ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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エンジュの森の異邦人

??? 

 土砂降りの雨を切り裂くように、豪華な衣装を纏った姫のような少女と、それに仕える従者のような少女が駆け抜けていた。二人の前を走るのは、護衛と思われる鎧姿の男と、軽装に身を包んだもう一人の男だ。

 「この土砂降りのお陰で向こうも追跡は困難のはず……! もうもう少しで川が見える! そこまで行けば奴らも手出しはできまい! もう少しの辛抱だ!」

「ハァ、ハァ……! はいっ! でも、よろしかったのですか? 今回の戦は、貴方様の国は関係ありません。いくら同盟国とはいえ、あの大国を相手にするなんて……」

「なに、構わん! 俺は親父にも伝えてある! それに、跡継ぎには兄上が決まっている。お前たちの方が大事だ!」

 鎧姿の男が力強く言い切ると、並走していた軽装の男もそれに続く。

 「それに、それなりの規模であった姫様たちの国に、あの大国がなぜ突如として戦を仕掛けたのか、その理由を探ることも殿から命じられていましたので」

「それで、何か分かったの!?」

 従者の少女が息を切らしながら問い質す。

「ああ。どうやらあの国にかなりの量の鉱脈があるらしい。奴らの狙いはそれを強奪することのようだ」

「なるほど……、ならばあの国が戦を仕掛けるだけの価値はあるというわけか」

 緊迫した会話の最中、背後の闇を裂いて何かが猛烈な勢いで飛来した。

 「チィッ! やれ!」

 鎧姿の男の指示に呼応し、瞬時に現れた一匹のポケモンが飛来した凶弾を叩き落とす。

 「追いつかれたようだな……旦那! ここは俺が食い止める!」

 軽装の男が叫ぶと同時に、その傍らに頼もしい相棒のポケモンが地を蹴って立ちはだかった。

「いや、今は逃げることが最優先だ! 幸い、姫たちを乗せられる!」

 男が叫ぶと、従うポケモンが大きく頷き、二人の少女をその背中へと乗せてさらに速度を上げた。

 しかしその時、轟音とともに天から強烈な雷が目の前の岩山へと直撃した。衝撃で山全体が激しく揺らぎ、まるで崩壊するかのように空間の歪みから凄まじい光と魔力が溢れ出す。

 「なんだ……!? あの魔獣は……!」

「姫様──っ!」

 降り注ぐ無数の落石から守るように、男たちとポケモンが少女たちに覆いかぶさった瞬間、眩い光が周囲の景色を完全に飲み込んだ。四人とポケモンたちの意識は、その白濁した光の中でプツリと途切れた──。

 時を同じくして、現代のジョウト地方。

 エンジュジムでの激闘を終え、ジムバッチを受け取ったヒビキは、ほっと一息つきながら仲間たちに向き直った。

 「このままみんなで飯でも食いに行かないか?」

 シアンの気さくな提案に、マツバやジストも笑顔で頷く。

「いいね。僕の行きつけの店に案内するよ」

「その前に、ポケモンセンターでマツバの手持ちとバドレックス達をしっかり回復させてやらないとな」

「バドレックスたちもお疲れ様」

「久しぶりに全身の血が騒ぐいい戦いであったな! そう思うであろう、レイスポス?」

「バクロォス!」

 和やかな雰囲気に包まれながら歩き出そうとしたその時、バドレックスがふと動きを止め、遠くの森の奥へと鋭い視線を向けた。

 「これは……! ヒビキ! 皆もついてきてほしい!」

 バドレックスのただならぬ気配に、レイスポスもすでに走り出している。

「何かあったのか……?」

「分からない、でも行こう!」

 嫌な予感を覚えつつも後を追うと、彼らがたどり着いたのは町の外れに広がる深い森の中だった。木々の隙間に目を凝らすと、そこには見知らぬ身なりの男女が倒れ込んでいる。その傍らには、巨大な石斧のような腕を持つ見慣れない虫ポケモンと、不気味かつ美しい白い姿のゾロアークらしきポケモン、そして小さな妖精のようなポケモンが力なく倒れていたのだった。

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