ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ジラーチが目覚める時を静かに待っていると、ふとバドレックスから問いかけられた。
『所デ、ヒビキ達ハ何故コノ地ニヤッテ来タノダ?』
「ん? あぁ、実は……」
ヒビキは、ウーラオスが進化した夜に見た不思議な夢──雪降る村、二匹の馬、そしてそれを従える影の夢──について語った。
『成ル程。済マンガ、ヨハ関与シテオラン。ソコノマデノ力ハ残ッテイナイノデアル』
「お前の愛馬たちはどうだ?」
『我ガ愛馬達……冥馬レイスポスナラ可能性ガ有ルト思ウガ、モウ一匹ノ愛馬、氷馬ブリザポスハ不可能デアルナ。シカシ、ワザワザソレヲスル道理ガ無イデアル』
「そうか……じゃあ、あれは何だったんだろうな?」
ヒビキとフーディンは顔を見合わせ、不思議そうに首をかしげた。
そうこうしているうちに、目の前の繭が眩い光を放ち始めた。光の中から、星のような姿をした幻のポケモン・ジラーチが目を覚ます。
ジラーチは辺りをキョロキョロと見渡すと、目の前にいるヒビキたちを見つけ、途端に満面の笑みを浮かべた。そして──あろうことか、いきなり強烈なエネルギー弾を放ってきたのだ!
「なんで!?」
必死に攻撃を避けながらヒビキが叫ぶ。
『恐ラク、遊ビ相手ヲ見ツケタノデハナイカ?』
バドレックスが至って冷静に考察を述べる。
「しょうがない、付き合ってやるか……頼むぞ、ファイヤー!」
「ギュアアアッ!」
ヒビキの呼びかけに、ファイヤーが空高く舞い上がり、バトルが始まった。
「【火炎放射】!」
ファイヤーの口から灼熱の炎が放たれる。しかし、ジラーチは素早く【水の波動】を放ち、水と炎が衝突する蒸気でダメージを最小限に抑え込んだ。
「炎のダメージを水で相殺するってことは、炎が弱点なのか……なら! 【エアスラッシュ】!」
ファイヤーの翼から無数の風の刃が襲いかかる。だがジラーチは【コスモパワー】を使い、自身の周囲に宇宙の力を纏って防御力を引き上げていた。かなりの数が命中したにも関わらず、ジラーチはケロッとしている。
(……なるほど。炎を嫌がって、飛行技はまともに受けても平気。それにさっきの【コスモパワー】。間違いない、あいつのタイプは「鋼・エスパー」だ)
ヒビキの冷静な分析が終わるや否や、ジラーチが強力な【10万ボルト】を放ってきた。飛行タイプを持つファイヤーには致命傷になりかねない。
「【羽休め】!」
ヒビキの的確な指示が飛ぶ。ファイヤーが地上に降り立ち、一時的に「飛行タイプ」の性質を消し去ることで、電気技のダメージを大幅に抑え込んだ。
「ここから攻めに転じるぞ! 【日本晴れ】!」
ファイヤーの力で上空の雲が吹き飛び、強烈な日差しが降り注ぐ。対するジラーチも、宇宙の力を集め、大技【メテオビーム】のチャージを始めた。
「ヤバいな、アレは……。ファイヤー! 【燃え尽きる】からの【フレアドライブ】だ!!」
「ギュオオオオオッ!!」
晴れの天候で極限まで高まった炎のエネルギーを全て解き放つ【燃え尽きる】。さらに、全身にその業火を纏って突撃する【フレアドライブ】。二つの大技を合わせた渾身の一撃が、ジラーチの放つ極太の星の光【メテオビーム】と真っ向から激突した。
ドゴォォォォンッ!!!
凄まじい衝撃波と爆煙が雪原を包み込む。
やがて煙が晴れると、そこには息を弾ませながらも戦意を全く失っていないファイヤーと、楽しそうに満足げな笑顔を浮かべるジラーチの姿があった。
「ジラーチ! 満足したなら、頼みたい事がある!」
ヒビキが大声で呼びかけると、ジラーチはすうっと空を飛び、ヒビキの目の前に浮かび上がった。そのつぶらな瞳が、「なあに?」と尋ねているようだ。
「このバドレックスの、本来の力を取り戻して欲しい!」
ヒビキが真っ直ぐに見つめてそう告げると、ジラーチは嬉しそうにこくりと頷いた。
次の瞬間、ジラーチの体から溢れ出した神秘的な光が、バドレックスの身体を優しく包み込んでいく。
『おおっ……!!』
バドレックスの声が響く。それは先ほどまでのような、フーディンのサイコパワーを介した不完全なものではない。ヒビキの頭の中に、直接、そしてはっきりと力強い声が響き渡った。
『完全とは言えないが……かなり力が戻ったのである!』
流暢なテレパシーを放つバドレックスの姿は、以前よりも威厳に満ち、かつての「豊穣の王」としての輝きを取り戻しつつあった。