ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「なるほど、ヒビキ君はフィールドに適したチョイスだな」
空中を優雅に旋回するオンバーンを見上げ、観覧席のワタルが感心したように呟く。隣のジストも頷きながら、冷静に戦況を分析した。
「フィールドの中央に水場があることで地上組は移動に制限がかかるが、飛行タイプのオンバーンならその制限を受けない。……だが、このフスベジムのフィールドに慣れ切っているオノノクス相手となると、戦況は五分五分といったところか」
二人のトップトレーナーが見守る中、イブキが鋭い声で口火を切った。
「オノノクス! 【竜の舞】!」
「オンバーン! 【追い風】で対抗だ!」
気迫のこもった舞で攻撃力と素早さを跳ね上げるオノノクスに対し、オンバーンは翼を大きく羽ばたかせて追い風を発生させ、陣営全体の機動力を爆発的に引き上げる。
「これだとオンバーンの素早さには追いつけないわね……! オノノクス、【スケイルショット】!」
イブキの判断は迅速だった。距離を詰めるのではなく無数の鋭い鱗を高速で連射させる遠距離攻撃を選択。しかし、ヒビキも即座に応戦する。
「【爆音波】!」
オンバーンの口から放たれた強烈な衝撃波が飛来する鱗をことごとく撃ち砕き、そのままオノノクスへと迫る!
「なら! 【岩雪崩】!」
オノノクスが地鳴りを立てて岩石の雨を降らせるも、オンバーンは【追い風】に乗った圧倒的な機動力で回避し、壊し切れなかった岩は【爆音波】の相殺で巧みにダメージを最小限に抑え込んだ。
「オンバーン! 【暴風】!」
間髪入れずに放たれた凄まじい突風がフィールド全体を巻き込み、視界を遮られたオノノクスはオンバーンの位置を見失う。
「オノノクス、上よ!」
イブキの鋭い悲鳴のような指示に反応するも、頭上からの奇襲には一歩遅れた。
「【爆音波】!」
至近距離から叩きつけられた超強力な音波がオノノクスを直撃し、重いダメージを与える!
「まだよ! オノノクス、崩れた岩を利用してジャンプ!」
転がる岩石を足場にして弾丸のように大ジャンプを遂げたオノノクスが、オンバーンと同じ高さまではね上がる!
「【ワイドブレイカー】!」
「【暴風】で吹き飛ばせ!」
オノノクスの威圧的なしっぽが叩き落とすのと同時に、オンバーンが解き放った強風がオノノクスを吹き飛ばす。水場と地面に叩きつけられた両者は、相打ちに近い形で甚大なダメージを負った。
「オンバーン! 上昇して【月の光】!」
「オノノクス! 逃がすないで、追撃!」
一瞬の隙を突いて上昇し、月光を浴びて傷を癒やそうとするオンバーン。オノノクスの決死の追撃をなんとか凌ぎ切り、体力を持ち直したものの、両者ともに肩で激しく息を切らしていた。
「……次で決着がつきそうね」
「あぁ、お互い限界だ」
エイとダンが息を呑んで見守る中、ふたりは同時に叫んだ!
「オノノクス! 【スケイルショット】!」
「オンバーン! 【爆音波】!」
【追い風】の加速を纏ったオンバーンの攻撃がわずかに速い! 解き放たれた全開の【爆音波】がオノノクスを飲み込み、衝撃が収まると、オノノクスはその場に倒れ込み戦闘不能となっていた。
「オノノクス、よく頑張ったわ……戻りなさい」
一瞬の静寂の後、イブキは悔しさを押し殺してボールを戻すと、すぐさま二匹目のボールを投げつけた。
「頼むわよ! ドラミドロ!」
「ラミドッ!」
現れたのは、揺らめく海藻のような姿をした毒・ドラゴンタイプのドラミドロ!
