ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
アサギシティにたどり着き、早速ジムに挑もうと手持ちの整理を行っていると、ふと近くのトレーナーたちの話し声が耳に入ってきた。
「なぁ、アサギジムのミカンさんって……今ジムにいないんだっけ?」
「あぁ、何でも『アサギの灯台』にいるデンリュウが病気らしくて、その看病につきっきりらしい」
「へぇ、その話本当なのか?」
「ん、あぁ。本当だぞ。ジョーイさんや町のドクターも灯台に向かったって見た奴がいるから間違いない」
「そうなんだ……ありがとう」
「お前もジム戦目当てで来たんだろ? 一応、今は代理の人がジムを預かっているそうだから、そっちに行ってみな」
「わかった、助かったよ」
情報をくれたトレーナーにお礼を言い、その場を離れる。少し離れた場所で街を観察していたダンとエイの二人も合流してくると、それぞれ仕入れてきた情報を口にした。
「どうやら、この街で何か大事が起こっているようだな」
「灯台で働いているポケモンが体調不良になって、灯台の明かりが止まっちまったそうだよ」
「詳しく聞いたら、特殊な訓練を受けたデンリュウにしか務まらない仕事だから、代わりが効かないみたいね」
二人が得た情報を共有しつつ、ヒビキが思案を巡らせる。
「ジムリーダーってのは、大体こういう街のトラブルに対処するもんなんだろ?」
「そうだね。何かあればジムリーダーが矢面に立つのが筋ってもんだ」
「で、どうするのよ? ジムに向かうの?」
「うん、取り敢えずジムへ行こう。代理の人に直接聞いた方が早い」
そうしてアサギジムに足を踏み入れると、そこにいたのは見知った人物だった。
「あら? ヒビキじゃない。もしかしてジム戦?」
「なにしてんだよ、アオバ姉ちゃん」
なんと、ジムリーダーの代理を務めていたのはヒビキの姉であるアオバだった。
「ジスト兄さんに頼まれたのよ。兄さんや他の四天王は、例の闇オークションの後始末で今、大忙しみたいだからね」
「ってか姉ちゃん、ジム戦の手加減とかできんのかよ?」
「姉を何だと思っているのよ。……それより、後ろにいる人たちが、ジスト兄さんから聞いていた2人かしら?」
アオバが視線を向けた先で、ダンが軽く手を上げて自己紹介をする。
「ヒビキの旅に同行させてもらっているダンだ。こっちがエイ。お前さんがヒビキの姉の?」
「アオバよ。事情はあらかた兄さんたちから聞いてるわ。大変そうね、色々と」
「元の時代に比べりゃ、変なしがらみがなくて気楽なもんさ」
簡単な挨拶を終えると、エイが本題を切り出した。
「それで、街で耳にした『灯台の騒動』ってのは本当なのかしら?」
「ええ。『アカリ』っていう名前のデンリュウが、急に体調不良を起こしちゃってね。あの子、かなりの人見知りで、昔馴染みのミカンちゃんにしか看病を出来ないのよ」
「薬とかはないのか?」
「それが、タンバシティの薬師が作る秘伝の薬が必要なのよ。ただ、この状況じゃおいそれと海を渡るわけにもいかなくてね。私が行ってもいいんだけど、闇オークションの残党がこの街に潜んでる可能性があるってポケモンリーグから厳重な監視を頼まれてて、身動きが取れないの」
アオバが動けない理由を説明し終えると、ふっと悪戯っぽく笑い、真っ直ぐヒビキを見た。
「ねえヒビキ、アンタ、代わりに薬を取りに行ってくれない?」
「は? いや、行けるけど……タンバシティまでの海のルートなんて、俺よくわかんないぞ」
「そこは安心しなさい。アタシのポケモンが最短ルートを知っているから、その子を借りていきなさいよ。アンタの言うことなら、ちゃんと言うこと聞くしね」
「それなら話は早いな、わかった」
「タンバジムのシジマさんには私から連絡を入れておくし、薬屋の店主にも話を通しておくわ。すぐに出発しなさい」
「了解。じゃあ、そのポケモンを貸してくれ」
アオバから託された手持ちに乗り、ヒビキはタンバシティへ向けて波濤を越えていくのだった。