わり、いずれヘスティア・ファミリアに所属して欲しい」

 

「それは……なんでだ?」

 

「自覚がないのか? お前は精霊の力を持っている」

 

「それは……」

 

 警戒するように聞き返したヴェルフに、ベルは素直に理由を答えた。しかし反応からして、自分が精霊の力を持っていることは知っていたらしい。

 

「俺が知る限り、精霊の力を持つ者はこのオラリオに3人しかいない。俺と、アイズ・ヴァレンシュタインと……ヴェルフ、お前だ。俺はハイエルフに会ったこともあるが、アレは精霊の力なんぞ欠片も持っていなかった」

 

「……それ、エルフの前で言ったら殺されるぞ?」

 

 別に(けな)しているわけではなく、それは純然たる事実だった。エルフは精霊信仰の種族。にも関わらず、王族であるハイエルフが欠片も精霊の力を持っていない。前世の常識からすれば有り得ないことで、一族からの排斥で済めば幸運、最悪の場合は処刑レベルの事態だ。

 

「さらに言えば、アイズ・ヴァレンシュタインは風だけだが、お前には全ての精霊の力がある。俺が名を上げれば自分もと思っているのかもしれないが、俺から言わせればこのオラリオで最も将来性があるのはお前だ、ヴェルフ・クロッゾ」

 

「……そうか、そこまで言われちゃあ説明するしかないな」

 

 納得したように目を伏せて話を聞いていたヴェルフは、諦めたように顔を上げてベルと視線を合わせ、説明を始めた。

 

 ヴェルフの先祖である初代クロッゾは、魔物に襲われていた精霊を助け出した際に瀕死の重傷を負ったことで、治療のために精霊から血を与えられた。

 そうして精霊の力を宿した彼は、人が使う魔法より劣化するという常識を覆し、本物を越えるレベルの魔法を放てる魔剣を作れるようになった。

 

 ここまでは普通の良い英雄譚。

 しかし、この話には後日談がある。彼の子孫だ。

 

 とある王家に魔剣を献上することで貴族の地位を得て魔剣鍛冶師と呼ばれるようになった彼らは、私利私欲のために魔剣を見境なく売りさばいた。戦争の道具として使われることも(いとわ)わずに。結果、数多の森が焼き尽くされ、自然は破壊された。その短絡的で愚かな行いが精霊の怒りを買い、一族は魔剣を作る力を失い……それどころか、全ての魔剣が砕け散った。

 

 そうして、魔剣によって地位を維持していたクロッゾは没落した。しかし何の因果か、ヴェルフにのみその力が宿った。当然のように強要される魔剣の作成。ヴェルフは家族に反発して国を出奔した。

 同僚との関係が悪いのは、強力な魔剣を作れる血筋に対する嫉妬だった。それでも、ヴェルフは魔剣は作らなかった。

 

 ヴェルフは魔剣が嫌いだ。持つだけで強者を倒し得る安易な力。使い手に傲りを与えてしまう魔法の武器。とりわけ一族(クロッゾ)の魔剣は、使い手も鍛冶師も腐らせる。

 

 そして使い手を残して絶対に砕ける。

 

 苦楽を共にすることもできず、育っていく姿を見届けてやることもできず、死がお互いを分かつまでもなく、砕ける。

 

 ヴェルフは魔剣が嫌いだ。使い手を残して逝く武器が、武器としての本懐を果たさせてやれない定めが、大っ嫌いだ。

 

 そこまで無反応で聞いていたベルが、口を開く。

 

「理解はする。だが、これだけは聞かせてくれ……お前の武具を使っていた冒険者が死んだ時、お前は魔剣を作らなかったことを後悔しないのか?」

 

「……っ!?」

 

 ヴェルフには、真っ直ぐに自分を見つめるベルの姿が、己の主神と重なって見えた。

 

『意地と仲間を秤にかけるのはやめなさい』

 

 かつて、ヴェルフはヘファイストスにそう言われた。

 ヴェルフは、自覚していた。

 

「……そうだ。くだらない、ただの感傷(いじ)だ」

 

 自嘲して笑みをこぼすヴェルフに、気まずい沈黙が流れる。

 

