ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「此処がヨロイ島なんやね」
「それで、マスター道場って何処にあるんですかね?」
「兄貴曰く、此処はマスタード師範の所有する島だから、建物は道場くらいと聞いてるな」
三人がそんな話をしていると、傍らで聞いていた駅員が声をかけてきた。
「あぁ、マスター道場なら駅を出て、砂浜を歩いていけば見えてくるよ」
その時、一匹のポケモンがふらりと駅に入ってきた。
「……ヤァン……」
「ヤドンやん」
「でも、カントーで見かけるヤドンとは微妙に違いますね」
「お客さん達はカントーから来たのかい? ならコイツは珍しいかもな。コイツはこのヨロイ島の固有種、ガラルヤドンさ。この島に自生しているガラナツの実を食べ続けて変異したそうだよ」
駅員がそう教えてくれる間も、ガラルヤドンは駅の真ん中でふにゃりと動きを止めてしまった。
「リージョンフォームになっても、ヤドンはやっぱりヤドンだな」
「そうですね」
「駅から出るなら、ついでにヤドンも一緒に外へ出してくれないかい?」
そう言われ、ヒビキはリングマを繰り出すと、ヤドンを優しく抱えさせて駅の外へ出た。
駅を出て目に入ったのは、沖合いで豪快に潮を吹く数体のホエルオーの姿だった。
「おぉ! ホエルオーの潮吹きだ! 初めて見た!」
「小さい頃にホエルオーウォッチングに行った以来やね」
潮風を感じながら進むと、教えられた通りに大きな道場が見えてきた。
扉をノックして中に入ると、多くの門下生が激しく修行に励んでいる。
「ヤッハロー! 待ってたよ、ヒビキちん! セナちんもリンちんもよく来たねぇ! ゆっくりしていってちょー!」
ひときわ軽い調子で声をかけてきたのは、道場主であるマスタードだった。
「師範、宜しくお願いします」
「「お願いします!」」
三人が深々と頭を下げたその瞬間、突如として黒い影がヒビキに襲いかかってきた。
鋭い気配を察知したヒビキは、反射的に組手のようにそれを受け流す。一通りの攻防が終わると、その影はそのままヒビキに抱きついた。
「久しぶり! ダクマ!」
「クマッ!」
そのポケモンは、ニドキングやリングマと同様に、幼い頃から家族のように育ってきた相棒、ダクマだった。
「ダクマもヒビキちんのリーグ戦を見ていてね、より修行に熱が入っていたよ」
マスタードが楽しそうに明かす。ヒビキはダクマに向き直り、力強く言った。
「これから、また宜しくな!」
「クマッ!」
二人は固く握手を交わした。
「さてっ、ジストちんから頼まれていることもあるし、3人にはワシちゃんの特別レッスンを受けてもらうよ! これをクリアしたら、ヒビキちんとダクマにはさらに特別な修行を授けようかね」
渡された胴着に着替えると、他の門下生たちからも温かい声が飛ぶ。
ヒビキたちの、新たな地での修行がいよいよ幕を開けた。