ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
突如、研究所の扉が勢いよく開いた。視線を向けると、そこには通常よりも一回り大きな、堂々たる体躯のワニノコが立っていた。
「おや、珍しい。君が興味を示すなんて」
「そうなんですか?」
ウツギ博士の言葉に、ハクトが尋ねる。
「この子は、初心者用ポケモンを育てている施設で生まれた親分個体なんだ。手違いでこちらに送られてきてね。あまりの気性に、新人トレーナーでは扱いきれないだろうと、ここで過ごさせていたんだよ」
ウツギ博士の説明が終わるやいなや、ワニノコはヒビキをじっと見据え、手首をクイッと動かして「かかってこい」と挑発した。
「ワニャッ!」
「バトルしたいのか? いいぞ」
ヒビキが承諾して研究所の外へ出ると、彼は迷わずヨーギラスを繰り出した。
「んじゃ、行ってこい! ヨーギラス!」
「ヨギッ!」
「……悪いが、レベルが近いのはコイツくらいなんだよ」
訝しげなワニノコに対し、ヒビキは淡々と告げる。
「ワニッ!」
ワニノコは先手必勝とばかりに【アクアジェット】を放つ。しかし、ヒビキは冷静そのものだった。
「ヨーギラス、【しっぺがえし】!」
「ヨギッ!」
後攻で放たれた一撃は強烈なカウンターとなり、ワニノコを吹き飛ばす。さらに、
「止めだ、【ロックブラスト】!」
放たれた無数の岩の弾丸が全弾命中し、親分ワニノコはついに戦闘不能となった。
バトル後、回復を終えたワニノコに向かってヒビキは問いかける。
「お前さぁ、俺と一緒に行かないか?」
ワニノコは迷いなく頷いた。ヒビキがウツギ博士の了承を得てボールを受け取ると、その頼もしい相棒は正式にヒビキの手持ちとなった。
満足げに研究所の外へ出た三人の耳に、聞き覚えのある声が届いた。
「待ってましたよ!」
辺りを見回すと、上空に影が揺れ、勢いよく人影が舞い降りた。
「とう!」
着地するやいなや、ビシッと指を突きつけるキメポーズ。
「お久しぶりですね、ヒビキ選手! 私とバトルしてください!」
そう宣言したものの、着地点はヒビキたちから大きくズレていた。微妙な空気が流れる中、少女は咳払いをして、もう一度ポーズを決める。
「……ヒビキ選手! 私とバトルしてください!」
「君は、セキエイリーグを優勝したナツミ選手」
ハクトがその正体に気づき、驚きの声を上げる。
「あの優勝は、ほとんど運勝ちのようなものです! だから、あのあとマサトシ選手とも、ガラルフリーザーとも戦わせていただきました。次は、ヒビキ選手のファイヤーと戦わせてもらいたくて来たんです!」
ナツミの熱意に対し、ヒビキは困ったように頭をかいた。
「悪いけど、ファイヤーは普段放し飼いみたいな状態で、今オーキド博士の研究所には居ないんだ」
「そんな……っ!?」
あまりの落胆ぶりに膝をつくナツミを見て、ヒビキは思わずフォローを入れる。
「一応、ファイヤーと同レベルに強いポケモンがいるから、ソイツでもいいかな?」
その言葉に、ナツミはガバッと起き上がった。
「是非に!」
ヒビキは早速オーキド博士に連絡を入れ、ブリザポスを送ってもらう手配をした。
「行ってこい! ブリザポス!」
「バシロォス!」
大地を震わせる威圧感と共に、伝説の馬が姿を現す。
「コイツはブリザポス。タイプは氷だ」
ヒビキの紹介に、ナツミは目を輝かせて応戦した。
「かなりの強さですね。お願いいたします! シャンデラ!」
「シャン!」
二人の熱い視線が交差する。ジョウト地方での新たな戦いの幕が、今切って落とされた。