ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
ヒワダタウンを目指して旅を続ける道中、ヒビキは新たな手持ちの補強について考えていた。
「どうしよっかな……優先したいのは、炎と電気だなぁ。でも炎タイプはこの辺にはいないし。しょうがない、電気タイプを探してみるか。他にも悪、フェアリー、鋼タイプは一匹もいないし、虫もスピアーだけだし……そういやゴーストもコノヨザルやレイスポスしかいねぇや。毒やエスパーは、ヤドンが進化すればいいか」
独り言を呟きながら草むらに目を凝らしていると、ふと一匹のメリープが目にとまった。
「おっ、メリープ! 捕まえとこ!」
早速ヨーギラスを繰り出すと、【ロックブラスト】で手加減しつつ戦闘不能に追い込み、モンスターボールを投げて見事にゲットする。さらにその足でハネッコを捕らえ、上空を飛んでいたヤンヤンマを発見するやいなや、すぐさま追いかけて捕獲に成功した。
そうして旅を続けるうち、共に汗を流してきたワニノコとヨーギラスが眩い光に包まれ、それぞれアリゲイツとサナギラスへと進化を遂げた。
「よし、進化したな……オンバットやヤドンはもう少しかな?」
成長した手持ちの頼もしさに目を細めつつ、ヒビキはアリゲイツ、サナギラス、そしてプテラをオーキド博士の研究所へと送り、代わりに先ほど捕まえたメリープ、ハネッコ、ヤンヤンマを手元に転送してもらった。
「ほんじゃ、ウーラオス。新入りの相手を頼む!」
「ベアクマ……!」
ウーラオスが早速新入りたちの特訓に付き合っていると、突如として草むらから一匹のハッサムが飛び出し、鋭い爪で襲いかかってきた。
「ウーラオス!【水流連打】!」
ヒビキが瞬時に指示を飛ばす。
ウーラオスは凄まじいスピードで間合いを詰めると、清流の如き激しい水流を纏った拳の連撃を、ハッサムの急所へ的確に叩き込んだ。一撃で戦闘不能になり、バタリと倒れ込むハッサム。
「お見事!」
戦闘が終わるやいなや、物陰からハッサムのトレーナーと思しき男が姿を現した。
「いきなりの襲撃、申し訳ない! 実は、君に頼みたいことがあるのだ」
名乗ったその男――ハッサムのトレーナーであるマサムネから事情を聞くと、どうやら彼の息子であるシンゴが、データを重視しすぎるあまりポケモンバトルに対する「熱」を失ってしまっているという。
「まぁ……いいですけど」
「助かる!」
特に断る理由がないからと了承すると、ヒビキはマサムネに案内されて彼の道場へと向かった。
道場に足を踏み入れると、数多くの門下生たちが気迫を込めて修行に励んでおり、マサムネの帰還に気づくやいなや、一糸乱れぬ動きで頭を下げた。
「「「押忍! 師範、おかえりなさい!!」」」
「ただいま。シンゴ! お前への挑戦者を連れて来たぞ!」
マサムネがパソコンに向かっているヒビキよりも年上の少年に声をかける。
促されて顔を上げたシンゴは、ちらりとヒビキを一瞥すると、冷ややかな笑みを浮かべた。
「へぇ……セキエイリーグ三位のヒビキか。随分なのを連れてきたね」
興味を失ったかのようにすぐパソコンへ視線を戻し、独り言のように毒を吐く。
「この五年のセキエイリーグに出た優秀なトレーナーのデータを見たけどさ、マサトシもそうだし、お互い伝説のポケモンを持っているのに優勝できなかったんだからお察しの実力だね」
皮肉とも取れる言葉に、しかしヒビキは気負う様子もなく、あっけらかんと言い放った。
「そりゃそうだろ。多分向こうもだけど、伝説のポケモンは本当は出したくなかったしな。それしか目に入らない奴が多いからってのもあるし」
ヒビキの予想外の返答にわずかに目を丸くしたものの、シンゴはすぐに調べものを切り上げると、スッと立ち上がった。
「……情報も集まった。じゃあ、バトルを始めようか」
お互いがバトルフィールドに立つと、シンゴは「ブレード」というニックネームのハッサムを出した。対してヒビキは、
「行ってこい! ウーラオス!」
「ベアクマ!」
と、頼もしい相棒をフィールドへと送り出す。
「なっ!? そんなポケモンを持っているなんてデータに無いぞ!?」
予想外の展開に狼狽するシンゴに、ヒビキは飄々と告げた。
「コイツはウーラオス連撃の型。セキエイリーグ挑戦中に修行に出ていたからな。一応俺の手持ちの中では古株だ。同じポケモンのタイプ別をジスト兄貴が時折、公式戦で出しているから調べてたら?」
言われるがまま、すぐ様端末で情報を集めるシンゴ。
「ウーラオス……マスター道場の免許皆伝者に与えられるポケモン。2種類いて、連撃の型は格闘に水が複合される……。データは集まった! ブレード、【ダブルウィング】!」
相性を突いた効果抜群の技を指示するシンゴに対し、ヒビキは微動だにせず冷静に命じる。
「【水流連打】で受け流せ」
ウーラオスは両腕に水を纏わせると、優しくいなすような手つきで【ダブルウィング】の軌道を逸らし、攻撃を綺麗に無効化してみせた。
「なっ!? なら、今のを再入力して……」
「遅い、【冷や水】」
纏っていた水を勢いよく浴びせかけられ、ブレードはダメージと同時に攻撃力を下げられてしまう。
「特殊技!? ウーラオスは攻撃が高い筈じゃ……!」
「能力を下げる技があるなら使うだろ?」
当たり前の顔をして言い放つヒビキの姿に、シンゴはハッとする。それを境に、彼の視線はパソコンの画面ではなく、目の前のブレードへと向けられるようになっていった。
「【剣の舞】!」
下がった攻撃力を何とか戻し、直様【ダブルウィング】を指示するシンゴ。
「受け流せ」
再度受け流されたものの、ウーラオスは少し渋い顔を見せる。
「よし! 当たった!」
シンゴが嬉しそうな声をあげるのを聞き、ヒビキはふっと笑った。
「漸く盤面を見始めたじゃん。データは大事だけど、そんなものは直ぐに変わり意味を成さなくなる。必要なのはそれにどう対処するかだ! これは、マナシロジムのクスノキさんからの受け売りだけどな」
その言葉を合図にするかのように、ウーラオスは一転して攻めの姿勢へと入る。
「動きは慣れたな? 決めろ! 【水流連打】!」
「ウウウララァァァッ!」
受け流し時とは比較にならないほど激しい連打がブレードを捉え、ついに戦闘不能へと追い込んだ。
バタリと倒れ込んだブレードの元へ、シンゴは慌てて駆け寄る。
「ありがとう。すまない、僕の力不足だ」
そう愛機を優しく労ったあと、シンゴはヒビキの方をまっすぐに見据えた。その瞳には、かつての冷ややかさではなく、確かな熱意が灯っている。
「自分に何が足りないのかわかった気がする」
その様子を見守っていたマサムネが、満足そうに声を張り上げる。
「よく気付いた! シンゴ!」
「「「若!!」」」
マサムネや門下生たちがシンゴの回りに集まり、温かな祝福の声を浴びせるのだった。
一連のことが落ち着いたあと、ヒビキは報酬として周囲のポケモンの生息情報を貰い、その情報を元に探索し、念願の悪と炎タイプのポケモンであるデルビルを捕まえることができた。