ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「ニドキング、戦闘不能! フリーザーの勝ち!」
審判の非情な宣告が響く。ガラルフリーザーの持つ、圧倒的かつ冷徹なまでの力。会場は伝説のポケモンの降臨と、その凄まじい一撃に静まり返り、やがて万雷のどよめきへと変わった。
しかし、ヒビキの顔に絶望の色はなかった。むしろ、その瞳には燃えるような情熱が宿っている。
「初めての大会で、まさか伝説のポケモンと相見えるなんて……こんなに嬉しいことはない!」
ヒビキはボールを天に掲げ、高らかに叫んだ。
「だから俺は、絶対に勝つ!! 行ってこい、ファイヤー!!」
紅蓮の炎を纏い、神々しい姿で現れたファイヤー。
会場は言葉を失った。
『なんと──っ!? ヒビキ選手、まさか伝説のポケモンであるファイヤーを隠し持っていたとは! 伝説同士のバトルが、このセキエイリーグで見られるなんてぇ──!!』
ベカンは感極まったように叫び、会場のボルテージは最高潮に達した。解説席や観客席で戦況を見守っていたジスト、そしてヒビキを育て上げた4人の兄貴分たちも、心の中で叫んでいた。
(ヒビキ、なりふり構わず全力を尽くせ!)
VIP席で観戦していたシラサギも、驚きと感嘆の混じった笑みを浮かべていた。
「まさかチャンピオンリーグではなく、通常のリーグで伝説同士の激突が見られるとはな。……やはり、ボスが目を掛けるだけの素質を持つ少年たちだ」
「シラサギ様、では、この機に乗じて……」
ハリーが何かを画策しようと進言するが、シラサギは冷ややかな視線を向けた。
「余計なことをしてボスの機嫌を損ねるな。今はただ、この極上の戦いを見届けるだけでいい」
フィールドでは、ファイヤーが一羽ばたきでガラルフリーザーと同じ高さまで急上昇し、両者は空中で静かに対峙した。
「まさか君も伝説のポケモンを持っているなんてね。驚いたよ。でも、僕のフリーザーの方が強いはずだ。フリーザー、【凍てつく視線】!!」
「キュオオオッ!」
紫色の邪眼が放たれ、空間そのものを凍らせるような光線が走る。
「ファイヤー、【エアスラッシュ】!!」
「ギュアアアッ!」
ファイヤーが放った真空の刃が光線と衝突し、上空で凄まじい爆発が起こる。
「フリーザー、【原始の力】!」
「ファイヤーもだ、重ねろ!」
両者の放った岩石の奔流が真っ向からぶつかり、相殺される。そのエネルギーの余波により、二匹の周囲に青白いオーラが溢れ出し、能力が底上げされた。
「ファイヤー、さらに【エアスラッシュ】だ!」
無数の風の刃が襲いかかるが、
「フリーザー、軌道を読んで【瞑想】!」
ガラルフリーザーは翼を翻し、羽ばたきでは不可能なエスパーの力による変則的な機動で刃を回避しながら、精神を研ぎ澄ましていく。
「なら、ファイヤー! 動きを封じろ、近づいて放て!」
「近づけさせないように逃げて!」
ファイヤーは移動先を完全に読み切り、先回りを繰り返す。空を舞台にした、息もつかせぬドッグファイトが繰り広げられる。
「今だ、【原始の力】と【エアスラッシュ】の同時攻撃!」
二つの技が融合し、回避不能の範囲で迫る。ガラルフリーザーは【原始の力】を自らのエネルギーで相殺するが、避けきれない【エアスラッシュ】をその身に受ける。
『なんと!? ガラルフリーザー、あえて【エアスラッシュ】を受け止めた!』
『岩タイプの【原始の力】という効果抜群の技を避け、飛行タイプの【エアスラッシュ】を等倍で受ける方を選択したのですね。防御面でも戦術的ですね……』
シアンが冷静に分析する中、ガラルフリーザーは【瞑想】を積み終えたのか、その紫の眼光をより鋭く、冷たく輝かせた。
火花を散らす炎と、凍てつく視線。
勝負は、いよいよ決着の時を迎えようとしていた。