ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
様々なトラブルや事件を経て、ようやく落ち着きを取り戻したヒビキは、エンジュジムへの挑戦を決意した。
ジムリーダーの部屋に入ると、マツバが穏やかな笑みを浮かべて出迎える。
「やぁ、待ってたよ。早速始めようか」
互いにバトルフィールドへと歩みを進め、手際よくポジションにつく。
「頼むぞ! ゲンガー!」
「ゲン!」
「行ってこい! バドレックス!」
「である!」
マツバが繰り出したのは相棒のゲンガー、そしてヒビキが送り出したのは、事前にマツバから頼まれていた黒馬の姿をしたバドレックスだった。
「初手から伝説のポケモンを出してくれたか!」
「ふふ、マツバさんが気になってそうでしたからね。あ、ちなみに今のバドレックスのタイプは、エスパー・ゴーストタイプになっています。ちなみにバドレックス単体だと草・エスパーなんですけどね」
ヒビキがそう軽やかに説明を入れると、審判を買って出てくれたシアンが大きく手を振り、バトル開始を宣言した。
「バトルスタート!」
「バドレックス! 【挑発】!」
「ハァ!」
「早いな……! ゲンガー、【ゴーストダイブ】!」
変化技を封じられたゲンガーは、素早く自身の影へと身を潜める。
「バドレックス、足を止めずに動きまくって撹乱しろ!」
ヒビキの指示を受け、黒馬の足音がフィールドを駆け抜ける。影のどこから飛び出してくるか分からない緊張感が漂う中、
「今だ!」
マツバの掛け声とともにゲンガーが影から急襲する。しかし、バドレックスとレイスポスは微動だにせずその動きを捉え、瞬時に大きく距離を取って回避した。
「見事な連携だね」
「一度は、力を喪い愛馬達に愛想を尽かされたが、また心を通わせ一心同体なったのである。これくらい出来て当然である!」
「バクロォス!」
感心するマツバに対し、バドレックスとレイスポスは誇らしげに胸を張る。
「それでは、反撃させてもらうである。受けてみよ、【アストラルビット】!」
バドレックスの周囲に無数の禍々しい小さな霊体が現れ、一斉にゲンガーへと降り注ぐ。ゲンガーは再び【ゴーストダイブ】で逃れようとしたが、あまりの速度に間に合わず、直撃を受けたゲンガーは一撃で戦闘不能となった。
「ゲンガー!」
マツバがボールを戻しながら苦笑する。
「いやはや、流石の強さだね。流石に通常のジム戦用に育成したポケモンでは、相手にならないようだ……。申し訳ないが、ここからは本気の手持ちで相手をさせてもらうよ! 頼むぞ、ムウマージ!」
「ムウマ!」
マツバが次に出したのは、妖しい霊気を纏うムウマージだった。その瞬間、観客席で観戦していたジストが、わずかに眉をひそめる。
「……何だ? バドレックス達の放つ圧が、さっきより少し強くなってないか?」
「あぁ、それ今のバドレックスの特性さ」
ヒビキが振り返って説明する。
「今の黒馬バドレックスの特性は、相手の行動を制限する『きんちょうかん』と、相手を倒すと特攻が一段階上がる『じしんかじょう』の性質が合わさったようなものなんだ。マスタード師範はこれを『人馬一体』って命名してたっけ」
「成る程な。それなら、あえて最初に黒馬を投入したのも納得だ」
ヒビキの解説に、ジストは深く頷く。
「ちなみに補足しておくと、ブリザポスに乗った方の『白馬バドレックス』は氷・エスパータイプになって、倒したときは特攻じゃなくて攻撃が上がる仕様になってるよ」
「ほう……なら白馬の方は、物理特化型ってわけか」
「そこまで限定しては言わないけどね」
「そりゃそうか」
兄弟特有の軽妙なやり取りを挟みつつ、ヒビキとマツバは再び鋭い視線をぶつけ合い、熱を帯びたジム戦を再開させるのだった。