ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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ハナダシティへ

「あっ、そうだ! お月見山内部では【地震】や【地均し】等の揺らす技や、【岩雪崩】とかは使わない方がいいよ」

 リカオの忠告に、ヒビキは首を傾げた。

「どうしてですか?」

「地盤が緩い箇所があって、陥没する可能性があるんだ。【岩雪崩】は道が塞がって通れなくなる危険性があるから気をつけてね」

「わかりました、肝に銘じます」

 さらに「捕獲禁止区域」などの細かなルールを聞き、リカオと別れたヒビキはお月見山の洞窟内部へと足を踏み入れた。

 薄暗い洞窟内を進むと、すぐにズバットの群れに遭遇した。その中でも一際大きく、羽音に力強さがある個体を見定める。

「……よし。行け、モンスターボール!」

 放たれたボールは吸い込まれるようにズバットを捉え、新たな仲間が加わった。

 新戦力のズバット、そして親分個体のサイホーンとマンキー。

 道中、勝負を仕掛けてくるトレーナーたちをその三匹で次々と蹴散らしながら進んでいくと、一本道の真ん中で石を前に踞っている男性がいた。

 「すみません、通らせてもらっていいですか?」

 声をかけた瞬間、男性は警戒心を剥き出しにして振り返った。

「な……何だおまえは!? まさかこの化石を奪おうとしているんだな! これは俺のものだ、渡さないぞ!」

「いや、そんなつもりじゃ──」

「問答無用! 行けっ!」

 聞く耳を持たない男性に、ヒビキは溜息をつきながらサイホーンを繰り出した。

 地盤を気遣い、揺らさないようピンポイントの突撃でサクッと勝利を収めると、男性は一転して肩を落とした。

「……仕方ない! 一つやる! 好きなのを選べ!」

「いや、いらないから。ただ通らせてほしかっただけなんだけど」

 「え? そうなの? てっきり、なんとか頼み込んで許可を貰い、ようやく見つけた化石を奪おうとしているんだと早とちりしてしまったよ……」

「化石を探すのは自由だけど、一本道の真ん中でやるのは勘弁してくれないか?」

「すみません……すぐに退かすね。よいしょっと」

 ようやく道が開いた。去り際、男性は申し訳なさそうに情報をくれた。

「そうだ君、最近ハナダシティ周辺に『ロケット団』らしき怪しい奴らがいるって噂だから、気をつけなよ」

「ロケット団……マジか。教えてくれてありがとう」

 洞窟を抜けると、外はすっかり夜の帳が下りていた。

 ヒビキは広めの場所を見つけると、サトシたちが貰ったのと同じ、最高級のキャンプセットを広げた。機能性に優れたテントと寝袋が、一日の疲れを癒してくれポケモン達が周囲の警戒をしてくれたヒビキはる眠りに落ちた。

 翌日。

 ハナダシティを目指して歩いていると、道の端で立て看板を設置している見覚えのある背中を見つけた。

「……何してんだ、お前?」

「ん? ヒビキか。なーに、サートシ君がこれを見て悔しがって貰おうと思ってね」

 シゲルがニヤリと笑う。看板には『シゲル参上! サトシのバーカ!』と派手な文字が踊っていた。

 「そういや、自慢の車はどうしたんだ?」

「ポケモンを集めたいからね。レディたちとは別行動さ。流石にこの山道であの車を走らせるのは大変だしね」

「だろうな……」

 「ま、そういうことだから僕はこれで! バイビー! あっ! ヒビキも書きたければ書いていいよ」

 シゲルは華やかに手を振ると、応援団の待つ方へと去っていった。

 一人残されたヒビキは、看板の端にある余白を見つめ、ペンを取り出した。

 「……一応、俺も書いておくか」

 ヒビキはシゲルの派手な煽り文句の横に、今日の日付と自分のサインをごく控えめに書き加えた。

 マサラの五人目の足跡を刻み、ヒビキは水の街、ハナダシティへと歩を進めた。

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