ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
アオバから借り受けた相棒──エンペルトは驚異的なスピードで波を切り裂くように泳ぎ、わずか半日程度でタンバシティの港へとヒビキたちを送り届けた。港で待ち構えていた薬剤師の老人から無事に秘薬を受け取ると、休む間もなくアサギシティへと引き返す。
「戻った……ハイ、薬」
「ご苦労様。……って、トイレはそっちよ」
「うっ……頭が……」
エンペルトの全速力による航行と、荒れ狂う帰りの海面の揺れがダブルで直撃したらしく、ヒビキはすっかり船酔いで顔を真っ青にしながらフラフラとトイレへ駆け込んでいった。
「悪いんだけど、すぐに灯台へ薬を届けに行かなくちゃいけないから、ここは留守番をお願いできる?」
「いいぜ、任せときな」「早く行ってあげてちょうだい」
ダンとエイが快く頷くと、アオバは急ぎ足でアサギの灯台へと向かった。
* * *
その後、秘薬の効き目は抜群で、アカリはみるみるうちに回復を見せて無事に職場へと復帰した。まだ完全に万全とはいえないため海の往来には制限が残るものの、街は少しずつ平穏を取り戻していく。
ミカンも無事にジムへと戻り、その復帰戦の相手として指名されたのは──ほかならぬヒビキだった。観客席には、ダンとエイ、そしてアオバの姿が見守るように並んでいる。
「初めまして。アサギジムのジムリーダーを務める、ミカンと言います。……アカリちゃんのために、本当にありがとうございました」
対戦台に立ったミカンは、深々と頭を下げて誠実にお礼を告げる。しかし、顔を上げた彼女の瞳に迷いはなかった。
「ですが、勝負はそれとは別です。私もジムリーダーとして、全力で挑ませてもらいます」
その引き締まった表情を見たダンが、腕を組んで感心したように呟いた。
「へぇ、中々の覇気じゃないか。これがジムリーダーって奴の背中か」
緊張感が漂う中、審判が高らかに手を振り下ろす。
「それでは、アサギジム戦を開始します!」
「頼むわよ、レアコイル!」「リリリリッ!」
「いけっ、ヘルガー!」「ルガァッ!」
ミカンが繰り出したレアコイルに対し、ヒビキはヘルガーをチョイスする。
「属性相性だけなら、ヒビキ側が有利ね」
観客席でエイが冷静に分析すると、アオバはクスリと笑った。
「相性の良さだけで勝てるほど、ジムリーダーのバトルは甘くないわよ」
審判の合図とともに、激しい戦闘の幕が上がった。
「ヘルガー! 【悪巧み】からの【火炎放射】!」
「レアコイル! 【光の壁】!」
先手を取ったヒビキの指示で、ヘルガーが一気に特攻を高めてから強烈な炎を放つ。しかし、レアコイルも素早く展開した【光の壁】でその特殊技のダメージをしっかりと軽減させた。
「取り敢えずこれで特性の頑丈は意味をなくせるな」
「セオリー通りの見事な立ち回りですね。ですが──レアコイル、【充電】からの【10万ボルト】!」
「ヘルガー、相殺しろ!」
【充電】により特防を上げ、次撃の威力を爆発的に高めた電撃に対し、ヘルガーは再び【火炎放射】を正面衝突させて相殺しきる。
「レアコイル、【充電】を維持したままもう一度【光の壁】!」
「なら、ヘルガーは【ニトロチャージ】で距離を詰める!」
遠距離での撃ち合いは分が悪いと踏んだヒビキは一転して接近戦を指示。ヘルガーは全身に炎を纏い、一気にレアコイルとの間合いを詰めに掛かるのだった。