ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
三人は、各々別の方向から指定された場所の写真を撮り終え、島を巡り終えて道場に戻ってきた。
「おっかえりー! 3人とも無事にレッスンを終えたみたいね♪ そだ、ヒビキちんにお客さんがいるよん」
マスタードの言葉に顔を上げると、道場の入り口には、ガラル地方の象徴とも言える偉大な背中があった。マントを翻し、自信に満ちた表情を浮かべるその男は、ガラル最強の王者、チャンピオンのダンデであった。
「君がヒビキか! 噂は聞いているぞ。俺はダンデ! 無敵のチャンピオンだ!」
ダンデは爽やかな笑顔で力強く握手を求めてきた。マスタードが事前に説明していたこともあり、道場内でヒビキとジストの関係は周知の事実となっていた。
「ジストとは兄弟弟子の関係でな。俺も彼にはかなり世話になったんだ」
「そうなんですか。兄がお世話になりました」
思わぬ大物との接点にヒビキは少し驚きつつも、その後の会話から、ダンデが特別に模擬戦を引き受けてくれることになった。
「リザードン! 【瓦割り】だ!」「グオオオッ!」
「ドサァ……っ!?」「ドサイドン……!?」
三人はダンデの実力を肌で感じようと必死に食らいつこうとしたが、その強さは次元が違っていた。連携を駆使したはずの攻撃も、ダンデのリザードンには涼しい顔で受け流され、一撃で窮地に追い込まれる。圧倒的な力の差を突きつけられ、三人はただただ息を呑むしかなかった。
「はははっ! 3人とも、まだ新人トレーナーとは言え筋はいい。自信を持って、これからも修行を頑張れよ!」
試合後、ダンデはそれぞれのアドバイスを熱心に伝えてくれた。しかし、去り際に事件は起きた。駅へと続く道とは真逆の方向に、ダンデは迷いなく走り出したのである。相棒のリザードンが慌てて羽ばたき、主人の背中を追いかけて軌道修正を図る姿はどこか滑稽だった。
「何してんや……あのダンデさん?」
リンが呆然と呟くと、マスタードの道場の面々は一斉に目を逸らした。マスタードも苦笑しており門下生が教えてくれた。
「ダンデさんはね、『迷子の神』に愛されていると言われるほどの方向音痴なんだよ。真っ直ぐ行けば良いところでさえ迷うと本人が豪語するくらいだからな」
「そうなんですか?」
「ウソやろ!?」
リンの驚愕に、ヒビキが苦笑交じりに付け加える。
「兄貴もダンデさんがジョウトに来ると知ると、『居なくなる前に捕まえなきゃ』といつもぼやいていたよ」
「そうなんですかぁ……」
最強のチャンピオンの意外すぎる素顔に、三人は絶句するしかなかった。そんな騒動をよそに、ヨロイ島での初日は過ぎていった。
しかし、驚きはそれだけでは終わらなかった。翌日からは、ヒビキの噂を聞きつけたジストと知り合いのガラルのジムリーダーたちが、こぞってヒビキを視察しようと道場へ襲来したのである。道場の門下生たちは、次から次へと現れるトップトレーナーたちの気配に騒然とした。
その状況を踏まえた上で、マスタードは従来のレッスンに加えて、ジムリーダーたちを相手にした超過酷な実戦修行をヒビキたちに課すことにした。