ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「たのも~! ジムに挑戦に来ました!」
重厚な石扉を押し開け、ヒビキの声がジム内に響く。薄暗い照明の中、積み上げられた岩の上に座っていた青年──タケシが静かに目を開いた。
「挑戦者か……俺はニビジムリーダーのタケシ!」
「マサラタウンのヒビキです!」
「マサラか。先程のチャレンジャーもそうだったな。いいだろう、受けて立つ!」
フィールドの両端に二人が立つと、審判用のドローンが滞空し、無機質な電子音を奏でた。
『これよりジムリーダー・タケシ対マサラタウン・ヒビキの試合を開始します。使用ポケモンは二体。チャレンジャーのみ交代を認めます』
「まずはゆけ、イシツブテ!」
「なら……行け、ニドラン!」
タケシは不敵に目を細めた。
「ほう、よく育てられているニドランだ。だが毒タイプを出すとは……相性を覚えられていないのは、まだまだだな」
「それは始まってからのお楽しみだ!」
「バトル、スタート!」
審判の合図と同時に、タケシが先手を取る。
「イシツブテ、【転がる】!」
「ニドラン、【スマートホーン】!」
加速する岩の弾丸。だが、ニドランは逃げない。鋼の硬度を纏わせた角を真っ向から突き立て、強引にイシツブテを弾き返した。
「やるな! ならば【ロックカット】で機動力を……」
「そうはさせない。ニドラン、【地均し】!」
「ニッドォッ!」
地面を叩き、衝撃波がイシツブテの足を奪う。素早さを上げようとした目論見を完璧に潰され、タケシの顔に驚きが走った。
「畳み掛けろ、【二度蹴り】だ!」
「ニドッ!」
接近を許したイシツブテの腹部に、強力な連撃が食い込む。岩の体を持ってしても耐えきれず、イシツブテはその場に沈んだ。
『イシツブテ、戦闘不能! ニドランの勝ち!』
「よし! ……おっ?」
勝利の咆哮を上げようとしたニドランの体が、眩い光に包まれる。光が収まった後に立っていたのは、一回り大きく、より逞しく進化した姿だった。
「まさか、このタイミングで進化するとはな。……だが、コイツにはかなうまい! ゆけ、イワーク!」
現れたのは、巨大な岩の蛇。ヒビキは進化したばかりのニドリーノを労いながらボールへ戻すと、確信を持って次の相棒を送り出した。
「頼むぞ、ヒメグマ!」
「ほう、また珍しいポケモンを……。だが関係ない、イワーク、【締め付ける】!」
「ヒメグマ、【冷凍パンチ】で振り払え!」
「クマァ!」
巨体が小さなヒメグマを呑み込もうとした瞬間、冷気を纏った拳がイワークの顎を叩き上げた。凍りつくような衝撃に、イワークの動きが止まる。
「なんてパワーだ! ならば上から潰すぞ、【ボディプレス】!」
「次は【雷パンチ】だ!」
タケシは耳を疑った。
(雷パンチ? 岩・地面タイプのイワークには無効のはず……まさか、ヤケになったのか?)
だが、直後に猛烈な悪寒がタケシを襲った。無効だと分かっていて撃たせる、その「意図」に気づいた時にはもう遅かった。
「気づいたみたいだけど、もう遅い! 【地団駄】だ!」
「クマクマッ!」
技が不発に終わった直後、その怒りを爆発させることで威力を倍増させる物理技。
スカされた電撃のエネルギーを全て地面に叩きつけ、ヒメグマが弾丸と化して突進する。
「イワァ!?」
巨体が宙に浮き、ジムの壁面へと叩きつけられた。轟音と共に土煙が舞い、そこには目を回して力尽きたイワークの姿があった。
「……見事だ。完敗だよ」
タケシは静かに、その実力を認めるように頷いた。