「ドラミドロ! 【ヘドロ爆弾】!」
猛毒の塊がオンバーンへ向けて一直線に飛来する。体力が底を突いているオンバーンに、ヒビキはあえて攻撃指示を出さなかった。
「オンバーン! 最後にもう一度【追い風】だ!」
ヒビキの狙いを察したオンバーンは最後の力を振り絞って再び風を起こし、【ヘドロ爆弾】の直撃を受けて倒れた。
「よくやってくれた、オンバーン。おかげで動きやすくなったよ」
満身創痍の相棒を労いボールへ戻すと、ヒビキは腰のスペシャルなボールを力強く握り締めた。
「行ってこい! バドレックス!」
「カンムッ!」
光の中から降り立ったのは、神々しい白馬ブリザポスに跨がり、圧倒的な王の威厳を放つ白馬バドレックス。
【追い風】が吹き荒れるフィールドに、伝説の王と愛馬が静かに舞い降りたのだった。
白馬バドレックスがフィールドに降り立った瞬間、その身から溢れ出る神々しくも圧倒的な威圧感に、イブキは息を呑んだ。
「……その子たち、もしかして伝説のポケモンかしら?」
「そうですよ。ガラル地方で出会いまして……馬の方が『ブリザポス』、上に乗っているのが『バドレックス』です。この二匹が合体した状態で一匹のポケモンとしてカウントされるみたいですね」
ヒビキが説明を加える中、観覧席のワタルが身を乗り出すようにしてその姿を観察する。
「あれがバドレックスか……。以前、マツバとのジムバトルの映像で『黒馬バドレックス』の形態は見せてもらったが……なるほど、イツキやキクコさんが強い興味を示すのも納得のサイコパワーだな」
ワタルの評価を聞いていたバドレックスは、チラリと横目でヒビキを一瞥した。ヒビキが静かに頷くと、バドレックスは威厳に満ちた声を響かせる。
『白き友に騎乗した今のヨは、荒ぶる竜を対処することなど手慣れているのである。心して挑むがよい』
脳内に直接響くテレパシーではなく、流暢な人の言葉。その事実に、イブキと審判の老人は目を丸くして固まった。
「ま、まさか……テレパシーではなく、本当に口から人間の言葉を喋っているの……!?」
イブキがポツリと呟く。以前に会話したことがあるジストや映像で知っていたワタル、そして旅の中で幾度もそのバトルを目撃してきたエイとダンは、「まあ、初めて見たらそりゃ驚くよな」と顔を見合わせて苦笑いを浮かべていた。
イブキは気を取り直すと、鋭い視線をバドレックスへと向ける。
「驚かせてくれるじゃない……! ドラミドロ、姿からして恐らく氷タイプが入っているはずよ! 【火炎放射】!」
灼熱の炎がバドレックスへ向けて解き放たれる。だが、ヒビキの指示は冷静そのものだった。
「バドレックス! 【サイコキネシス】!」
強大なサイコパワーによって【火炎放射】の軌道を強制的に大きく反らすと、絶え間なく追撃を叩き込む!
「そのまま【ブリザードランス】!」
「相殺しなさい! 【火炎放射】!」
バドレックスが強力な念力と氷のエネルギーで生成した巨大な氷の槍を、豪快に投げつける! ドラミドロの激しい【火炎放射】と激突するも、凄まじい威力を誇る氷槍は炎を力任せに押し切り、ドラミドロを直撃。一撃で大きく吹き飛ばされたドラミドロは、そのまま壁に激突して戦闘不能となった。
しかし、貫通してきた【火炎放射】の余波を浴びた白馬バドレックスも、決して小さくはないダメージを負う。
「(おかしいわね……。さっきの【サイコキネシス】の威力を見ても恐らくエスパー・氷タイプだと思われるけれど、今の炎技のダメージの通り方、大きすぎるわ。まるで草タイプや虫タイプが含まれているかのような受け方……もしかして!?)」
相手のタイプ特性に一瞬で違和感を覚えたイブキは、不敵な笑みを浮かべながら最後のボールを叩きつけた。
「頼んだわよ! キングドラ!」
「ドラァッ!」
フスベジムの切り札であるキングドラが水場へと姿を現す。
ドラミドロを倒したことでバドレックスの特性『人馬一体』が発動し、その攻撃力がさらに高まる。しかし、ヒビキの表情は険しいままだった。
「(……今のダメージで、バドレックス本来の『草タイプ』の弱点属性が混ざっていることに気づかれたか……)」
察しの良いイブキの鋭さに感心しつつも、ヒビキはキングドラのホームグラウンドである水場へ向けてすぐさま指示を出した。
「バドレックス! まずは敵の隠れ場所を消すぞ! 【ブリザードランス】で水場を丸ごと凍らせろ!」
【ブリザードランス】によって放たれた圧倒的な絶対零度の冷気が駆け抜け、フィールド中央の広い水場が一瞬にして巨大な氷の結晶へと変貌した。
これでキングドラが得意とする潜伏や水中からの奇襲という最大のメリットを潰し、こちらの足場とアドバンテージを完全に確保してみせる。
「水場を丸ごと凍らせて姿を隠せなくするなんて……やるじゃない! なら、キングドラ! 【シグナルビーム】!」
イブキの指示に応じ、キングドラの口元から怪しく明滅する虫タイプの光線が一直線にバドレックスへ向けて放たれる! 弱点属性を見破ったイブキの的確な攻撃だったが、ヒビキに焦りはない。
「バドレックス! 【鉄壁】からの【ボディプレス】だ!」
直撃の瞬間に身を硬く尖らせ、白馬の巨体で氷のフィールドを蹴破るように大きく跳躍して【シグナルビーム】を回避したバドレックス。
その直後、【鉄壁】で上がり切った膨大な防御力をそのまま圧倒的な質量へと変え、上空から逃げ場のないキングドラへ向かって超重量級の一撃を叩きつけるように急降下した!
