ポケットモンスター:オーバー・ザ・レジェンド   作:ガチャガチャクツワムシ

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事件の裏側で

 サント・アンヌ号が沈没する数時間前。

 チケットを配り終えたムサシとコジロウは、仲間のニャースから意外な言葉を聞かされていた。

 「アタシ達だけ別任務?」

「どういう事だよ、ニャース?」

「ニャーも詳しいことは聞いてないニャ」

 そこへ、モニターを抱えたデリバードが現れる。画面に映ったのはロケット団幹部の冷徹な姿だった。3人は即座に居住まいを正す。

 『……今、あの客船を運営している会社は、我々の表の顔であるロケットカンパニーのシェアを奪い始めている。それは社内での派閥争いの影響だ。今回の船の運営は「改革派」の手によるものだ。他事業に手を伸ばし始めたのもその改革派の影響だ』

 幹部の説明によれば、かなりの無理な改革のせいか船長を含むスタッフは実力ではなくコネで固められ、安全意識は皆無。トラブルが起きれば真っ先に逃げ出すのは明白だった。

 『お前たちは、その無様な失態を映像に収めろ。無責任な脱出劇が世に出れば、改革派は失脚し、事業は縮小される。ついでにポケモンを奪えるなら奪っておけ。以上だ』

 「「「承知いたしました!」」」

 変装して乗り込んだ3人は、嵐の中で客を捨てて救命ボートへ飛び乗る船長の姿を完璧に撮影。その映像をデリバードに託すと、再び通信が入った。

 『よくやった。映像はテレビ局へ送る。あとの救助は警察に任せ、証人を確保させる。……ああ、それとコジロウ。そのコイキングをこちらへ送れ。なかなかの良個体だ。報酬を上乗せしよう』

「はい! ありがとうございます!」

 コイキングを引き換えに莫大なボーナスを手にした3人は、沈みゆく船を背に高笑いした。

「「「任務を終えて、ボーナス貰えて、いい感じ~~!!」」」

 一方、数時間後。

 激しい波に揺られていたヒビキたちの救命ボートは、ロケット団の通報(?)によって駆けつけた救助隊により無事保護された。

 辿り着いた先は、当初の目的地の一つ、常夏の観光地・アオプルコ。

 「……ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど、助かったな」

「本当ですねぇ~」

 ヒビキ達が安堵の息を漏らしていると、周囲の避難客たちが騒がしくなっていた。

 「聞いたか? 船長が真っ先に逃げ出したって話!」

「本当!? 信じられないわ! 私たちの命をなんだと思ってるのよ!」

 どうやら船長の無責任な行動は、すでに避難客たちの間で周知の事実となっているようだった。

「なぁヒビキ。何かクレームを入れる集団がいるみたいなんだけど、俺たちも参加しないか?」

 サトシが憤慨しながら提案する。

 「賛成! あんな目に遭わされて黙ってられないわ!」

「せやせや!」

 カスミやリン、セナも同意見のようだ。

「だな。あれだけ怖い思いをしたんだ、きっちり責任は取ってもらわないと」

 被害者全員による猛烈な抗議。これにより、運営会社(の改革派)は完全に追い詰められ、ヒビキたちには多額の慰謝料とお詫びの品──旅に役立つ豪華なアイテムセット──が配られることとなった。

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