ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ひとしきり泣き、ヒビキがようやく顔を上げると、部屋には温かな空気が流れていた。
「落ち着いたみたいだな」
ジストの言葉に、ヒビキは少しだけ顔を赤らめる。
「ごめんね……期待に応えられなくて」
そう謝るヒビキの頭を、ジストは鼻で笑いながら乱暴に撫でた。
「んなこと気にしてんのかよ? 馬鹿か? 前にも言ったろ、お前らは新人なんだから負けても仕方ないんだよ。相手も伝説を使ってたんだ。ありゃどっちが勝ってもおかしくない、紙一重の勝負だった」
さらにアオバが優しく微笑みかける。
「それにアンタ、本当はファイヤーを使う気なんてなかったんでしょ? 予選から頼り切りだったわけじゃないんだから、とやかく言うつもりなんてないわよ。誇りを持っていいの」
二人の言葉に、ヒビキの胸のつかえが少しずつ取れていく。
「うん……兄貴、マスター道場に行ったら、もっと強くなれるかな?」
「師範もお前を鍛えたいって意欲満々だったからな。先に修行しているダクマと一緒に、とことんしごいてくれるさ」
「そっか……なら取り敢えず、3位に入れるように次の試合も頑張るよ!」
「その粋だ! 俺も昔は3位だったからな。ワタルとかち合っちまって運が悪かったわ。当時のアイツの手持ちをかなり疲弊させたが、結局決勝戦でカンナに勝ってたからな……」
「私は運よくエリカぐらいだったから優勝できたのよね。四天王クラスが揃ってたら、あんなに楽にはいかなかっただろうし」
アオバの言葉に、ジストも苦笑いして肩をすくめた。
「勝負運ってのはそんなもんさ。だからこそ面白い」
その後、ヒビキはポケモンセンターへ向かったが、ファイヤーはあまりの激闘にドクターストップがかかっていた。それはマサトシのガラルフリーザーも同じだった。
しかし、ヒビキは他の手持ちたち――まだ選出していなかったケンタロス、ドサイドン、出番が少なかったスピアーを出して死に物狂いの戦いを繰り広げ、見事に3位の座を掴み取った。
決勝戦も伝説級の激戦となった。ガラルフリーザーを欠いたマサトシも驚異的な強さを見せたが、最後はナツミが紙一重で勝利をもぎ取った。
閉会式を終え、3位のトロフィーを手に会場を後にしようとすると、出口でマサトシが待っていた。
「ヒビキ君」
「呼び捨てでいいよ」
「そう、ならヒビキ。次はどこへ行くの? 近い時期だとジョウト、シンオウ、カロスあたりがリーグを控えているよね」
「俺は、ガラルで修行してからジョウトリーグに挑戦しようと思ってる。マサトシは?」
「僕は、アローラに行ってからシンオウリーグかな」
「あれ、ガラルならガラルリーグは狙わないのか?」
「時期的に推薦状がもらえなくてね。それなら、他の地方のリーグをいくつか挑戦して実力を磨いてから行こうと思ってさ」
「そうなんだ。なら、遠回りになるけど……」
「もし他のリーグでまた出会うことがあれば、その時はまた全力でバトルしよう?」
マサトシの真っ直ぐな瞳に、ヒビキは確かな闘志で応えた。
「勿論だ!」
二人は力強く握手を交わした。
背中合わせに歩き出す二人。世界は広く、挑戦はまだ始まったばかりだ。次に相まみえる時、互いがどれほど強くなっているのか。ヒビキの心に、新たな冒険への火が灯っていた。