「ごめん、イジワルした。代わりと言っちゃなんだが、解決策を提示しよう」

 

「……解決策? そんなものがあるのか?」

 

 ふぅ、とひとつ息をつき、ベルが続ける。

 

「壊れない魔剣を作ればいい」

 

「……は?」

 

 そのあんまりにもあんまりな回答に、ヴェルフは困惑を隠せない。それを確認しながらも、気にせずベルは己の構想を語る。

 

「要は、だ。魔法の行使に魔剣自体のエネルギーを使うから、それを使い果たしてぶっ壊れるわけで」

 

 それはさながら生命力を失った生物のように。予め込められた魔力を使い切ると、魔剣は壊れる(死ぬ)

 

「なら、エネルギーを外付けすればいい」

 

「それは、確かにそうだが……」

 

「今のところ俺が考えてんのは2つ。1つ、魔石の魔力を充填して使う。2つ、使用者の魔力を吸い上げて使う」

 

「……前者は燃費、後者は威力が課題だな」

 

 ベルの発想力が優れているわけではない。それは、この世界で産まれ生きてきた者とは全く異なる、まさに異世界の知識だった。

 

 そして、未だ混乱しつつも、そこは生粋の職人。ヴェルフもこの議論には乗らざるを得ない。

 

 魔石を電池として使う場合。誰でもお手軽に強力な魔法を使えるが、その代わり頻繁に電池(魔石)交換が必要になる。明かりを付けるとか、料理をするための火の元とか、そんなものとは比較にならないレベルの魔力出力が必要になるため、高品質の魔石が大量に必要で……つまり、とても金のかかる燃費の悪い魔剣になる。

 逆に使用者の魔力を吸う場合は、無料で使い放題。しかしその代償として、威力は使用者の魔力に依存する。そもそものアビリティが高いベルや、精霊の力で魔剣の力を増幅できるヴェルフなら、強力な魔法を使えるだろう。しかし、リリが持ってもそれ相応の威力にしかならない。

 

「あとさぁ、オラリオの魔剣って攻撃一辺倒じゃん。回復とか結界とかは使えんの? まぁいいや。俺が発展アビリティで神秘とったし、一緒に頑張ろうな」

 

「おいおい、ステイタスなんて言っちまっていいのか? つか勝手に改宗したことにすんなよ」

 

「だって、するだろ?」

 

「それは……」

 

 それは、ズルい質問だろう。こんな構想を聞かされて、契約を我慢できる鍛冶師がいるだろうか?

 

──いや、いない(反語)

 

 ヴェルフの中で、結論は出た。

 

「契約書とかはまた今度に回すとして……壊れない魔剣についてもう少し話せるか? 特に攻撃以外の魔剣について」

 

「おっけー」

 

 2人はそのまま数時間ほど語り続け、試作にまで入り、ベルは朝帰りをして──ヘスティアとリリはブチ切れた。

 





一応明言しておきますが、精霊とエルフの関係については、エルフ下げをしているわけではありません。そもそも原作でのエルフが若干ゃ性格悪い? それはそう(敗北)。悪く言わなくても人種差別主義者なのエグいって……
天才は勉強ができるけど、勉強ができるからといって天才では無いのと同じです。精霊に力を与えられた者は良い人間だが、良い人間だからといって精霊に必ず力を与えられるわけではない。
前世とファンタジー世界の常識としてエルフは精霊と共にある種族なので、ベルくんとしては単純に疑問なだけです。

やったねヴェルフ、魔剣が増えるよ。

ちなみに、実は現時点での火力だとベルくんよりヴェルフのが高いです。長く魔力を練るとかすればまた話は変わってきますが、少なくとも瞬発力では圧勝ですね。事前に用意しておけば詠唱も何も必要なく使えるので。
ただこの2人が戦うとなるとベルくんの圧勝です。ヴェルフの火力は精霊バフで増幅した魔剣に大きく依存しているので、自爆覚悟で魔剣を使っても、精霊に愛されているベルくんには全くダメージが通りません。精霊バフは丸ごと剥がされて通常の魔剣と同じ威力にまで落とされ、そこからさらにベルくん側の精霊バフによる魔法ダメカットが入るので、掠り傷です。
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