ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
水の塔に足を踏み入れたヒビキとダクマを待っていたのは、次々と立ちはだかる門下生たちとの連戦だった。
「Go! コダック!」
「行ってこい! ダクマ!」
最初の門下生が繰り出したコダックに対し、ヒビキは冷静に指示を飛ばす。
「ダクマ! 【ローキック】!」
スライディングのように足元を払う鋭い蹴りがコダックの体勢を崩す。間髪入れず、
「【雷パンチ】!」
追撃を叩き込み、一気に勝負を決めた。
頂上へ続く階段を登りながら、ヒビキとダクマは連戦を勝ち抜いていく。互いの呼吸は完璧に合わさり、その姿はまるで一つの生命体のように洗練されていった。
そして最上階。そこに待っていたのは、道場の主であるマスタードだった。
「……待ってたよ。最後の相手はワシちゃんだよ。ちょーっと本気出しちゃおっか!」
マスタードが上着と帽子を脱ぎ捨てる。その瞬間、道場の師範からかつての「チャンピオン」の顔へと空気が一変した。
「水も清過ぎれば、魚ポケモンも棲まず。最後の水の極意、ワシちゃん直々に授けよう!」
「行くのだ、ダクマ!」
「勝つぞ、ダクマ!」
互いのダクマが、主の気迫に応えるように吠える。
「さぁ、五感を研ぎ澄ませ! 戦いの中で成長せよ! ダクマ! 【瓦割り】!」
「ダクマ! 【ビルドアップ】からの【思念の頭突き】!」
二人のダクマが正面から激突し、衝撃で塔が震える。
「嘗めるでない! 【燕返し】!」
「【アクロバット】!」
互いに相手の弱点を突く技が交差し、ダメージが蓄積していく。極限の状況、マスタードが勝負をかける。
「ダクマ! 決めるぞ! 【起死回生】!」
だが、ヒビキの瞳に迷いはなかった。
「ダクマ! 【こらえる】!」
全霊の攻撃をギリギリで耐えきり、ヒビキが叫ぶ。
「今だ、カウンターの【思念の頭突き】!」
至近距離から放たれた渾身の一撃がマスタードのダクマを捉え、勢いよく吹き飛ばした。
マスタードは膝をついたダクマを見つめ、大声で笑った。
「若者の成長は、いつも目を見張るばかりだ!」
かつて兄・ジストがこの場所で見せた背中と、ヒビキが今見せている背中が重なる。
「兄とは違う道を進むのもまた一興! さぁ、ソヤツに『水の掛け軸』を見せてやってくれ!」
促されるまま、ダクマが掲げられた掛け軸を見つめる。すると、ダクマの身体が眩い光に包まれ、その姿が大きく変貌を遂げていく。
光が収まると、そこには凛々しく構えるウーラオス(連撃の型)の姿があった。
「ベアクマ!」
「その姿こそウーラオス『連撃』の型! どんな矛をも砕く最強の鎧! 水の極意を極めし姿ぞ!」
ヒビキは、頼もしく進化した相棒を見上げ、誓うように言った。
「次のジョウトリーグでは、お前の力を存分に頼りにするからな!」
「ベアクマッ!」
ウーラオスはヒビキに向かって力強く頷くと、二人で固い拳を突き合わせた。海岸の潮風が塔を駆け抜け、新たな伝説の始まりを祝うように吹き抜けていった。