ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド 作:ガチャガチャクツワムシ
「ヒビキもフシギダネを捕まえたのか!?」
サトシの驚きに、ヒビキは不敵な笑みを返した。
「色々あってな、こいつともう一匹譲り受けたんだ。行くぞフシギソウ! 【日本晴れ】!」
太陽の光が差し込み、フィールドの熱が上がる。対するサトシは空中からの強襲を狙う。
「バタフリー! 【風おこし】!」
効果抜群の風に耐えながら、ヒビキは前の持ち主から引き継いだ特殊な戦術を披露した。
「完成度はまだ5割程度だが……フシギソウ! 【ウェザーボール】!」
晴れ状態で威力の増した炎の弾丸が放たれる。
「あぶなかった! バタフリー、【念力】だ!」
ギリギリで回避したバタフリーが超能力で反撃するが、ヒビキは冷静に畳みかける。
「【痺れ粉】で動きを止めろ! そのまま【のし掛かり】**だ!」
麻痺で羽根の動きが鈍ったバタフリーに、フシギソウの重い一撃が突き刺さる。万事休すかと思われたその時、サトシの叫びが奇跡を呼んだ。
「バタフリー、頑張れ! もう一度【風おこし】だッ!」
放たれたのは、風の塊ではなく鋭い空気の刃。
「マジかよ!? この土壇場で【エアスラッシュ】を覚えたのか!?」
ヒビキの驚愕が指示を一瞬遅らせた。鋭利な刃がフシギソウを捉え、地面に沈める。
「フシギソウ、戦闘不能! バタフリーの勝ち!」
「……すまねぇフシギソウ。よくやった。次は任せろ、ブースター!」
「ブース!」
間髪入れずに繰り出されたブースターの【ニトロチャージ】がバタフリーを突破。サトシはすぐさま次のボールを投じる。
「炎には水だ! ゼニガメ、君に決めた!」
「ならブースター、【草分け】!」
水鉄砲を掻い潜り、草タイプの技で加速しながら翻弄するブースター。
「【つぶらな瞳】で力を削げ! 止めだ、晴れ状態の【熱風】!!」
「ゼニガメ! 【バブル光線】で押し返せ!」
蒸気が立ち込め、勝負が佳境に入ったその時──会場の扉が乱暴に蹴破られた。
黒ずくめの集団が、ボールや背中に掃除機のような物を装備してに雪崩れ込んでくる。
「動くな! ここはロケット団が占拠した! 大人しくポケモンを渡せ!」
静まり返る会場。だが、次の瞬間、凄まじい風切り音と共に大きなテーブルが宙を舞った。
「グッハァ!?」
先頭の団員が、飛んできたテーブルに直撃して数人を巻き込んで壁まで吹き飛ぶ。
「……楽しい勝負に水差してんじゃねぇよ、クズ共が」
犯人は、顔を般若のように歪めて怒り狂うヒビキだった。それを見ていたトレーナーが我に返り直ぐにポケモンを出すと
「全員出ろ! こいつらを叩き出せ!!」
それを合図に、我に返ったトレーナーたちが一斉に反撃を開始した。多勢に無勢、ロケット団が逆にボコボコにされ始めたその時──。
船が大きく揺れたのだ。どうやら嵐に巻き込まれてしまい船が転覆しそうになっているようだ。
『乗客の皆様! 猛烈な嵐により、船体の一部が損壊しました。直ちに救命ボートへ避難してください!』
緊迫したアナウンスが流れる中、ロケット団は混乱に乗じて逃げ出していく。
「俺達も直ぐに避難を!」
「サトシ! 一端避難を優先するぞ!」
タケシの声に促され、ポケモンを戻すと救命ボートに向かった。
数十分後。救命ボートから見守るヒビキたちの目の前で、豪華客船サント・アンヌ号は、激しい波に飲み込まれ、ゆっくりと海の底へと沈んでいった。