ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ニビシティを離れ、お月見山へと続く荒野の道を歩きながら、ヒビキはふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、サトシはどうしたんだ?」
「ポケモンセンターで別れてからそれっきりやね」
リンが肩をすくめると、ヒビキは遠い目をして北の空を見上げた。
「ってことは……あいつ、今頃トキワの森で盛大に迷子になってるな」
「アハハ……そうかもしれませんねぇ」
「相変わらずねぇ、サトシ君は」
幼馴染たちの苦笑いに、アオバが楽しそうに追従する。
「ところで姉ちゃん、姉ちゃんがついてるなら俺、要らなくないか?」
「何か言ったかしら?」
アオバが口答えを許さない「極上の笑顔」を向けると、ヒビキは反射的に背筋を伸ばし、咳払いで誤魔化した。
「……ところで、二人の今の手持ちはどんな感じなんだ?」
「ウチの手持ちはこんな感じや!」
リンが繰り出したのは、ヒトカゲ、バタフリー、マダツボミの3匹。
「私はこの子たちですぅ!」
セナが繰り出したのは、フシギダネ、ポッポ、ニドラン♀の3匹だった。
「へぇー、二人ともバランスが良いわね。アンタは?」
「俺は……コイツらだ」
ヒビキがボールを放つと、ニドリーノ、ヒメグマ、ナゾノクサ、親分スピアー、そして両肩にコッペとケーキ(ピカチュウ兄弟)が揃う。
「これにドードーとオニドリルがいる」
「アンタ、トキワの森の主を捕まえたのね。やるじゃない」
アオバが感心したようにスピアーを眺めると、周囲の地形を見渡し、指揮を執り始めた。
「確かこの辺りはサンドが生息していたはずよ。リンちゃんはサンドとかが似合いそうね。セナちゃんは……プリンなんてどうかしら?」
「ええやん! アオバ姉!」
「わかりましたぁ、アオバさん」
「そんじゃスピアー、周囲を偵察してきてくれ」
「スピッ!」
主の意を汲んだ親分スピアーが鋭い羽音と共に飛び立ち、程なくしてターゲットを発見。その案内に従うと、そこには丸まったまま動かないサンドがいた。
「今ならバトルしなくても捕まえられそうね。リンちゃん、これ使いなさいな」
アオバが差し出したのは、青と黄色のラインが走るクイックボール。
「ありがとうな、アオバ姉!」
リンが投げたボールは、抵抗を許さず一発でサンドを吸い込んだ。
「やったわぁ! サンド、ゲットや!」
「おめでとう。さて、次は……」
「あっ、姉ちゃん! セナ! あそこ!」
ヒビキが指差す先、大きな石の上でプリンが優雅に歌を歌っていた。
「なるほど、だからサンドが丸まって寝ていたのね」
「どうする? 近づいたら俺たちまで寝ちゃうぞ」
「ううぅ……眠いですぅ~……」
今にも膝をつきそうなセナ。アオバは即座にセナの手にもクイックボールを握らせる。
「セナちゃん、寝たらダメよ! ほら、頑張って投げて!」
「え~い!」
「やりましたぁ~……! グ~……」
睡魔と戦いながら投げたボールがプリンを捕らえた瞬間、セナはその場に崩れ落ち、幸せそうな寝息を立て始めた。
「寝るん早すぎやろ!」
リンのツッコミが響く中、不意に遠くから「地響き」が轟いた。
「なんだ? バトルか?」
「見に行ってみよか!」
アオバの命令によりセナをヒビキが背負い、地響きの元へと急ぐ。
そこで彼らが目にしたのは、岩場を粉砕しながら激突する、巨大な体躯の『親分サイホーン』と、猛烈な連撃を繰り出す『親分マンキー』の死闘だった。