ドゴォォォンッ!! と凄まじい衝撃音が響き渡り、氷のフィールドに大きな亀裂が走る。
しかし、大ダメージを受けながらもキングドラは倒れず、至近距離から再度【シグナルビーム】を放った! 直撃を受けた白馬バドレックスは、激しく体勢を崩しながらかなりのダメージを負ってしまう。
「……やっぱりね。その子たちは草タイプも内包しているのね!」
その圧倒的な受け口の弱さに確信を得たイブキが叫ぶ。ヒビキは苦笑いを浮かべながら素直にそれを認めた。
「そうですよ。バドレックス単体のタイプは『草・エスパー』の複合なんです。騎乗した愛馬によって草タイプが変わるんですが……元々の草タイプに効果抜群の技に対しては、ダメージがかなり大きくなってしまうんですよ」
「手の内を教えてくれて感謝するわ! なら、キングドラ! 【シグナルビーム】を連射よ!」
「負けるか! そのまま押し切れ! 【ブリザードランス】!」
キングドラの口元から連射される虫タイプの光線と、バドレックスが渾身の念力と冷気で精製した巨大な氷の槍が、至近距離で正面から激突した凄まじい爆発とともに猛烈な煙がフィールド全体を覆い尽くす。
息を呑んで戦況を見守る一同の視線が集中する中、やがて白煙が徐々に晴れていく。
そこに立ち尽くしていたのは、崩れ落ちたキングドラと、傷つきながらも誇り高く首を持ち上げ、勝利の嘶きを天空へと轟かせる白馬バドレックスの姿だった。
「キングドラ、戦闘不能! よって勝者、マサラタウンのヒビキ!」
審判を務める老人の厳粛な宣言がジム内に響き渡り、フスベジムでの壮絶な激闘に決着がついた。
ヒビキは安堵の息を漏らすと、すぐにバドレックスのもとへ歩み寄り、労いの言葉をかける。
「凄まじい粘りだったな……ありがとう、バドレックス、ブリザポス。最高のバトルだったよ」
バドレックスは小さく頷くと、満足げに目を細めて『ヨと白き友の誇りを示すことができたのである』と静かに応えた。
敗れたキングドラを労いながらボールへ戻したイブキは、深呼吸をして悔しさを整えると、ヒビキに向かって歩み寄ってきた。その表情には清々しい笑みが浮かんでいる。
「完敗よ、ヒビキ君。……ジストの弟という贔屓目を抜きにしても、見事な戦術とポケモンとの絆だったわ」
そう言いながらイブキが取り出したのは、龍の牙を象った美しく輝くライジングバッジだった。
「これを受け取りなさい。フスベジムの証、ライジングバッジよ。これでジョウト地方のジムバッジが8つ全て揃ったわね!」
「ありがとうございます!」
ヒビキは手渡されたライジングバッジを両手でしっかりと受け取り、高く掲げて見せた。その様子を観覧席で見守っていたダンとエイ、そしてワタルとジストからも温かい拍手が送られる。
「おめでとう、ヒビキ君! これでいよいよジョウトリーグ挑戦への資格が得られたな」
「フン……まあ、あのイブキ相手によく攻め切ったんじゃねぇか」
ワタルの称賛とジストのニヤリとした言葉に、ヒビキは強く頷くのだった。
ゲームだと2倍になるのでしょうけどこの作品では、白馬だと虫と炎技が3倍位に黒馬だと虫や毒が1.5倍程食らいます。
ジョウトリーグが終わって次の地方は
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サトシと一緒のホウエン地方
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サトシとは別のイッシュ地方