ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
バグバッジを手に入れてヒワダジムを出ると、明日には出発しようとポケモンセンターへ戻る途中、買い物袋から物を落としてしまったのか、それを拾い集めている少女の姿が目に入った。
「これ、君のか?」
足元に転がってきた物を拾い上げ、ヒビキが差し出す。
「おおきに!」
受け取った少女は、パッと明るい笑顔でお礼をした。
「ウチ、チエ言うんや! せっかくやからウチに来てぇな」
そう言われ、誘われるまま自宅についていくと、そこはなんとボール作りで有名な職人・ガンテツの家だった。
「遅かったな、チエ。そちらさんは?」
作業の手を止めて顔を上げたガンテツに、チエがことの経緯を説明する。事情を飲み込んだガンテツは、ふむと頷いてからヒビキに向き直った。
「おおきにな。所でヒビキ君は、ジストの知り合いかな?」
「親戚ですけど……」
セキエイリーグ3位という実績を残したとはいえ、まだジストと兄弟であることを公表するつもりはなかったため、ヒビキは当たり障りのないように「親戚」と名乗る。
「さよか! ジストの親戚なら実力もあろうから、もし良かったらボールを作ちゃる」
ガンテツは豪快に笑いながら、そう嬉しい提案をしてくれた。
「良いんですか?」
「かまへんよ! 材料となるぼんぐりは持ってるか?」
たまたま旅先でドリンクの材料用にと集めていたおかげで、ヒビキは全種類のぼんぐりを持ち合わせていた。それをサッと差し出すと、ガンテツは目を丸くしたあと、感心したように頷く。
「なら、好きなのを一つ選んでくれへんか?」
「う~ん……なら」
いくつか並んだぼんぐりを見比べ、ヒビキが悩んだ末に選んだのは黒ぼんぐりだった。
「よっしゃ! 早速始めるわ! 明日には出来てるさかい、取りに来てな」
そう言って気合を入れるガンテツに丁寧にお礼を言い、家を出たヒビキは、今度こそポケモンセンターへと向かうのだった。
翌日になり、手持ちの調整と整理を済ませてからガンテツの家へ向かうと、家にはチエの姿だけがあった。
「じいちゃんは用事があるさかい出掛けたから、ウチが預かっとるの。ホイ、これがヘビーボールや。体重の重いポケモンが捕まえやすくなってるで!」
チエから手渡されたヘビーボールを受け取り、お礼を伝えると、ヒビキは次のジムがあるコガネシティを目指して出発した。
道中、どこか町全体がいつもより騒がしい雰囲気を纏っているのに気づいたが、特に気に留めることもなく足を進め、やがてウバメの森へと足を踏み入れる。
「森の中だから、少し涼しいなぁ」
木漏れ日が差し込む緑豊かな道で心地よい森林浴を楽しみながら、ヒビキは順調に森の奥を進んでいった。特に珍しいポケモンとの出会いはなかったものの、何事もなく無事にウバメの森を抜けることができたのだった。