ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「よく育てられている。行け! ドードリオ!」
「「「ドドードッ!」」」
ハヤトが次に出したのは、三つの頭で威圧感を放つドードリオだった。フィールドに降り立った姿をひと目見て、ヒビキは心の中で値踏みする。
(強さは、俺のドードリオよりちょい上かな)
冷静に相手の実力を分析すると、すかさず指示を飛ばした。
「ワニノコ! 【クイックターン】!」
ワニノコが勢いよく飛び出して鋭い一撃を狙うが、ドードリオは軽やかなフットワークでそれをヒラリと回避する。しかし、ヒビキの狙いは最初から攻撃そのものだけではない。そのままワニノコを素早く手元へと引き戻し、新たなポケモンへとスイッチした。
「行ってこい! ポリゴンZ!」
「リリリ!」
赤い奇妙な体躯を揺らしながら、ポリゴンZが不気味に現れる。
対するハヤトは、相棒であるドードリオを見据えて熱を込めた。
「ドードリオ! お前には俺の夢がつまっている! 跳べ!」
その言葉に応えるように、ドードリオは地を蹴った。それは通常のドードリオの常識を覆す跳躍であり、まるで他の飛行ポケモンが羽ばたくかのように、遥かなる高高度へと一瞬で跳ね上がったのだ。
「そのまま【跳び蹴り】!」
上空の頂点から、凄まじい重力を纏って急降下していくドードリオ。あまりの速度と質量に、ヒビキは眉をひそめた。
「上から来るか……! 【騒ぐ】で落とせ!」
ポリゴンZが口を開き、周囲を揺るがすほどの爆音を放って迎撃を試みる。しかし、ハヤトは少しも慌てなかった。
「こちらも【騒ぐ】で相殺しろ!」
ドードリオの三つの頭がそれぞれ一斉に大声を張り上げ、ポリゴンZの放った爆音の波を真っ向から掻き消していく。
「マジかよ!? 避けろ、ポリゴンZ!」
爆音が相殺された隙を突き、辛うじて直撃を免れたものの、着地したドードリオの脚が地面に叩きつけられた衝撃は凄まじかった。アリーナの床に、まるで蜘蛛の巣のように深いひび割れが四方八方に走る。
(あの高高度からの落下で、【跳び蹴り】の威力を跳ね上げているのか……。あんなの喰らったら、下手な防御特化のポケモンでも一撃で沈むぞ)
背筋が凍るような威力を目の当たりにしつつも、ヒビキは頭をフル回転させて反撃の糸口を探る。
「【騒ぐ】を続けながら、【放電】を放て!」
ポリゴンZの身体から、音波と黄色い電撃が同時に渦巻くように迸る。
「させない! 左右の頭は【騒ぐ】で音波を相殺、真ん中は【ドリルライナー】で突貫しろ!」
ハヤトの指示に従い、ドードリオは地上を猛烈な勢いで駆け抜ける。左右の頭が叫び声を上げて電撃と音波の一部を相殺し、防ぎきれなかったダメージを身体に受けながらも、真ん中の頭を鋭いドリル状に変形させて突進を敢行した。
凄まじい突撃がポリゴンZを捉え、たまらずデジタルな巨体が大きく吹き飛ばされる。
「流石に、三つの頭をフルに使わないと防げないか……!」
ハヤトが悔しそうな、しかし確かな手応えを感じる声を漏らすのを聞き、ヒビキは深く息を吐き出してポリゴンZに告げた。
「ここからが反撃だ。【悪巧み】で特攻を積め!」
不気味な光がポリゴンZの頭脳を駆け巡り、その知性が禍々しいまでの赤いオーラへと変換されていく。特攻が限界まで跳ね上がったのを確認し、ハヤトが再び勝負に出た。
「もう一度跳ぶんだ、ドードリオ!」
先ほどと同じように、再び空高くへと飛び立とうとドードリオが身構えたその瞬間、ヒビキの冷徹な指令が響いた。
「今だ、ポリゴンZ! 【破壊光線】!」
極限まで高められた特攻から放たれる、全てを焼き尽くすような最大火力の光線が、空へと向かって一直線に叩き込まれた。
「させるか! 【ギガインパクト】!」
ドードリオは上空から全身に凄まじいエネルギーを纏い、光線を正面から押し返そうと急降下で突っ込む。しかし、【悪巧み】で何段階も引き上げられた特攻の前には、その強引な突破も意味をなさなかった。
強烈なエネルギーの塊はギガインパクトの壁を易々と貫通し、ドードリオの巨体を完全に飲み込んでいく。
ドオオッ! と爆発音が響き渡り、光が収まったとき、そこには力なく倒れ込むドードリオの姿があった。
「ドードリオ、戦闘不能! よって勝者、マサラタウンのヒビキ!」
審判の凛とした声がアリーナに響き渡り、長かった激闘の終わりにピリオドが打たれた。
「はぁ……何とか勝てたか。かなりギリギリだったな……」
ヒビキが額の汗を拭いながら安堵の息をもらすと、ハヤトは手元のドードリオを優しくボールに戻し、清々しい笑顔で歩み寄ってきた。
「お見事だったよ。勝利の証として、ウイングバッジを渡そう。おめでとう!」
差し出されたバッジを受け取り、一礼したヒビキは、ふと笑みを浮かべて空を見上げた。
「ありがとうございます。……さて、それでは約束のファイヤーとのバトルを始めましょうか!」
「是非に! と、その前に……互いの全力をぶつけ合うためにも、手持ちの回復をさせてからにしよう!」
万全の準備を整えるため、お互いにポケモンセンターの医療ポッドで手持ちを全快させると、二人は再び気球のゴンドラへと乗り込んだ。
上空の風が強まる中、ハヤトはまっすぐに前を見据え、手元のモンスターボールを高く放り投げる。
「伝説の鳥ポケモン・ファイヤー……! その圧倒的な力に、俺達の全てで挑ませてもらう! 行け、エアームド!」
「エアームッ!」
金属質の翼を広げた鋼の鳥が、頼もしい鳴き声をあげる。それに応えるように、ヒビキは炎をまとう伝説の巨鳥を呼び出した。
「その強さ、余すところなく見せろ、ファイヤー!」
「ギュアアアッ!」
燃え盛る翼が空を赤く染め上げ、キキョウシティの上空で、伝説と鋼が激突する頂上決戦の火蓋が切って落とされた。