ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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ポケモンゼミ

 クチバシティを目指していたヒビキは、立ち込める深い霧に行く手を阻まれていた。

 「しまったな。こういう時は【霧払い】がいいってカナタ兄に教えてもらったけど……。オニドリルにはまだ教えてないし、ズバットは研究所だ。下手に進めば遭難するな」

 視界は数メートル先も見えない。立ち往生していると、霧の奥から聞き覚えのある涼やかな声が響いた。

 「その声、ヒビキか?」

「えっ……? シアン兄!」

 霧の中から姿を現したのは、四天王シアン。ジストの親友であり、幼い頃からヒビキに「速さの極意」を叩き込んでくれた兄貴分のひとりだ。

 「シアン兄、なんでこんな所に? 調査中?」

「ああ。この周辺で電子機器の不調が続き、タウンマップが狂って迷子になるトレーナーが多いとの報告があってな。……そういうお前は、まさに迷子か?」

「面目ない。霧を払えるポケモンがいなくて悩んでたんだ」

 「なるほどな。こういう不測の事態もある。後で技を教えてやるから、しっかり覚えさせておけ」

 シアンはそう言うと、腰のボールを軽やかに弾いた。

「ピジョット、【霧払い】だ」

「ピジョーッ!」

 四天王の手持ちであるピジョットが大きく羽ばたくと、強烈な風圧が立ち込める霧を一瞬で切り裂き、視界を鮮明に押し広げた。

 「とりあえず付いてこい。近くに建物がある」

 シアンの先導で歩みを進めると、立派な校舎のような建物が見えてきた。だが、そのグラウンドに広がっていたのは、異様な光景だった。

 無数のランニングマシンが並び、生徒たちが必死の形相で走り続けている。

 「……なんか、シュールだね」

「だな。グラウンドの使い方が根本的に間違っている気がするが」

 呆れ半分に眺めていると、一人の少年がマシンから転げ落ちて倒れ込んだ。周囲の取り巻きが何かを言い捨てて去っていくと、少年はガバッと起き上がる。

 「すまない、少しいいか?」

 シアンが声をかけると、少年は顔を上げ──その相手を見て凍りついた。

「は、はい? ……って、えええええっ!? 四天王のシアンさん!?」

「すまんが、ここはポケモンスクールか?」

「い、いえ! ここは……エリートを養成する『ポケモンゼミ』です!」

「ポケモンゼミって確か、卒業すればリーグへの参加資格を貰えるっていう、あの?」

「そうです!」

 誇らしげに答える少年……ジュンを見ながらシアンは鋭い視線で校舎を見上げる。

 「俺はここの責任者に話を聞いてくる。不調の原因はここかもしれないからな」

 シアンが職員室へ向かい、ヒビキはジュンに尋ねた。

「原因って、どういうことですか?」

 ヒビキは事情を説明すると

「……多分、カンニング防止用の妨害電波だと思われますね」

「いや、外まで漏れてるのはかなり迷惑だな!?」

 思わずツッコミを入れたヒビキが案内されたのは、ゲーム機体のような装置が並ぶ部屋だった。シミュレーターでバトルを学ぶのだという。

 「……なるほど。基礎を叩き込むには最適そうだけど、応用は?」

「応用?」

 きょとんとした顔のジュンに、ヒビキは真剣な眼差しを向けた。

 「シミュレーターはあくまで想定内のデータだ。応用を覚えないと、野生のポケモンとバトルでの『想定外』に対応できなくなるぞ」

「そういうもの……ですかね?」

 兄や兄貴分達の英才教育を受け、現場の「熱」を知るヒビキ。その言葉の重みが理解できないゼミの空気に、ヒビキは少しだけ危うさを感じていた。

 

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