ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
打ち合わせを終えた翌日。ヒビキは次のジムがあるアサギシティへと向かうことにした。
「おや? お前さん、どこか行くのかい?」
声をかけてきたのはダンだった。
「俺、まだ旅の途中なんですよ。そろそろ次の所に行かないといけないんで」
「確かにヒビキ君は、そろそろ次に向かわないとだめだね」
「まだ開催まで時間があるとはいえ、長居しない方がいいからな」
見送りに来ていたマツバ、ジスト、シアンが口々に言葉を継ぐ。
「済まんなヒビキ、色々と手伝わせてしまって」
「気にしないでよ、兄貴。んじゃ、兄貴、マツバさん、シアン兄、行ってきます!」
元気よく挨拶をして旅立とうとすると、19歳のダンが不敵な笑みを浮かべてとある頼み事をしてきた。
「なぁ、その旅に俺もついていってもいいか?」
「え?」
予想外の申し出に、ヒビキは思わず間抜けな声を漏らす。
「ここには若や姫様を狙うような連中はいないだろうし、そろそろ暇をもらおうと思っていたんだ。お前さんが良ければ頼むわ」
「ヒビキ殿、そなたが良ければ俺からも頼む」
いつの間にか背後に現れていた18歳のソウゴまでそう言って頭を下げる。この時代への永住を決めた彼なりの、新たな一歩なのだろう。
「まぁ、いいですけど……」
「ありがてぇ! よろしくな、ヒビキ!」
そうしてダンが同行することになり、荷物の最終確認のために一度戻ると、今度は14歳になったばかりのツキノとエイがやってきた。
「ヒビキさん。私とソウゴ様はマサラタウンという所でしばらくお世話になり、この時代の常識などを学ぼうと思います。あなた様の旅路が安全であること、祈っております」
深々と頭を下げたツキノは、続けて真剣なまなざしを向けてきた。
「つきましては、エイを旅に同行させていただけないでしょうか?」
「はい!?」
「ちょっ、ツキノ様っ! なんで勝手にそんな大事なことを……!」
慌てた様子でツキノの袖を引っ張ったのはエイだった。しかし、すぐに気を取り直すようにきゅっと唇を引き結び、年相応のプライドと強い瞳でヒビキをキッと睨みつける。
「……た、たしかにボクだって、ツキノ様やソウゴ様の足手まといになりたくないし、この時代の知識も力も早く身につけたいとは思ってるわよ! でも、だからって年下のヒビキに頼るなんて……っ!」
「あ、れ? 今、呼び捨て……?」
ヒビキが思わず首を傾げると、エイはカッと顔を赤らめ、気まずそうに視線をそらした。
「い、いいでしょ別に! これから一緒に旅するんだから、いつまでも『さん』付けなんて堅苦しいじゃない! ……って、話を逸らさないでよ!」
ぷいとそっぽを向いて腕を組むエイに、ツキノは困ったような、しかし愛おしそうな笑みを浮かべる。
「エイはこう言っておりますが、根は真面目ですし、何より色々なことを吸収したいという向上心が強いのです。魔獣……いえ,ポケモンをまだ持っていないエイ一人では危ういですし、どうかお願いいたします」
ツキノのため、そして自身の成長のため。背伸びをしたいお年頃のまっすぐな決意を感じ取り、ヒビキは小さく笑って頷いた。
「いいですよ。よろしくな、エイ」
「っ……! 別に、よろしく頼まれるいわれはないわよ。……でも、足手まといにならないように、しっかりアンタの背中から学ばせてもらうからね!」
こうして、新たな仲間たちを連れたヒビキの旅が、再び大きく動き出すのだった。